小説 | ナノ

 スタンド使いの引き起こす事件に幾度となく巻き込まれ、別れた家族にまで被害が及ぶようにもなってきたころ。承太郎は更に家族と離れて暮らしていくべきかどうか一人考え込んでいた。こういったことを相談しないことが更に徐倫に誤解を与えるだけだということにまだ気がついていないこの男は、一人きりの部屋でアメリカの地図を広げた。
 結婚を機に建てた家はカリフォルニア、自分の主な職場はテキサス、祖父はニューヨークで、娘の大学はサウスダゴタ。同じ国内に住んではいるが、物理的にも心理的にも距離は遠い。
「父さん、入るよ?」
 そんな承太郎に寄り添う、たった一人の家族。血のつながりはないが、共に過ごした時間は長い。
 過去、戦いの最中に邂逅し、行くあてを失った幼女を引き取り育てていたのだ。日系人と思しき顔立ちと自分たちの苗字から、承太郎が名を付けることになった。
 そう、空条公子は自分の名前も言えない様な幼いころに引き取った養女である。
「また根つめすぎなんじゃない?」
 小さいころから泣き虫で、徐倫の影でおどおどしていた公子も、もう十九歳だ。といっても正確な年齢かどうかは誰もわからないのだが。
 養育にあたって娘二人を差別したことはない。母もまた二人に平等に接し、平等に与えていた。それを破ったのは、承太郎だ。彼女には、徐倫にも妻にもないものがおそらく生まれついて持ち合わせていた。そう、スタンドだ。
 過酷な戦いにも身を守る強さを持つ公子ならば、一緒にいても大丈夫だろう。孤独に耐え切れなかった承太郎の弱さが、徐倫と公子の扱いに違いを産んでしまった。
 しかし、いずれ徐倫もスタンドが覚醒するかもしれない。それも、望まないような場面に追い詰められ、生と死を賭けるような土壇場で。そう思うと恐ろしい想像が頭を駆け巡る。実の娘が、死の危険に瀕するかもしれない。
(だからといって、公子ならば死んでもかまわないというわけではない)
 公子が差し入れてくれたマグカップを受け取り、湯気を息で吹き飛ばしてから口を付ける。最初緑茶をマグに注ぐのはどうかと思うと嫌そうな顔をしていたのだが、公子と長らく二人だけで暮らすようになってからそういった細かいことに注文を付けなくなった。おかげで湯飲みは食器棚の一番奥に伏せられている。
(あの徐倫でさえ湯のみとマグを使い分けていたんだが、元々女性らしい気質の公子がこうなるとはやはり俺のせいか?)
 そのとおりである。母親と別れたのは十代半ば。男だけの子育てはやはり細かいところに気が回らなくなる。
「カリフォルニアの家に戻るの?」
「帰りたいか?」
「そりゃまあ、久々に母さんや姉さんに会いたいし」
「……すまないな」
「ううん。こうして私が父さんについていくのは母さんたちのお願いでもあるわけだし。それを踏まえたうえでの私の意志だからね。親が言うから仕方なくついてきてるわけじゃないのよ?」
 スタンド使い同士でしか理解しあえないことがある。だから承太郎は家を出るにあたって実の娘ではなく公子を引き取った。別れる際に、くれぐれも承太郎を頼むと母に念を押されて。
 普通は逆で承太郎に「公子を頼みます」と言うべきなのだが、何せこの男の性格上、一人で生活させていればマトモな食事もとらずカフェインだけで数日過ごすなんてこともザラである。家族の中で一番心を開いている公子だけが、きっと承太郎を支えてやれるのだということは母も理解していたようだ。
「そうだ、明日からしばらくニューヨークにいくから家を空けるね」
「爺さんのとこか?」
「うん。というより静さんのとこ。ほら、私たち養女同士だからさ。成人後に家を出るとしたらどうするのかとか、色々お話聞いとこうと思って」
 静とは、静・ジョースターのことである。杜王町でジョセフに引き取られた彼女はその後ニューヨークで育ち、現在は養父の不動産業とは関係のない職についている。
「家を、出る」
「かどうかはまだ決めていないけど、話は聞いておかなきゃと思って」
「行くな」
「まだ分かんないって」
「ニューヨークへ、だ。行くならば静とは友人として接し、養女という話をするな」
「どうしたの?急に」
「行くな……行くな……」
「うん?わかった、よ。とりあえず、会う約束はしたからしばらく家は空けるね?いい?」
「行くな……」

 公子と袂を分かつという具体的な話を初めてして、ようやくわかった。失いたくない、離したくないというこの気持ちが、肉親としての情ではなく、一組の男女としてのそれだということに。
 部屋に一人篭る事は毎日のようにあったが、家に一人きりというのは久しぶりだ。公子がエクスカーション(修学旅行)に出かけたとき以来ではなかろうか。だがそのときとは違う焦りがあった。
 念を押しはしたが、やはり静と家を出て行くときの話をしているのではないか。血がつながっていない者同士で気を許して話を切り出してしまわないか。旅先で無事にいることよりもこんなことを考えてしまう承太郎は、自身が既に父親としての役目をとうに放棄していることを自覚し、その足で役所へ向かった。
 一枚の紙を手にし、ふと考えて紙を戻す。その後家に戻って色々と検索をしては途中であきらめてノートパソコンをそのままにしてベッドに横になった。
 そのまま眠ってしまったタイミングで、公子がキャリーケースを引いて家に入ってくる。眠る父と、傍らで光を放つノートパソコンのディスプレイ。ふとそれに目をやると、公子は持っていたハンドバックをその場に落とし、空いた手が震えながらマウスを握った。

結婚 養女 州法律 テキサス

(父さん、何を調べてるの……?)

養子縁組 解除

「おかえり、公子」
「!!!!」



「何するつもり……父さん!」
 承太郎は公子がいない間に整理した自分の考えを打ち明けた。家族であることには変わりないが、それは父と娘ではなく夫と妻の関係にありたいのだということ。いつからそういう目で見ていたのか正直自覚はないが、一度そう認識してしまえばもう歯止めが利かないこと。婚姻届という紙一枚で女を束縛出来る事は経験上知っているので戸籍的にまずは結ばれようとしたことと、そうすれば家を出て行くなんて考えも封殺できるのではないかと思っていたこと。
 しかし養子縁組をした相手と結婚が出来る州があるかどうか分からないこと。ならば違う方法で公子をつなぎとめるつもりでいること。
「これで私が今から何をするつもりか分かったか?」
「わかんないよ……なんで……」
「最後に、親として教育してやることがこれとはな。性教育というものは同性の親が施すものだと考えていたが、まあ仕方がない。引き離してしまったのは私たちだ」
 普段は服に隠されている部分の肌を診るのは、幼い頃風呂に入れてやったとき以来であろうか。既に大人としての機能を持つ公子の体に丁寧に舌を沿わせながら、承太郎は一人の女性に成長した公子の体をくまなく味わった。
「親子は終わりだ。次に私を“父さん”と呼んだらひどい目にあうと思え。そうだな、承太郎と、呼ぶんだ。さぁ」
「……じょ……」
「怖いか?安心しろ。お前を愛するという一点においては、十九年前と同じだ」
 言葉と、手つきは優しい。公子の体の震えを止めるように添えられる逞しい手。だが反対に承太郎の下半身は凶暴に存在を主張していた。
「……この状況じゃやはり濡れないか」
 唾液で滑りをよくしてやってもよかったが、やはり公子の肉体が受け入れる準備が出来ないままに進めてしまうことでこういった行為自体に恐怖を覚えるのだけは避けたい。
(これから毎日することになるからな)
 胸と性器の両方を指先でつまむ。指を擦り合わせるように、中で軽く押しつぶすように動かすと、公子の体には電流が走ったような衝撃が生まれ、びくりと体が跳ねた。これはまだ急な刺激に驚いているだけでまだ快楽からの反応ではないことは分かる。焦らないように、最後の理性を必死に意識しながらまずは公子にも興奮を高めてもらうことを優先する。
「やめて!どし……て……なんで……」
「公子、怖がらなくていい。一時間だけでいい、俺を信用して体をゆだねてくれないか?」
「と……」
 その言葉が“父さん”という単語を飲み込んだことが分かる。怯えながらも承太郎の言いつけを律儀に守る公子に、最後の理性が崩壊した。
 涙目でこちらを見上げながら、名前を呼ぶのも照れくさくてそっぽを向く。そのうえ衣服は乱れ、大きく膨らんだ乳房が呼吸に合わせて上下する。この状況を我慢できるほど承太郎は枯れ果ててはいなかった。
 とうとう我慢できずに割れ目に指を沿わせる。それを上下にしごきながらキスをすると、声と愛液の両方が少しずつ漏れ出した。指に液を絡ませ、奥へ奥へと通路をこじ開けながら太い指が侵入する。肉壁が絡みつくように動き、この中を男のモノで満たして欲しいと懇願するようにひくひくと指を締め上げる。
 もう、受け入れる準備は出来た。
「挿れるぞ」
 引き抜いた指でズボンのジッパーを下ろすと、そこから出てきたものに公子は絶句した。指だけで少し苦しさを覚えていたのに、こんな太いものが……それも、育ての親のものが入る。
「やめよう……やっぱり……」
「だめだ。もう、押さえがきかない。公子、思い出したよ。お前が十代の半ばの頃から少し意識をしていた。最初は、徐倫と違って……血が、つながって……ないからだと……」
 思い出を語りながら、家族の名前を口にしながら、レイプする。
「……だが、最初からこうしていればよかった。ぐだぐだと、迷う必要なんてなかった。お前とつながることがこんなにも、気持ちよくて、幸福になれるのなら」
「とうさ……!」
「二回目は見逃さない。言ったとおり“ひどいこと”をするぞ。体の力を抜きなさい」
 とは言われても逆に強張る体に、承太郎は容赦なく腰を打ちつけた。こうすることで公子をつなぎとめられるか、はたまた逃げ出す動機を作ってしまったのか。どちらに転ぶのかは正直分からない。分からないがこの行為を止められない程度には、おぼれてしまっている自分を認識した。


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