小説 | ナノ

「!!」
「んー、やはり擦らないと落ちないな」
 固く絞ったタオルで公子の背中の油を洗い落とす。むず痒くて動きそうになる公子の体を抑えるためにグッと引き寄せた瞬間。
(こ……いつ、細すぎねぇか!?いや、小さいことは知っていた。が、骨格のレベルからして俺と違い過ぎるだろ)
 腰に手を回して引き寄せるこの感覚、シーザーは夜ごとこういうことをしていた、記憶と一致する。
(ま、まるでシニョリーナと、その……『いたす』ときみたいな……)
 タオルが手から滑り落ち、水の中で広がって浮かんでくる。だが自分が落とし物をしたことにづかぬほど、シーザーは思考に没頭していた。
 細い体、少し高めの声、なによりも触れた肌のキメの細かさ、ひた隠す胸。
「……なあ、公子。何で下を脱がないんだ」
「見せたくないんだよ。察しろ!」
「ああ、なるほど。サイズが随分粗末なわけだな」
「は?サイズぅ!?」
「じゃあ洗濯ついでにそのまま洗うか」
 乱暴な手つきでズボンの上から下半身を擦ってシャボン液を出す。公子は抵抗しようにも手は胸を隠さなくてはならないから体をよじるしかないのだが、圧倒的な体格差の前にそれはかなわなかった。
「んー?なんだ、何か言いたそうだが」
「ちがっ」
「ほう、俺の気のせいというなら構わないが」
 シーザーはこの悪戯に明確な悪意を持っていた。確かに今まで公子が自分を男だと言ったことはない。だが顔が半分隠れた状態しかほとんど知らないし、男とだと勘違いしての言動も今まで多々あったはずだ。
 そこを釈明しなかった公子にも、今若干のいら立ちを感じている。そちらがその気ならこちらも気づかないフリをしてとことんまで苛め抜いてやろうではないか。
「ほんとに小さいんだな。触ってる感覚ないぜ」
 股を無遠慮に洗い続ける。手と肌の間には下着と服を隔てているが、そのもどかしさが余計にムラムラとさせる。
「ほら、いつまでも上を隠すな。女じゃねぇんだから」
 無理に力で防御をこじ開けると、今まで必死に守っていたものが眼前にさらけ出された。柔らかく揺れるそれを見て公子は顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。
「どういうことか説明してもらおうか」
「だ、だって……シーザー、女の子好きだから。あ、遊ばれたくなかったというか」
「俺がそんな軽い男だと思ってるのか」
「実際軽いじゃない。街に行ったときに声かけなかった女の子いなかったし」
「そりゃな、挨拶みたいなもんだ。毎朝綺麗だねと声をかけられるのもイヤなのか?」
「……勘違いしそうになる。シーザーにそんなこと言われて、私の方が舞い上がって耐えられないからイヤだったの」
「公子……そんなかわいいことを、こんな姿で言われて我慢できる男はいないぜ」
 そもそもあんな悪戯をしていて勃起していないはずがなかったのだ。既に固くなっているそれを公子の腹に擦り付けるようにして公子を抱き寄せ、キスをする。
「たまにな、俺は自分がホモになったのかと思っちまってたんだぜ。責任とれよ」

 油とシャボン液にまみれた二人は、抱き合おうとしても滑るばかりであった。だがその感触がやけに扇情的で、互いにこすり合わせるように肌の表面をなぞりながら深く口づけていた。
「スージーが待ってるからな、ちょっと乱暴になるが」
「こういう時に他の女の子の名前言うかな……」
「あっ……悪い」
 その誤解を解くために、せめて口づけだけは丁寧にする。だが体の方は、時間が差し迫っているということよりも、シーザー自身の我慢の限界にあったようだ。前戯は先ほどのじゃれあいで十分潤っているし、何より今は体中が滑りがよい状態だ。
「力抜いて」
 明らかに不慣れで震えている公子の耳元で優しく声をかける。だがこれは逆効果だった。うるんだ目でこちらを見つめてこくんと頷く公子の顔を見ると、シーザーは完全にキレてしまったようだ。
「悪い、公子。痛いかもしんねぇけど俺が波紋でなんとかするから」
 言うなりいきなり根元まで侵入させると腰を振り出した。二人の間から血が流れているのを見て、口移しで波紋の力を分け与える。強引に体内を破りぬいてくる痛みが消えると、そこには快楽だけが残った。
 普段女慣れしているはずのシーザーが、自分を求めて動物のように理性を飛ばしながら腰を振っている。その一生懸命な姿がなんだか可愛らしくて、公子は下半身に力がこもった。
 それが刺激となったのか、シーザーから苦しそうな悲鳴と共に一層強く腰を打ち付けると、その動きは静止して荒い呼吸だけになった。
「わ、悪い……俺だけ……」
「えっと、い、今のって……」
「公子がかわいすぎてもうイッちまった」
 それは百戦錬磨のプレイボーイの顔ではなかった。一人の純情な青年の恥じらいの表情だ。だがすぐさまその意外な一面は消える。
「だからベッドの中できちんと気持ちよくしてやるからよ。さっさと飯食って、続きしようぜ」


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