窓辺に飾られた花の香りがフワフワと部屋を舞う。 柔らかい陽射しに合わせてつい先日取り替えたばかりのカフェカーテンが、ココの期待通り揺らめきながら太陽と自身の色をかき混ぜ、その光をテーブルに落としていた。 肌が感じるか否かのかすかな微風に、ふとココの目が本から離れた。 「よぉ」 「おや、随分と早いじゃないか」 開きかけた本をぱたん、と閉じて声の主に語りかける。 「たった今、読もうとした所だったのに」 「そりゃナイスタイミングだったな。読み始めてたら止まらなかっただろ?」 まぁね。とココは素直に肯き、ソファーから腰を上げた。そのままゆっくりキッチンへ向かう。 「それにまだ早いと思ってたから、何も準備してないよ」 ココはケトルを火にかけながら、困ったように言った。 「思ったより早くケリがついたんだよ。これは戦利品。」 そう言うと同時に、テーブルに何か重い物が置かれる音がした。 「素晴らしいがティータイムには程遠い代物だ。さすが四天王一の食いしん坊ちゃんだな、」 トリコ。そう言ってココはクスっと笑った。 「さっきサニーがメール寄越して来たぜ」 「そろそろ着くって?」 ココはトリコの向かいの椅子に座り、紅茶を注いでいる。 「いや、逆。長引きそうだってさ。特にリンが、だと」 トリコはわざとらしい溜め息をついた。 「サニーには感謝しないとだよ。僕らの代わりに連れ出してくれるんだから」 「ホント、サニーは良くあの買い物に付き合えるよな」 「確かにトリコにはできないだろうな」 「あの長ったらしい物色がなければな〜」 「それは仕方が無いよ。世の女性達の大多数が、その物色をするがために生きているのさ」 「とんだ哲学講座だ」 「まぁ例外もあるけどね」 ココはふふ、と笑った。ティーポットから最後の一滴をカップに注ぎ込んで、あ、と気付く。 「そういえば、砂糖を出してなかったね」 ちょっと待ってて、と立ち上がろうとするココに、トリコは良いよわざわざ。と断る。 「気を遣うなよトリコ。らしくないぞ?」 そう返したココの第一歩は、酷くおぼつかないものだった。一歩、二歩。左足を少し引きずって進む。 「そうは言っても・・・痛むんだろ?無理するなよ」 「最初だけだよ。動き出せばそこそこ平気だ」 → |