小説 | ナノ

「簡単に言えば超能力だ」
 スタンドと関わりのなかった人物に説明しなければならないとき、これ以外に言いようがない。
「このことを口外することはお勧めしない。何故なら君の頭を疑われるだけだからだ」
「でしょうね」
「そして我々に余計な手間が増えることになるからだ。これからしばらく君の動向を探らせてもらうよ。えーと……ふむ」
 何と呼べばいいかと迷っていた次の瞬間、その手にはまだ緑色の免許証があった。
「主人公子。住所は都内か」
「え、あの……それも超能力ってヤツですか!?」
「ああ。返そう」
 男は自らを空条承太郎と名乗った。渡された名刺を見て名前と勤務先をネットで検索すると、その方面では有名な人物らしい。
 写真も数点出てきたので本人であることに間違いはなさそうだが、今目の前にいる本人は顔に大きな傷跡がある。ここ最近のものなのだろうか。

 承太郎の放つスタープラチナの攻撃を偶然目撃してしまった公子は、口封じとまではいかなかったがしばらく本人の監視下に置かれることになった。
 だが公子とて無抵抗でそれを受け入れたわけではない。絶対に口外しないし、自分にだって自分の生活があるから困ると申し立てると、その間を取るという形で承太郎が公子の住居に押しかけることになったのだ。女の一人暮らし、ワンルームの小さなマンションにだ。
(でも断るとあの超能力でボコられそうだしなぁ)
 詳細不明、意味不明の能力を前に怖気づいた公子は、半ばやけくそ気味にその折衷案を承諾した。
「帰りました」
「おかえり。洗濯物は干しておいた。今日は外に食事に行こうか」
「あの……いくつか疑問点があるのですが」
「なんだ」
「まず、私が誰かに口外しないよう見張るってことであれば、私が仕事に出かけてる間も誰かが監視してるんですか?」
「いや」
「え……それだとむしろ部屋では一人きりなので空条さんがここに住む意味ないですよね」
「いや、ある。それについては後で話そう。次の疑問を言ってくれ」
「えーと、普通異性の下着に触りますか?父や兄でさえしませんよ」
「なるほど。では同時に答えが出せそうだな」
「え。パンツと監視の共通点がさっぱり思いつきませんが」
「正直スタンドのことを口外しようがしまいがどうでもいい。君ともっと近づきたいから適当な嘘でここまで上がりこんだ。そして私も娘の下着に触れたことはない。これは君の匂いがすると思うと触れずにいられなかった」
 このとんでも発言を真顔で言うものだから、それはそういうものなのだと一瞬納得してしまいそうになる、が、もちろんそれで誤魔化されるほど公子は頭のねじが緩んでるわけではない。
「いやいやいやいや、出てってくれませんかねぇ!?」
「悪いが……限界が近い。というより、君の洗濯物を使ってしようかどうかとちょうど思っていたところで……」
「使う!?する!?その話の詳細は一切しないで早いとこ出てってください!」
「限界が近い、と言ったんだ。君は殴ってでも私を止めるべきだった」
「超能力者相手に物理で勝てるもんなんですか!?」
「愛する女性を傷つけたくはない。力ずくで嫌がれば考え直せたかもしれない。が、もう最後の警告をする段階は過ぎてしまった。君が泣いても叫んでも、それすら私を煽る材料にしかならないほどに、理性が残っていない」
 超能力……厳密に言えばスタープラチナで公子を横抱きに抱える。その姿を目視できない公子からすればまさにこの状況は空中浮遊。だが背中と膝の裏に、腕のようなもので支えられている触感がある。
「うわー!これ、これだよこれ!超能力!」
「少々色気がないリアクションばかりだが……作戦の内か?悪いがそこから嬌声を引きずり出すのが逆に楽しみで仕方ない」
(あ、これもう何言ってもダメなやつだ)
 先ほどの承太郎の言葉の意味が頭ではなく感覚でようやく理解できた。何をどうしようがこの男を誘う条件に結びついてしまうのだ。性犯罪被害者の多くがこうなった場合諦めたような目をしてしまうのも納得がいった。

 公子が体を解放されたのは当然布団の上だった。公子の部屋は質素を通り越して無機質。部屋に置かれているものはインテリアというよりも機能を持った家具であり、外見的要素で選んだものは何一つない。男子学生の部屋と言ってもいいような色気のないこの空間であったが、不思議とこの男がいるだけでそういった空気にされてしまう。
 肌着を脱いだときにむわっと香る汗と加齢臭の混ざった男の臭い。その下から現れる年齢に似つかわしくないほど鍛えあがった鋼のような肉体と、部分的に肌を覆う体毛。
 だがそれが、公子と同年代の若々しい青年たちよりもはるかに色香を漂わせる。ちらりとこちらを流し見たときにかち合った視線に、公子の無駄口も思わず止まる。
「スポーツをよくするのか?」
「は?いや全然……」
「スポーツ選手がつけるような下着が多かったから聞いただけだ」
 それもこの部屋と同じ、機能で選んだ結果だ。シャツを捲り上げると出てくるのも、同じくスポーツタイプ。金属を身に纏うのが嫌いでワイヤーのないブラジャーを探した結果こうなっただけで、どちらかというと運動神経は悪い。
「君の匂いがする」
 わざわざ汗をかいていそうな下着と肌の間を選んで舌を這わせる。汚されていくというより、承太郎に何もかもを上書きされていくような感覚に身震いした。
「私は今まで、女性らしさに興奮を覚えているのだと思っていたが、君に関してだけは違うようだ。女としての悦びに興味のない君が、私を強く求めるようにするよう教え込むことを想像しただけで、こうだ」
 言いながら降ろした下着の中では、恐ろしいとも思えるほどの大きさにまで膨らんだそれが先端を濡らしていた。
「それ、いれるつもりなんですか?」
「ああ。君は、ここに何かを受け入れたことがあるのか?」
 承太郎の指が公子の下着をずらして割れ目をなぞる。太い指が触れた瞬間緊張のあまり身が固くなった。
「私、確かに色気もクソもありません。が、こういうことは好きな男性のためにとっておくものだという考えくらいもってます」
「……私を愛してくれ」
 指で触れて、まだ潤っていないことを確認した承太郎は自分の唾液を潤滑油にしようと股の間に顔をうずめた。押しのけるための手はスタープラチナが指を絡ませて押さえつけている。公子が出来る抵抗と言えば、大声を張り上げることくらいだ。
 だが助けを求めて泣き叫ぶことはしなかった。これ以上承太郎の意にそぐわないことをすると、見えない人型の何かが口まで塞ぐのではないかと危惧したからだ。人型なのだから、口に入れたくないようなものがついているかもしれないと思うと黙って受け入れるしか出来なかった。
 が、それすらも許されない。せめて黙っていようと思っていても、舌先が敏感な部分を舐めあげるたびに甘い声が漏れる。
「んっ……あ……」
「公子はクリトリスをいじられるのが好きなのか。一人でするときはどうしていた?先ほどの言葉から、挿入はせずにここを自分でいじっていたのか?」
「変なこと、聞かない……で」
「こういった質問に真っ先に否定しないということは図星ということだ。こんな感じか?」
 触れるというよりこねくり回すようにそこを指先で弄ぶ。そうしながらキスしようとしてきたのは、さすがに自分の性器を舐めた口で近づくなと拒否の意を示した。そもそも公子はオーラルセックスに関してかなり否定的なイメージがある。
「そうなるとあとはもう、いれるくらいしか楽しみがないな。それともいれてほしくなったか?」
「誰が!」
「初めては痛みしかないかもしれないが、慣れれば気持ちよくなってくる。しかし、君がいじるだけのオナニーをしていると知って興奮した」
「誰もしてるなんて言ってませんけど」
「いや、違う。この中には、正真正銘何も入ったことがないんだろう?トイレを確認したが生理用品もいれるタイプのものはなかったようだ」
「あ、あなたそこまで……変態!」
「ああ。まさか私自身、ここまで狂うとは思っていなかった。君がそう言うのも納得はしている。が、やめるつもりはない。そして、そのまだ何も触れたことのない場所に最初に到達するのが、私のこれだと思うとね、さらにに勃起するんだ」
 これ、と言いながら先端をあてがった。まだ何も侵入していないのならば、自分の指すらそこを侵すのが惜しいとさえ考えているのだ。
 処女に、慣らしもなく、規格外のサイズのものを、無理やり押し込んでいく。
「い……たいたいたいたいいい!痛い、痛い、痛っ痛い!抜いてええ!」
「血が……出てきたな。私がつけた傷だ。一生消えない、心にさえ到達する傷」
 異物を押し出そうと公子の体の中がうねるように動くのが自分でも分かる。だががっちりと腰を押さえ込まれ、この苦痛から逃れる退路を絶たれる。
「これがやがて、私の形にあわせるようになる。そして、そこにちょうど収まるものが入っていないと、落ち着かなくなる。私を求めて、体が疼くようになる」
 根元から滴る血を指ですくい上げ、承太郎はそのにおいをかいだ。目を閉じ恍惚に溺れる顔に狂気すら感じ、公子の体が震える。その微弱な振動がより承太郎を気持ちよくさせたらしい。
 とうとうこらえきれずにそれを舐めると同時に、公子の体の奥に熱い液状のものが注ぎ込まれるのを感じた。


prev / next
[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -