イケメンは何やってもイケメン
「テオさん、こんな感じでどうですか?」 杖を振りながら、レジカウンターにいた私を振り返る紳士君。誰か、と問われれば私の大好きな紳士くんよ!と胸を張れるくらい一押しの生徒だ。 「完璧っ。」 「じゃあ、リボンつけたらジャックオーランタンのせますよ?」 「お願いします。」
ハロウィンが近くなり、店内も装飾をすることにしたのだ。 しかし、私はあまりこの手のセンスがない。たまたま店にやってきたセドリックに相談したところ「お手伝い」を申し出てくれたのだ。 「助かったわ、セドリック。」 「いつもお世話になってますから。」 そうはにかんだ彼はまさにハッフルパフの優等生の鏡だ。私がもしも教授だったらわけもなく彼に点数を与えまくっていたことだろう。 「ハロウィンぐらい夕食は出てきたらどうです?」 「いやいや、ハロウィンこそ稼ぎ時だよ。夕食後にどっと生徒が押し掛けてくる予定だもの。」 「ああ・・・、」
セドリックは納得したような顔をした。
「セドリック、何かのむ?手伝ってくれたお礼。」 私がそう言って座るように促せば「いや、大したことじゃないです。」と笑う。 完璧なスマイルに私は「くそっ、あと10歳若かったら!!」と激しく思った。 「遠慮しないで。」 「えー、と、じゃあ紅茶を。」 「はいはーい。」
私はちょっと待っててね、とセドリックを待たせてカウンターの向こうに入る。
「どうぞ。」 「ありがとうございます。」 「お砂糖は?」 「あ、欲しいです。」 角砂糖の瓶を彼に渡して、私はエプロンを外した。 すると、セドリックが立っていた私を見上げているのに気づいて「何?」と首を傾げた。
「いや、・・・・姉さんがいたらテオさんみたいな感じなのかな、とおもって。」 セドリックは照れ臭そうに言った。 「え、私が?」 「世話焼きだし、優しいし。」 「それはセドリックがいい子だからだよ。」 「ははっ、」 私は大真面目だったのに、セドリックは「またそんなこと言って。」と信じてくれなかった。 「・・・でも、セドリックは弟ってかんじゃないなぁ。お兄さん、って感じがするよ。」 「本当かい?」 「ええ。面倒見が良いだろうし。」 そう素直な感想を述べれば、セドリックは「ありがとう。」と嬉しそうに言って紅茶を啜った。
「ハロウィン当日は、テオさんも仮装するのんですか?」 「えー、どうしようかな。」 「せっかく店を飾ったんだし。」 「うーん、」 「テオさんの仮装みたいな。」 セドリックのその言葉に、ちょっとだけ揺らぐ。 さすがにもう良い大人なのだ。生徒に交じってはしゃいだ日にはマクゴナガル先生やスネイプ先輩に何を言われるか分かったものじゃない。 ・・・しかし、セドリックは見たいって言ってる。 この葛藤で、私がどれだけセドリック贔屓なのかはわかるだろう。うん。
「・・・考えとく。」 「本当に?」 「考えとく、だけね!まだやるとは言ってないからね!」 目を輝かせたセドリックに、慌ててそう言い加えた。
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