メビウスの指輪・2 2




あの日。

トリコがココに向けたノッキングガンは、ココの意識だけでなく神経の一部ももぎ取った。
ココが目覚めた時、その左足はココの物であるのにココの意思で動く事を忘れていた。
無理に動かそうとするとかなりの激痛を伴う左足に、その治療を任された医師たちの意見は二分した。
リハビリと切断。どちらかと言えば、リハビリよりも切断の必要性が上回った。
自身の足と見紛うほど高性能な義足、多少年月はかかるが再生させる方法も既に有ったからだった。
が、ココは切断を断固として認めず、辛いであろうリハビリを選び、その苦痛に一人耐えた。
IGOで一年のリハビリを終え、一人で生活できるまで回復した後、自宅に戻って来てからのココに二度目の春が訪れていた。


「もう少し楽に動かせるようになったら、一度くらいはお付き合いしてみようかな」
ココがシュガーポットを取り出して言う。
「何に?」
「我らの姫君の買い物に、だよ」
トリコはうへぇ、と顔を歪ませた。
「ココ、お前って物好きだな」
「そうかな?」
「かなり体力いるぜ」
「ただの買い物じゃないか」
「ココ、お前は知らねぇだろうが、あいつらちっともじっとしてないんだぜ。リスが食べ物集めるみたいにチョロチョロ…」
ココは『チョロチョロチョロチョロ……』を手と口で表現するトリコを見て噴き出した。
「何だそれ!可愛くないな」
「ほっとけよ!」
「まぁ実物はどちらも可愛いからね。そうだろ?」
トリコは軽く咳払いをした。
「照れるなよトリコ。似合わないから」
「ほっとけって!」
ココは笑いを噛み殺した。
「……トリコ、さっきの『チョロチョロ』もう一回」
「何で?」
「後で見せようと思って」
ココはおもむろに携帯をトリコに向けた。
「トリコ。早くやって」
「却下!誰に見せる気だよ!」
「勿論リンちゃんに。それから、」
ココはトリコをちら、と見た。
「あぁ、ゴメンゴメン。『リンちゃん』じゃなくて『トリコの彼女』って言った方が良かったかな?」








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