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▼ 33

サムくんを着替えさせ寝る前のミルクをあげる。
んくんくと声を出しながらのみ、最後は哺乳瓶を抱えたまま寝てしまった。
縦抱きにしやさしく背中をさすればゲップをし、それに起きることなく眠っている。

サムくんほどの月齢であれば滅多にないだろうが、吐き戻し対処用にバスタオルを敷き詰めたベッドに寝かせ薄がけをかけてやる。

思わずふう、とため息が出た。

母親は大変だ。普通の子はもちろん、サムくんのように言い聞かせの難しい年でネクスト能力に目覚めた子を持つ母や家族の大変さがよく分かった。

ーー私もこうだったのかな。

覚えていない。私はいつからこの能力が使えるようになったんだっけ?

幼い頃おじさんに付いていて貰いながら練習した記憶はある。
昔はものを壊す事しか出来なくて、直せるようになったのはジュニアハイスクールに入ってからだ。

人体にまつわることができるようになったのもハイスクールに入ってから。

破壊、分解はいつからだったんだろう。

全く記憶にない。ユーリさんに聞けばわかるだろうか。


サムくんの寝顔をみて、まさか、自分もこれくらいの歳の頃からだったのだろうかと思案する。

もしそうなら泣いて能力を発動してしまうこともあっただろう。
本当の両親の元でそのような状態なら、どうやって私がネクストであることを隠したのだろう。
ほんとうはウロボロスは私のネクストを知っているのではなかろうか。

そこまで考えてかぶりを振った。

まさか。そうだとしたら私は今頃とっくにウロボロスの手の中にいるだろう。

私がいつネクストに目覚めたのかユーリさんやおばさんは知っているだろうか。


耳をすませばスカイハイのいるバスルームからはまだシャワーの音がする。出てくるまではまだ時間がかかるだろう。

ケータイにユーリさんの番号を表示させる。

呼出音を聞きながら、そっと寝室のドアをしめた。












「スカイハイ、夜のパトロールはいいんですか?」

失念していた。
サム君の子守、ボディガードという建前にリツと共に過ごせることに舞い上がっていた。リツに言われるまで失念していたなんて自分が恥ずかしい。

「ああ!私としたことがうっかりしていたよ」

「行ってきてください。サムくんも寝ちゃったし、私一人でも大丈夫です」

大丈夫。
そう笑顔で言い切った彼女にほんの少し違和感を感じた。
なんだろう。いつものような笑顔なのに。

「誰かほかのヒーローを呼んだ方がいいんじゃないかい?」

「平気ですよ」

まただ。
違和感の正体を探ろうと彼女の顔を観察するも差異はわからない。

「そうかい?」

「ええ。でも早めに帰ってきてもらえると嬉しいですけど」

ではいつもより早めに切り上げるようにしよう。

「それと、トランスポーターはここから少し離れたところにお願いしますね。
あまり他人に住所を知られたくないので……」

なんてことだ。他人に知られたくないというのに引っ越したばかりでお邪魔してしまった。
本当に申し訳ない。
サムくんの子守りもほとんどリツに任せている。
せめて少しでも早くパトロールを終えて帰ってこなくては。


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