つーかよ? 王子様ってのはよ? 白い馬に乗って、マントを翻して。 颯爽と風を切って、平野を駆ける。 悪い魔女やドラゴンに、華麗に立ち向かう。 そんな、強くて、かっこ良くて、美しい、そういうのが所謂、『王子様』だ。 どう考えても『王子様』は。薄汚れたロバに乗ってるような、日よけのマントで怪しい柄のシャツを隠してるような、そんな人物じゃねーよな。 ロバでポクポク街を出たかと思ったら、いきなりマッハジェット機に乗り換えて空を飛んだりさ? でもって、ギャン泣きしたリンにオロオロしたり、ポカポカ叩かれて涙目になったりよ? そんな人物である訳ねーよな。 どう間違っても、サングラスに年中アロハシャツを着てて、白髪交じりの髪の毛で、長い口ひげをピコピコ動かせるオッサンだなんて、口が裂けても言えねーよな。 だからよ? オレがやっぱり王子様でないといけねーよな? 乗ってるのは白い馬じゃねーけどよ。ま、フツーじゃ到底乗れねーような生き物に乗ってるしよ。 どっかの毒みたいにダサいマントなんざ絶対にお断りだけどよ。代わりと言っちゃなんだがキューティクルMAXの美髪をなびかせてんだからよ。 でもって、素人じゃ到底倒せない猛獣も、今のオレには華麗且つ美しく倒せるし。 強くて、かっこ良くて、美しい、そういう所謂、『王子様』。 王子様はこうでなくちゃいけねーんだってずっと思ってた『王子様』。 オレは今まさに文句無しでそうであるんだし。 「ねぇ、お兄ちゃんは、王子様なの?」 そんな言葉を掛けられたもんだから、つい。 つい、昔の事を思い出しちまった。 「それとも、神様?だからこんな美味しい物くれるの?」 「ちげーし。神様じゃねーし」 オレは声を掛けてきた子にもう一つ、プレゼントを渡した。 「レは、ずっとずっと遠くにあるグルメ国の、王子なんだし。」 「本当に?!」 「おぅ。だから、ちゃんと食べろよ。んで絶対に挫けるなよ。来年もその次も来るからな」 「うん!ありがとう王子様!」 オレは頷いた。 恵まれない国の、子供たちに。 親のいない子供たちに。 平和を知らない子供たちに。 夢を見られない子供たちに。 サンタなんて聞いた事もない子供達に。 明日への『希望』と言う名の糧を、両手と髪で持ち上げた。 「貰ってないやついないか?まだまだたくさんあるぞ!」 でもよ、あの時のオレにはさ。あんなファンキーなオッサンが、そう見えてしまったんだ。 ま、仕方ねーよな。眼が赤くなくなった最初の日に見たんだからよ。 見間違えもするよな。してもしょーがねーよな。 ……え?何に見えたかって? ガラスの靴の代わりに、おかしな食材でオレらを探し回ってさ。 オレたちを外の世界に連れ出してくれた、王子様に、だ。 ハハハ。笑っちまうよな。 →あとがき ← → |