ホグワーツ名物であります


「CANDY?」
「そうそう。ホグワーツの売店だよ。」
「初めて聞いたよ、どこにあるの?」
「フレッドとジョージが言うには、2階の一番南側にあるんだってさ。」
「そうなんだ。」
ハリー・ポッターとロン・ウィーズリーは朝食の席でそんな話をしていた。

「何を売ってるの?」
まだ入学したばかりで、校内をまだまだよく知らないハリーはロンにそうたずねた。ロンには兄弟がたくさんにて、実際に目にしたことはなくとも知識は豊富だった。
「服以外ならなんでもあるよ。お菓子とか、羽ペンとか、本もあるって。」
「へぇ・・・」
そんなに品ぞろえが豊富なら、もはや≪売店≫という規模ではすまないような気もすると思ったものの、突っ込むことはせずにハリーはうなづいた。
「置いてなくても、店主に言えば用意してくれることもあるって。」
「便利なんだね。」
「3年生まではホグズミードにいけないし、混むときはすごい人だって。」
ロンはそう言いながらトーストにかぶりついた。

と、そこへフレッドとジョージがやってきた。

「やぁ、ハリー。学校には慣れてきたかい?」
ジョージがハリーの横に座った。ハリーは「まだ、かな。」とあいまいにつぶやけば「そのうち慣れるさ。」とフレッドがニコリと笑う。二人は良い兄貴分だ。迷子になれば、率先して案内してくれる。
「いま、売店の話をしてたんだ。」
そう話せば、二人は「ああ、CANDYのことか。」と言った。

「まぁ、勉強の息抜きにはぴったりだよ。」
「売店というより、なんでも置いてるカフェ、って思ったほうが早いかもな。」
二人は次から次へと店の話をしだしてなぜか「レモン・カクテル」を強く推された。ロンが「二人の好物なんだよ、」と耳打ちしてくれてなるほど、と納得する。
ホグワーツ唯一の売店なら、人気もすごいのだろう、と思う。
「店主は?どんな人なの?」
ハリーがそう尋ねればフレッドは「優しいよ。それなりに。」と答えた。
「口うるさいし、面倒くさがりだけどな。」
付け加えるように笑ったジョージに、ハリーは安心した。


「けど、寝坊助だから店が開いてるのはだいたい一時間目が終わるくらいからだな。」
「閉店は夜の9時半ってとこ。」
二人の説明を聞きながら、だんだんと早くそこに行ってみたいという衝動にかられる。近くにいたグリフィンドールの一年生も聞き耳を立てていたらしく、いつの間にかその売店の話は広がって行った。

「店主って、ホグワーツに住んでるの?」
「そうみたいだな。店と私室がつながってるって言ってた。」
ホグワーツに入学して、早くも3日がたった。けど、まだそれらしき人物を見かけたことがなかった。学校に来るときに乗った列車の、車内販売のおばさんを思い浮かべてみた。

と、その時だった。

ふくろうが大広間をとびぬけていく。配達の時間のようだ。
と、ぼんやり思っているとフレッドのもとに一羽の白いフクロウが飛んできた。足には赤いリボンが結んである。
「お、噂をすれば。」
「え?」
「女店主ことミス・ルーシュからのお手紙さ。」
ジョージがふくろうから一通の手紙を受け取った。封筒には可愛いキャンディーのロゴマークが入っている。
「なんの?」
「たぶん、注文品が届いたんだよ。入荷待ちしてたんだ。」
「へぇ、こうやってわざわざ知らせてくれるんだね。」
「マメな人だからな。」
よく見れば、他のテーブルでも同じように足に赤いリボンをつけたフクロウが生徒に手紙を届けていた。

「ミス・ルーシュって食事には出てこないの?」
「言っただろ?彼女は寝坊助なんだ。朝食は食べないし、お昼と夕食の時間も店番してる。たぶん、自分でなにか用意するか、してるんだろ。」
フレッドはそう言って「今度時間がある時にでも覗いて来いよ。」と薦めたのだった。


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