小説 | ナノ

 まるでB級ホラーだ。目が覚めると知らない場所、血で汚れた床。耳を突き刺すような女の悲鳴は、未来の自分の声。
 こんな設定はありふれている。今時この脚本では撮影にすらこじつけない。そんなベターな展開に、ベターなリアクションしか出来ない自分に笑う。
 扉を叩きすぎて手が痛い。窓から脱出しようとカーテンとシーツを繋げていると兜のようなものをつけた鳥が窓辺に降り立ち、鋭くこちらを睨みつける。監視されている。そう理解するということは、出口がないことを把握するということだ。
 そしてその唯一の扉が開くときは、自分が悲鳴を上げる番になる。

「テレンス、休憩か?」
 そう話しかけられて嫌そうな顔をしながらテレンスはそちらを見た。自分をファーストネームで呼ぶのはこの館の中では兄だけだと分かっているからだ。
「ええ」
「最近随分余暇を貰ってる様だな」
「公子のおかげです」
「あの東洋人?」
「彼女のおかげで“食べ残し”の処理がなくなりましたから」
「死体ならゴロゴロあるじゃないか」
「それは“食べかす”です」
「その違いは何だ」
「食べ残し、つまり、まだ血のある女ですよ。体の相性がいいのか、気まぐれなのか、数人手元に置いて遊んでいたようですが、もうそちらの処理は公子一人で済まされるようで」
「ほう。まさかとは思うが……」
「その先は言わない方がいいですよ。どこで誰が聞いてるかわかりませんし」

 女は抱いたほうが血が美味くなるらしい。興奮作用が血液に何らかの影響を及ぼすのか、そういった医学的な知識はないが、そもそも血液の味を堪能しているわけでなく、その人の魂の通貨として血を奪っているということらしい。
 よくわからないが、オーガズムを迎える女性というのは心底美しさを増すということだ。だから何度か絶頂に達した女の血を吸いはしたが、中にはそれでも不味い連中がいた。
 そいつを黙って部屋の外にほっぽり出すものだから、どう処理すればよいのか分からずとりあえずテレンスはその“食べ残し”の世話もしていたのだ。あとから「何故殺した」などと言われても困るから。
 が、ある日その女を全て消せと命令が下った。何人かはそれでもDIOにすがり付こうとしたが他の好戦的なスタンド使いが息の根を止めてやった。残りは皆館の外へ逃げ出した。
「DIOさま、何故急に……?」
「公子が……」
(公子?)
「かわいいやきもちを妬くものでな。多数の女の中に埋もれたくはないと。自分だけを見よと」
「その方のお世話について私は何か致すべきでしょうか」
「ああ、食事は直接私の部屋にもってこい、私と同じものをだ」
「承知いたしました」
 そこでテレンスは確信する。DIOがついに一人の女性に決め込んだことを。その存在をしばらく明かさないくらいに、そして食事を自分ととるという宣言どおり、自分以外の男に見せたくないほどに彼女を束縛したいのだということを。

「殺したの……?」
 この館に女は五人しかいなくなったことを告げると、公子の顔は青ざめた。
「エンヤ婆とマライアとミドラー、それにネーナについてはすまないが失うわけにはいかない。理解してくれるか?」
 顎の下に手を伸ばし、猫の喉を鳴らすような手つきで撫でてくる。目はこちらにやさしく向けられているのに会話の内容がかみ合わないことに狂気を感じた。
「他の人は……殺したの……?」
「お前の望むとおりに」
「そんなこと言った事ない」
「……何人かは逃がした。それでも私に抱かれたいと抜かす連中は始末した」
「ひっ」
 昨日まで喋っていた相手が、もうこの世にいない。もしかするとその肉体だけでなく魂ごとこの男の従者に消されたのかもしれない。そう思うと正気を失い体が震え始める。それを止めるように両腕に掴まれ、じっとこちらを見つめてくる、殺した張本人。
「安心しろ。お前が冷たくなるようなマネはしない。私が抱くということに、命を賭す者もいる。永遠の安心と快楽を得られる行為だ。それを理解したうえで、足を開くんだな」
「身篭っていた人もいた。それを、あなたたちは」
「子供?そんなに重要なことなのかそれは」
「なっ!当たり前でしょう!」
「そうか。そうなのか。なら……作るか。そうすればお前も子のために父親を愛するよき母親になるか?」
「やめっ……」



 寝台のシーツは乱れ、中央部分は円形の染みが出来ていた。体質があるらしいが、公子は絶頂を迎えると潮を出してしまうようだ。尿意と違い自分の意識でとめられないものだからたちが悪い。
 この恐ろしい相手の愛撫によって何度か達してしまったという事実に、目も覆いたくなるほどの羞恥心を覚えていた。
「私もそろそろ発散させてくれないか?」
 ベッドに座り込む公子の眼前にちょうど、DIOのイチモツがそそり立っていた。震える口を押さえられ、そこに強引にねじ込まれる。噛み付いてやろうと思ったが彼らが平然と人を殺すことが本当だと知っているから恐怖に勝つことが出来ない。
 唇に金の陰毛があたる感触が気持ち悪い。見ないようにと目を閉じると他の感覚が敏感になり、唇や耳を犯してくる。腰の動きに合わせてDIOの吐息が漏れ、たまに混じる甘い声に合わせてびくんと震えるのが分かる。
「お前が、私のモノを舐めているというだけで興奮が収まらん。もうすぐにでも達しそうだが、今日はお前を孕ませるためのセックスだからな。口内では出さん」
 口から引き抜くと勢いよくベッドに倒れこみ、足を上げさせて露になった公子の秘部にあてがった。
「今日は全て、ここに出す」
 相当限界が近かったのか、入れながら液体を吐き出す感覚がある。ゆっくりと侵入させ、最奥でカクカクと小さく腰を前後させ、残った精液を全て吐き出しつくした。
「俺の子を妊娠しろ」
 そのまま抜かずにまた腰を前後に動かす。中を再び圧迫していく感覚に、この男が絶倫だったことを公子は今更思い出した。
 自らの体液をローション代わりにし、ぐちゃぐちゃとわざと下品な音を立てて中をかき回す。抵抗する腕はスタンドに取り押さえられ、掴まれた腰はDIOの手によって前後左右構わず乱暴に振り回される。その中の一瞬、何かが擦れる感覚がした。
「あ……んっ」
「ほう?初めて見せる顔だな」
「……や、やだ」
「恥ずかしがるな。そんなにもかわいい顔、見せないほうがもったいない。ここだろう?」
 そこに何があるのか自分の体のことながらよく分からない。が、初めて挿入で快楽を感じてしまった。それがなんだかこの男を受け入れてしまったような気になって、公子は目に涙を浮かべた。
「泣くほど気持ちいいか。もう二度も達したというのにまだイキたいとは……淫乱だな」
「ちが……あっ、あっ」
「構わない。私のモノでイケ」
 DIOの太い質量が欲しくなる。もっと早く、長くそこを突いて欲しいと思ってしまう。ついに自ら強請るように腰を動かし、涙を零しながら公子は大きく体を弓のように反らせた。
「い……」
「孕め」
 膣内が痙攣しているのが分かる。その振動によりDIOも再度精子を発射した。
「女はオーガズムをむかえると妊娠しやすくなるというのは本当か?これからしばらくは、俺のコレでしかイカせてやらんことにするか」
 そういって一旦抜き出したものは、既に半勃ち状態になっていた。


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