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▼ 32

二人をバスルームに送り出し、耳をすませ様子を伺う。
シャワーの音とサムくんの楽しそうな声がする。

今のうちにフィギュアやグッズを片付けなくては。

寝室のドアを開け急いで紙袋の中にしまう。
雑に扱いたくはないがこの際仕方ない。

紙袋に詰めてクローゼットに押し込む。

「よし!」

これで大丈夫。
ヒーロー全員を一体ずつ。これなら不自然じゃないはずだ。

急いでキッチンに戻る。

切って冷凍してあるネギを取り出しごま油で炒める。
パックのベーコンはスープ用は短冊のように切り、残りはみじん切り一歩手前まで細かくする。

冷凍のエビは蛇口の水を出しっぱなしにして流水解凍、とけたら念のため片栗粉をまぶしてもう一度洗う。

卵やほかの具材も一度火を通して準備が完了した所で炊飯器から炊きあがりを知らせる電子音がした。

スープ用の具材をすべて鍋に入れて火をつけしばらく放置。


フライパンに火を通した具材と調味料、ごはんを加えてざっと混ぜる。
炊きたてをチャーハンにしてしまうのは少しもったいない気もするが、まともなおかずが作れない今仕方がない。

最後にスープに味付けをし溶き卵を入れてサッとかき混ぜ蓋をして火を止める。

お口に合いますように。

これは彼の文化圏の料理ではない。
パオリンちゃんやタイガーさんなら……いや、私の料理を美味しいと言ってくれたのはユーリさんとおばさんだけだ。
家族補整はあてにならない。

どうしよう。急に不安になってきた。


「リツ! サムくんの着替えを頼みたいのだが!」

「!」

返事をしてスカイハイの声にバスルームに向かう。

「ホカホカだよ。着替えをお願いしてもいいかな?」

嫌がりも人見知りもせずゴキゲンなサムくんはバスタオルにくるまれていた。

「わーホカホカだね。気持ちよかったねーサムくん」

「えう!あーい!」

「「え!?」」

サムくんの体が青く光る。

タオルや洗顔フォーム、洗剤などが浮き上がる。

「さむくーん、あ、あっちで遊ぼうねぇ〜おもちゃもあーーーわぁっ!!」

やめさせるために他へ興味を向けようとするが、突然の浮遊感に思わず声を上げる。

「わ、わっ!! スカイハイ避けて下さいっ」

体が回転してスカイハイにぶつかりそうになる。

「リツ!」

腕の中にはサムくんがいる。彼を落っことすわけにはいかない。

「スカイハイ! サムくんを受け取ってください!」

「ま、任せてくれたまえ!」

「ぎゃっ!」

天井に頭をぶつけた。ごめんなさい上の人、壁ドンならぬ天井ドンだなんて。

「あう?」

私の悲鳴(?)に気を取られたのかサムくんの発光が止まった。

「え……?」

落ちる!

せめてサムくんが下敷きにならないようにと体を回転させようとするが、空中なので踏ん張りが利かない。

「リツ!!」

ぶわりと風が来た。
落下が止まりまた天井へと押し上げられる。

「いたっ」
「すっすまないリツ!」

ごん、とまた頭を天井にぶつけた。
ああ一度ならず二度までも。ごめんなさい上の人。

風が弱まりゆっくりと下ろされた。
思わず床にへたり込む。
サムくんだけは笑顔のまま。さすが市長の息子さん。この子は将来パパより大物になるかもしれない。



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