小説 | ナノ

 シルバーチャリオッツはレイピアの攻撃と甲冑の防御、さらに攻撃と移動速度も素早い隙のないスタンドだ。近距離戦闘なら負け知らず、遠隔からの攻撃も届く前に切り伏せられてあっという間に距離を詰められる。
 だがどのスタンドにも相性というものがあって、イギーのザ・フールやエンヤ婆のジャスティスには有効打がない。だからこそ、公子のスタンドとはペアという意味で相性が良かった。
 不定形、あるいは揺蕩うものを固める能力。空気中の水分を凝固させれば氷のような粒を飛ばすこともできる。その能力だけを見れば氷を操るスタンドのホルスの下位互換になるが応用力はこちらが上だ。
 だからこそポルナレフとよく組むことになる。のらりくらりと逃げ回る敵を公子が固めてチャリオッツの剣が切り裂いた。

 とある街のスラム街のような路地裏で、三人の外国人が鬼ごっこをしている。フランス人のポルナレフがアメリカ人の敵スタンド使いを剣で追い込み、その先で待ち構えていた日本人の公子が張っていたトラップにすばりはまる。
 ポルナレフの攻撃をかわそうとして足を水たまりにつけた瞬間、ピキッという音とともに敵の足を取り込んで固まる。凍らせているわけではないので冷たさは感じないが、逆に炎をもってしてもこれは溶かすことが出来ない。
 公子が許すまで、ポルナレフの剣を浴び続けなければならないということだ。
「よーやく処刑台にテメェを上げることが出来たぜ。あとは俺に任せて、公子は後ろを向いてな」
 刃という攻撃方法の性質上、どうしても流血があるわけで、できるだけそれを女の子に見せたくないという心遣いだ。その言葉に従って公子が背中を向けると、男のスタンドがポルナレフに、その影から男自信がナイフを投げて公子を攻撃した。
「しまっ……!」
 スタンド攻撃を防いだ後、ポルナレフが身を挺してかばおうとしたのだが、攻撃に気づくのが一瞬遅かった。公子の口の横に赤い線が走る。
「テメェ……再起不能程度で済むと思うなよ!」

 事を済ませたあと、近くの売店でペットボトルのジュースを買う。
「ほらよ、コーラ」
「ありがとう。じゃあこれでチャラね」
「そういうわけにもいかねーだろ」
 戦闘中に敵に背を向けた公子が悪い。だがそうするように指示したのはポルナレフだ。守り切れなかったことに強い責務を感じる彼に、ジュースをおごってくれたら構わないと公子から提案したのだが解決方法にはなっていないようだ。
「痛いか」
「いや、ちょっと切っただけだよ。日常生活であるレベルの傷だからそんな心配しなくても大丈夫だって」
「しかしよォ……その場所が悪いぜ。顔なんて……」
「すぐふさがるって。若いと治癒力高いんだから」
 笑うたびに傷が動き、薄いかさぶたを破って血が出てくる。
「唾でもつけとけば治るって」
 そう言って指を舐めようとしたがあいにく手がドロドロに汚れている。
「どうやってつけるんだよ」
「えーと、とりあえず手をどこかで洗わなきゃ」
「今止血しないと意味ねぇだろ……動くなよ」
 公子の顎をくいっと持ち上げ上を向かせる。かかっていた髪の毛をよけ、傷口をペロリと舐めた。
「ひっ」
「動くなっつったろ」
 場所的に耳が近いからか、ぴちゃぴちゃという音がハッキリと聞こえる。その音と湿った感覚にぞわりと背筋から震えた。
 最後にわざとチュッと音を立てて顔を放すと、真っ赤になっているのは意外なことにポルナレフだった。
「な……自分からやっといて何照れてんの」
「……るせぇ」
「いつものポルナレフらしくないんだけど。こっちまで調子狂う」
「いつもは行きずりの女の子相手だからな。二度と会うこともない子にここまで本気になることはないぜ」
「……今の」
「うるせー」


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