駆け込み入店はご遠慮ください


「いらっしゃーい。」
チリン、とお客がドアを開けた音に反応してそう声をかければ、そこには見慣れた人物が満面の笑みで立っていた。
「あーら、ウィーズリー。久しぶり。」
「「やぁ、テオ。」

双子のウィーズリーは真っ直ぐに私のところにやってくる。
もうすぐ閉店時間だから、すでに店を閉める準備をしていたのだ。
「だーかーら、いつも駆け込むのヤメテって言ってるじゃん!」
「まぁまぁ、」
「時間には余裕持ってきてよ!!」
いつも閉店ぎりぎりになってやってくる彼ら。ただたんに冷やかしに来る日もあれば、ちゃんと買い物をしていくときもある。
悪戯好きの、困ったグリフィンドール生だ。
「カリカリするなって。」
「せっかくの可愛い顔が台無しだぞ。」
「うるさいなっ、褒めればいいと思うなよ!!」

そう吠えた私をよそに、双子は一つ笑みを作り上げてマイ・カップを差し出しながら「レモン・カクテル」と言った。
舌打ちしたくなる衝動をおさえて、私はレジカウンターの後ろにあるドリンクボトルからレモンイエローのソフトドリンクを抜き出す。お店のロゴが入った双子のカップに、半分くらいゆっくりと注ぎそこへあつあつのお湯を注ぐ。当店オリジナルのその飲料は、この双子のお気に入りなのだ。

「そうカリカリするなって。新入生諸君にちゃんと店の宣伝はしたんだから!」
「それはどーも。」
物珍しさからか、好奇心からかもちろん最初のうちはたくさんの生徒がやってくるが、時間がたつとともにだんだんと通う頻度も変わるだろう。
上級生になればホグズミードに行けるし。
毎日のように顔を見せるのは、おそらくこの双子だけだ。

二人が注文したのは、カクテルといいつつもそれはノンアルコールで、ビタミンたっぷり。夏場にはホットではなくアイスにもなる。
「零さないでね。」
そう言いながら二人に差し出す。二人はそれを「あちっ」と言いながら受け取って私に1シックルを払った。

「ありがとテオ。」
「どーいたしまして。早く寮に戻りな。」
「「りょーかい。」」
本来ならば、この店の奥はフードコーナーになっていて、そこで飲んでいってほしい。立ち食い、飲み歩きはよくないし、ホグワーツの階段は動くからもしも途中でこぼされたら私が先生方に小言を言われてしまうのだから。

双子が無事に店から出て行ったのを確認して商品だなの照明を落としていく。
そして入り口の看板を「open」から「close」に変えて内側から鍵をかけた。


店と私の私室は隣接している。
レジカウンターのすぐそばにあるドアの向こうにはふわふわのベットが待っている。
「ふぁーあ、」
今日もやんちゃな学生たちの相手は疲れたものだ、と思いつつ私は今日の売り上げを紫色の巾着に入れた。
店内をぐるり、と見回すと文具、お菓子、雑貨に本。とくに変わった様子もない。
「補充は明日早起きしてやろう。」
そう独り言を呟いて、私は私室のドアを開けたのだった。


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