小説 | ナノ

「だから、今まで自分以外のスタンド使いにあったのは初めてなんだ」
「ま、俺もじじぃもここ最近使えるようになった素人だからな。お前とアヴドゥルには色々教わることも多い……これからもよろしく頼むよ、先輩」
「やめてくれよ。僕ら……友達だろ?」
「ふ……そうだな……だが俺の友達にしちゃお前、ちょっと精神的に潔癖過ぎんぜ」
 そのセリフは、彼の未成年飲酒や喫煙と、些細な事もすぐに拳で解決しようとする短慮な部分を指しているのかと思っていた。だがこれらは欠点とは思わない。一つの個性だ。
 飲酒喫煙だって、未成年が禁止されている理由は発育への害になるからだ。自己責任で刹那的快楽を貪るのは個人の勝手だと思うし、僕にそれらを進めてきているわけじゃない。まあ、副流煙はちょっとイヤだとは思うけど、それは大人が吸っていたって同じことを思うわけだ。
 すぐに手が出るのも、悪党に対して容赦ないだけ。何を悪とするのか、彼の中の彼だけの明確な基準もあるし、それに反して自分にだけ甘いなんてこともない。人から見れば眉をしかめられるかもしれないが、同年代の僕から見て、自分の筋を通す彼はカッコよく見えた。
 だから、彼が一方的に弱い立場にある女子を虐げているのを見て、僕の中の承太郎像がいともたやすく崩れた。僕が肉の芽に操られているとき、彼は女性に手を挙げるのは許さないと確かに言ったのだ。
 だが目の前のこの光景はどうだ。嫌がる彼女の口に、無理やり……その、アレを押し込んでいる。苦しそうにすればするほど、承太郎は更に興奮を高めていっているようだ。
 こんなものが、僕の友人の空条承太郎であるはずがない。これは、何の間違いなんだ。シンガポールで僕に化けていた敵がいたが、似た能力を持ったスタンド使いが現れたのだと言われた方がまだ納得できる。
「だからテメェは潔癖過ぎんだよ」
 鼻で笑いながら流し目でこちらを見る表情に、同性に対して僕は艶っぽいという感想を持ってしまった。
「そんなに不思議か?俺がこんなことをしているのが。それとも、主人が俺にフェラしてるって方が信じられねぇのか?」
 放課後の保健室に響く卑猥な音。僕だって男だからそういった動画を見ないわけじゃない。さすがにあの手の動画はやり過ぎというくらいわざと大きな音を立てていると思っていたが、実際にもそれなりの音量で聞こえてくるものなのかと、僕の思考は現実逃避をはじめていた。
「おい、飲めよ」
 何を、なんて今更聞く必要はない。主人さんの髪を掴んでいた手が彼女の後頭部に回り、自分の方に抑え込むように力を入れる。苦しそうな彼女の嗚咽の中に、承太郎の荒い息が混ざってそれが高まったときに小さなうめき声とともに、口内に吐精した。口の端からあまり見たくない白い体液がこぼれる。
「零すな」
 つらそうな表情をしながら、それでも承太郎の言うことに逆らわない。しばらく顔を動かしてあふれ出るそれをむせながら飲み干すと、口の端を手で拭いながら彼女はこちらを見る。
「……見ないで」
 それは、一週間前に僕に告白してきたあの時と同じ人物の顔には見えなかった。

 僕は今まで親しい友人をあえて作らなかった。そして友人をつくらないのだから当然恋人も作ろうと思わない。女性に興味はあったのだが、やはり生半可な気持ちでお付き合いするのは相手にも悪いと思って告白は全て断って来た。
 それはスタンド使いの本当の友人が出来てからも変わらない。今は僕は承太郎たちと日常を過ごすことが楽しくて仕方なく、恋人にその時間を取られるよりも彼と一緒にいたいと思っていたからだ。
 こう言うと自分自身でもちょっと同性愛者っぽいなと思ってしまうがそうではない。別にそういう人を否定する気もないけれど。
 たまに承太郎と好きな女性のタイプを語ったりしたのだが、彼は大人しい気質の女性が好きだと言ったあとに、
「でも正直胸がでかけりゃなんでもいい」
 なんて冗談を付け加えたりしていた。それに対して僕も冗談で応じる猥談がなんだか楽しかったのだ。
「僕は足派なんです」
「足かー」
 いずれ承太郎も女性とお付き合いをはじめ、僕よりもそちらに時間を使うようになるのは仕方のないことだ。だからこそ、お互いに彼女がいないこの瞬間を、バカバカしく一緒に過ごしたかった。
 僕が主人さんをふった理由はそれだ。

「お前がいらねぇっつーからよ、遠慮なく俺がもらったぜ」
 机に手をつかせ、尻を突き出すポーズを取る。そのポーズが、更に先のことまでこの場でしてしまうものだと否応なく僕に想像させてしまう。
「おい、何ぼさっと突っ立ってんだよ。それともお前見てるだけの方が興奮すんのか?」
 一度彼女の口で射精したというのに、承太郎の下半身はもう大きくなっている。同じ男としてどうしても見えてしまったものは自分のものと比較してしまうのだが、かなりのサイズの違いに僕は正直驚いていた。
 こんなに大きなものが、彼女の細い体に収まるのか?
「俺が口に出したからフェラされんのはいやか?後ろと代わってやろうか?」
「承太郎……何故こんなことを……彼女、嫌がってるだろう」
「俺がしてぇから、以外に理由があんのか?それともこの女が自分が好きな男の前でレイプされてんのに抵抗しないワケを聞いてんのか?」
 そう言いながら、躊躇なく、避妊具もつけずに、彼女の中に自身を挿し込んだ。二人の苦し気な声が重なり、続いて肉がぶつかる乾いた音が聞こえてくる。
 ああ、今、目の前で二人は……してるんだ。
「混ざりてぇならどーぞ」
 意地悪く笑う承太郎は、僕の膨らんだ股間を確かに見ていた。
「遠慮するなよ、コイツもこういうこと好きなんだよ」
「ちがっ……い、言わないって……!」
「ああ、俺は特にまだ何も言ってないと思うが……その言いぶりからすると何かあるのか?」
「あ……」
「滑稽すぎるだろ。俺には黙っておけって言っておいてテメェで喋ってんだからな」
「な、何が……」
「もういいだろ、主人。言って楽になれよ。私は真昼間の学校で花京院くんをオカズにオナニーしてる変態だってな」
「いやっ!」
「え……」
 思わず彼女を見てしまった。僕は一体どんな表情で彼女を見たのだろうか。目が一瞬あったあと、彼女は泣き出してしまった。
「黙っててやる代わりにってずるずるこういうことをしてたんだよ」
「納得できない。君はそういう性格だったか!?今まで何も悪くない人の弱みに付け込んで脅すような真似なかっただろう!?」
「……そうでもしねぇと、俺の方見てくんねぇだろ、主人は」
「あ……」
 そうか。僕は今まで女性にいつか承太郎をとられてしまうのではと思っていたけれど、承太郎は僕にその女性をとられてしまっていたのか。
(全然気が付かなかった)
「いつまでも花京院が好きだってんならそれでもいい。けど、一瞬でもコイツを支配できたような気がして最高の気分になるんだ。コイツが抱えた秘密を本人を目の前にバラした瞬間なんてすげえ上がったぜ……思わず中で出すくらいに」
 そういえばもうあの乾いた音は止んでいる。彼女の足の間から、ぽたりと粘液が落ちた。
「記念に好きな男にも一発やってもらえよ。花京院、お前が潔癖じゃあなきゃな」
 顔を上げた彼女は、僕のズボンが膨らんでいるのを見ていた。彼女、承太郎に犯されながら僕のものが挿入されるのを期待しているんだ。
 淫乱な女性だ。さっきの、白昼堂々と僕を使って自慰していたという発言も納得できる。
 それでもやはり彼女は被害者なんだ。そう、分かっていながらも、僕は相変わらず主人公子さんという女性に何も興味がわかなかった。
 この期に及んで僕の意識をひいたのは、承太郎だけだ。なぜ承太郎がこんなことをするのか、承太郎が実は誰を好きだったのか……承太郎、承太郎、承太郎。僕は今、あの旅の途中のホテルで猥談しながら過ごした夜を思い出している。
 あの夜と一緒だ。話のネタにするグラビアアイドル、ポルノ女優、彼女が今その位置にあって、実際に体に触れながら承太郎と下種な話で盛り上がる、楽しい時間が、今もう一度きた、それだけだ。
「正直、君のサイズのものがはいった場所に僕のを入れても物足りないんじゃないかな、主人さんは」
「まあコイツは一人でやるときも結構なサイズのものでやってるみてぇだからな」
「じゃあそっちは承太郎に任せるよ。しかし、三度目もすぐに出来そうな君に淫乱だなんだと言われるのは主人さんも納得いかないだろうな」
「違いねぇ」
 机の上に彼女を寝そべらせ、足を自分で持ち上げさせる。片足にショーツを引っ掛け、スカートをめくって性器を露出させながらこちらを見る主人さんは、とても色っぽかった。更に僕の下半身にも血が巡ってくるのが分かる。
 けれど、彼女は好きじゃない。恋愛対象ではない。でも承太郎が好きになった女性を、承太郎とシェア出来るのが僕はうれしかった。
 寝そべる彼女の顔をまたぐようにして立ち、口を開けて待ち構えているそこに遠慮なく挿し込む。
「おい、花京院のをしゃぶりだしたら締め付けがさっきより良くなってるぜ、コイツ」
「本当かい。締め付けがいいんならあとで試してみようかな」
「俺が二回も出した穴だけどいいのか」
「僕は気にしないよ。潔癖じゃないからね」
 それは、精神的にも。潔癖症じゃないから、だから……僕は君の親友でいつづけてもいいだろう?


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