アルバス・セブルス3

注意。
・魔法使いと呪いの子の内容を含みます。未読の方はご注意の上読んでください。
・花は咲くで教授が生き残り、円満夫妻でスピナーズ・エンドに住んでいるという設定です。本編で生き残ってる人は皆生きているのでシリウスも出てきます。
・IFアルセブくんの後見人(ハリーでいう所のシリウス)が教授








アルバスは、クリスマス休暇にポッター家に戻るのを渋ったらしい。
その話を聞いたとき、セブルスは呆れたような、困ったような、心配そうな顔をした。
ポッターの息子でありながらスリザリンに入寮したとあれば、世間の格好のネタになるだろうし、ましてやミドルネームにセブルスの名前を継いでいるのだ。
まだ思春期真っ盛りの少年に、周囲の目とポッターの息子であるという事実は重いものなのだろう。

しかし、休暇中もあまり両親とコミュニケーションをとりたがらない息子を心配しているポッター夫妻をよそに・・・当のアルバスは現在、我が家のソファーでもくもくとレモンパイを頬張っている。
家出じゃないだろうか、と突然の来訪に驚けば「セブルスが良いって言った。迎えに来てくれたんだ」と少年は元気よく答えたのだった。
たしかに、夫は午前中外出すると出かけていったが、まさかポッター家に自ら出向くとは。
私の言いたいことを察したのか、彼は苦々しい顔をした。

「・・・」
「先に、梟便を飛ばしてくださればよかったのに、そしたらお菓子を作って待っていたんですけれどね」
家族との溝を感じて、親に反抗気味の少年を不憫に思う気持ちはなんとなくわかる。ましてや、自分と同じ名を持ち、自分に懐いてくれる子ならなおさら。
おかえりなさい、と頬に口づけて迎えれば、セブルスは「言うと思った」と言いながらロンドンの焼き菓子店の箱を私に押し付ける。

「二人で選んだんだ!」
嬉しそうなアルバスに、私はお礼を言いながら、頭を撫でた。



最後に家に遊びに来たのは入学前のことだったから、期間が随分あいてしまった。
そのせいか、アルバスは最初落ち着かずに部屋を見回したりしていたけれども、慣れの感覚が戻ってきたのか、数十分後にはソファーでのんびりとしていた。

「美味しい?」
「うん。やっぱりここで飲む紅茶が一番おいしいよ。さすがマダム」
「褒めても何もでないわよ?アルバス、クリームがついているわ」
口元のクリームを紙ナフキンで拭って上げれば、アルバスは恥ずかしそうに「自分でとれたのに」と笑った。

「そうだ、セブルスにも言ったんだけど、クリスマスプレゼントを送ってくれてありがとう」
思い出したようにアルバスはそう言った。
私たち夫婦から、と彼には休暇中に贈り物を送ったことを思いだす。
「あれはほとんどセブルスが選んだの。気に入ってくれたかしら?」
「うん。セーターの大きさ、調度よかったよ」
アルバスは「今日着て来ればよかった」とひとりごちた。


アルバスには、スリザリンに入ったからと、グリーンやブラック系統の服や小物をいくつか見繕ったのだ。
「助かったよ、ブラックおじさんなんていまだに僕がスリザリンに入ったのを良く思ってないんだ」
「あんな間抜けの言うことは聞かんでいい」
セブルスはムッ、とした顔新聞に向けたままそういった。
「分かってるよ。ブラックおじさんも、悪い人じゃないって分かってるけど・・・合わないっていうか」
そう言った彼に、私は笑いかける。

「セブルスの名を持ってるんですからね。ブラック氏と気が合わなくても誰も不思議がらないから大丈夫よ」
「本当?」
父さんは、ブラックおじさんのこと凄く好きなんだ。と、アルバスは力なく言った。
「彼はハリーの後見人ですもの。・・・アルバス、スリザリンに入ったからって何も心配することはないわ。貴方のご両親は貴方を愛しているし、貴方はきっとスリザリンで人生の友を得るの。大丈夫よ」
そう静かに言いきかせれば、アルバスはセブルスを見た。

「セブルスはどう思う?」
不安げな少年の声に、夫は新聞から顔をあげた。



「グリフィンドールに入りたかったのかね?」
「・・・だって、僕の家族はみんなそうだから」
ふむ、とセブルスは顎に手を当てた。
あれだけ生徒には恐れられていたセブルスも、この少年にはそんな恐ろしい顔を向けなくなった。それがいつからであるかはもう思いだせない。
「正直言って、私はグリフィンドールの連中が嫌いだった。在学中も、卒業した今でも」
「・・・」
「勇気や正義を盾にして、自分勝手にバカ騒ぎする奴らが憎らしくもあった」
セブルスは静かにそう言って、静かに紅茶を啜った。
「ただ、私はグリフィンドールを出た中にも素晴らしい人間がいることも知っている。結局は、寮は一つの括りに過ぎない。自分を大事にしてくれる友達が、もうお前にはいるだろう?」
アルバスは「うん」と控えめに頷いた。
スコーピウス、と呟かれた名前は、私にとっても大切な子の名前だった。

「ポッターの息子ともすれば、周りの目は痛いだろうが」
一度そこで言葉を区切ったセブルスは、ためらうように後を続けた。
「お前は、愛されている。それだけは忘れるな」
厳しいその声に、アルバスはやや視線をさまよわせてから頷いた。


愛しているのは、セブルスも私も同じだろう。
この子の瞳は、ハリーの母親にそっくりだと誰かが言っていた。セブルスにとってこの子は特別であるだろうし、私にとっても特別だ。

「望んだ寮に入れないのはブラックも、彼女も同じだった」
そう言ってセブルスは私を見た。
「そうなの?」
アルバスは驚いた顔をして私を見た。
「ええ、そうですよ。私はスリザリンに入りたかったの。でも、グリフィンドールだったわ」
そう答えれば、アルバスは笑った。


「じゃあ、さっきセブルスが言った、グリフィンドール出身だけど素晴らしい人ってマダムのことなんだね」
無邪気にそう尋ねるアルバスに、セブルスは「あー・・・」と困ったような声を上げた。
「そうだといいけれど」
私がそう笑えば、セブルスはやれやれと肩をすくめた。
「自分の名前の由来よりも、か」
「ああ、ダンブルドアもそうか。でも、僕はダンブルドアよりもマダムの方が大事だから」
そう笑う黒髪の少年に、私は笑いかけた。


「良い子ね、アルバス。私も貴方が大好きよ」
そっとその頬を撫でた。
「貴方の未来に、たくさんの幸福があることを願っているわ」



大丈夫。貴方はアルバス・セブルス・ポッター。
最高の父親と、最強の後見人をもっているのだもの。きっと、貴方がシリウスに苛められたら、きっとセブルスはどこからだって助けに行くわ。
そんな大げさなことを考えて、私は静かに笑った。

ねぇ、セブルス?



prev | next
return
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -