▼ さわさわコンコン
「すごい、カチカチだわ」
「まあな」
「すごいわ、叩くと金属のような音がする!」
「まあ、な」
かれこれ1時間、俺は半裸の状態でリツに触られ続けている。
事の発端はリツの一言だった。
「アントニオってなんのネクストなの?」
まさか2年一緒にヒーローをやっていて今更それを聞かれるとは思ってもみなかった。
ならば、と実演して見せればリツは目を輝かせてペタペタと体をあちこち触り、叩き、とても楽しそうだ。
「ねえ、柔らかいところはないの?」
「ないな。全身硬くなる」
すごいすごいと彼女は俺の体をなでる。
さわさわと撫でられるのは心地よいが、好意を寄せる相手に肌を直にまさぐられるのは男として少々辛いものがある。
「金属みたいだけれど暖かいのね」
彼女は俺の腹筋に頬を擦りつけた。
無心。無心になれ俺。
頬をくっつけたまま彼女は俺の背中に両手を回した。まるで抱きつくように、力を込めずにするすると手は背を撫で下っていった。
腰、尻、太もも。そしてまたゆっくり登ってくる。
「リツ……?」
少し声がうわずってしまった。
「ねえ、アントニオ」
頬を染め何かを乞うような表情で俺を見つめてきた。
まさか。
まさか。
「硬いんでしょ……?あのね……」
俺の心臓よ鎮まれ。
リツに邪な想いがバレてしまう!
俺はそっと腰を引き、リツの言葉の続きを待った。
リツも、俺のこと……
「硬いなら試してみたいの……」
「何を、だ?」
リツは少し躊躇った後、恥じらいながら言いづらそうにその好奇心の欲求を口にした。
「針、刺してみてもいい?」
俺は光の速さでリツを引き離した。
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