小説 | ナノ

 昨晩の夜襲にせっかくの高級ホテルのベッドの感覚を楽しめないまま既に東の空は白んでいた。オーシャンビューの一室から殴り飛ばされた敵スタンド使いはそのまま海へと装備なしのダイビングへ向かうことになるだろう。同じフロアに宿泊していた承太郎、花京院、公子の高校生トリオは出発までの二時間弱、急いで睡眠をとることにしようとそのままベッドやソファに沈み込んだ。

「Bonjour!なーに辛気臭ぇツラしてんだよお前ら!今日も元気に行こうぜ!元気にっ!」
「ポルナレフ……お前も僕らと同フロアだったよなァ……?」
「ん?なになに?」
「あんだけ俺たちが騒がしくしてたのに起きなかったのか」
「え、俺だけのけ者にして楽しんでたの?ひょっとして昨夜はお楽しみでしたね的な!?」
「楽しかったなぁ、敵スタンド使いを皆で一晩中ボコボコにしてたのは」
「え。敵……?」
「なんじゃ、お前ら戦っておったのか。しかし三人がかりで一晩かかるとはなかなかの手練だったようじゃな。寝てないようなら後部座席で寝てなさい。ポルナレフは今日一日運転席じゃ」
「はーい」

 後部座席に乗ってすぐ寝落ちしたようで、舗装されていない地面の大きな段差に車が乗り上げた衝撃で承太郎は目を覚ました。先ほど出発したところだと思っていたが既に四十分以上が経過している。
 ジョセフのナビゲートにも関わらずどうしてこんな悪路を走っているのか、運転席に文句を言おうと身を乗り出したときにふと違和感に気づいた。
(……チッ)
 連日の疲れと、昨夜折角の個室をあてがわれたのに処理するチャンスを逃したこと、そして寝起きというこのタイミングと、条件は複数揃ってしまっているのが悪かった。承太郎のズボンはテントを張っている状態になっており、狭い車内で動こうとするとどうにもそれが邪魔に思えて仕方がない。だが問題は動きづらいことではない。
「ポルナレフ!段差は避けろ!」
「少々構やしねーって。後ろもぐっすり寝てるみてぇだし」
 これだけの揺れだ。先ほど自分が目を覚ましたようにここで隣に座る公子も目が覚めてしまうのは大分マズい。
 しかし条件が同じならば公子の更に隣で眠る花京院はどうなっているのか。そっとそちらを見ると状態は半勃ちといったところか。あまり野郎の股間をじろじろ見る趣味はないので承太郎は体制を元に戻した。
(何か隠せそうなもの……)
 帽子を膝に置くか?いや、あまりにもバカっぽすぎる。学ランをぬいでかけるのはどうか。何だかそれはそれで女々しい感じがする。
(足を閉じるか?いや、俺が足を閉じて座っているだけで何を隠しているのかバレちまうだろう。公子はともかく、花京院が見たら真っ先に突っ込んでくるぞ、アイツの性格上……!)
 しかし思考をめぐらせるにはまだ能は完全に覚醒しておらず、溜まった疲労が二度寝というこの世の楽園へと誘おうとしている。
(あー……眠ぃ……)
 やがて再度の眠りへと落ちていった承太郎と逆に、今度は花京院が目を覚ました。
(ポルナレフがうるさい)
 やはり文句を言おうとした花京院も下半身の違和感に気がつき、公子に見られていないか慌てて横を向く。横を向くとそこにあったのは、無防備に寝顔を見せる公子の姿と、太ももから除く白い足。生唾を飲み込む音が花京院自身の耳に届いた。
(こ……れは、まずいぞ、完全に勃つ)
 自分のものが脈動するのがわかる。ズボンは更に膨らみ、完全に勃ち上がってしまった。
(だだだだめだ、今ここで公子さんが起きては……今まで僕が築き上げてきた紳士のイメージが!)
 本当は計算紳士であることは公子も見抜いているのだが、知らぬは本人ばかりなり。とにかくバレるわけにはいかないことは同じなのだが打開策が承太郎と同じことしか思いつかない。
(そうだ、ここに大き目のブランケットがある。これをこう……)
 端を伸ばせば承太郎の方まで届くほどに大きなブランケットだ。自分の膝にかけていたら何だか女々しいが、皆に届くようにかけていれば不自然さは大分和らぐ。
(承太郎の足元まで……え?)
 足元に手を伸ばしているのだから当然承太郎のエレクトしているものが目に入る。それに驚き少し体が揺れ、まだ一度も目を覚ましていない公子にぶつかった。
(マズイ!)
 慌てて体勢を立て直し、狸寝入りをする。しかしカクンと頭を揺らしていた公子はその衝撃で完全に承太郎の肩に体重を寄せるような体勢になった。どすっと落ちてくる重さに、今度は承太郎が目を覚ます。
(ん……。ん?)
 肩の違和感の正体を見ると、長い睫の目立つ閉じた目と、少し開いた潤んだ唇。そして着崩れた制服の胸元。
(やっ……べ)
 もうここまで来ると痛みすら覚えるようになった。幸いにも誰がやったかはよく分からないがひざ掛けがかけられているためそこまで目立たない。しかし胸元に覗くキャミソールの色まで確認してしまうと、その勢いは収まらない。とうとうひざ掛けを持ち上げるまでに成長しきってしまった。
(犯してぇ……!)
 という様子を薄目を開けて見ているのは花京院。
(承太郎、鼻息荒いぞ)
 なんだか起きづらい雰囲気になってしまい、好きな女が違う男にもたれかかっているのをただ見ることしか出来ないこの状況に歯がゆさを感じてきた。
(いや、仕掛ける方法は、ある)
 そのとき、またしても段差を乗り越えたランクルが大きく立てに揺れた。この振動を使い、今度は花京院が公子にもたれかかる。
(花京院、公子が重たそうだろ)
 だがいかに高身長の承太郎といえど、公子を挟んでいるので花京院の方まで手が届かない。近いほうの右手は公子が頭で塞いでいるので、左手ではどうしても押し返すことが出来ないのだ。だからといって動いてしまえば公子との密着が崩れるかもしれない。
 どうやって引き離そうかと頭を巡らせている間、花京院は嗅覚を全開にしていた。
(公子さん、いい匂いがする。同じシャンプーを使ったはずなのに、どうしてこんなに違うんだろう。ああ……もうだめだ、下の方はもう止められない)
 花京院のブランケットも徐々に持ち上がっていくのを承太郎は見てしまった。こうなっては四の五の言ってられない。身を乗り出して花京院の頭を鷲掴むと窓際に追いやるように押し出した。ガラスにゴツンとぶつかる鈍い音がする。
 そして戻り際、頭の寄りどころをなくした公子の肩を抱いて、まるで恋人のように抱き寄せたのだ。
(承太郎……やるな!揺れろ……揺れればまた戻れる)
(花京院、あくまでも寝たふりを続けんのか?揺れろ。車が揺れりゃそれを言い訳にもう少し攻められそうだ)
 そして両者の期待通り、ガタタタタンと大きく車内が揺れた。二人は狙い済ませていたかのようにさっと同じことをする。
((ブランケットの下なら見られない!!))
 三人の上をまたがるようにかけられていたブランケットが、その振動と同時に蛇のような形を作った。両者同時に手を布の下に侵入させ、同じ場所を目指して動いていたのだ。
(!!)
 しかし行き着く場所が同じなら、当然二人の手が触れ合うわけで。太ももの上を動いていた手がコツンと当たり、両者共に動きを止めた。
「おめーら何やってんだ?」
 先ほどの揺れがあまりにも大きかったため、ポルナレフが一旦停車させたようだ。ジョセフは車を降りてボンネットを開けて何かを確認している。
「二人とも公子によりすぎじゃねぇか。それにこんな暑いところでひざ掛けなんていらねぇだろ、公子もほら、汗かいちまってる」
 ポルナレフの手が秘密のヴェールという名のブランケットを剥ぎ取った。その感覚についに公子も目を覚ます。
「ん……ふっ、二人とも何!?何やってんの!?」
「いや……ポルナレフが」
「公子の下着を見ようとしてたから手で隠してたんだ」
「は!?」
「はー!?いやいや、俺はそんなつもりねぇぜ、虚言はヤメロ!」
「というか、公子が足を開いていたから僕がブランケットをかけたんだ」
「さっきの揺れでずれたところを俺が直そうとしたら」
「「ポルナレフが……」」
「ポルナレフっ……さいってぇ!」
「違ぇ!な、何なんだ今日は厄日か!?お前ら、弁明してくれよ!俺は無実だああああ!」




「寝ながら迷惑かけてたみたいだね。ごめんね、承太郎、花京院」
「構わないさ」
「仕方ねぇことだ」
「またもたれかかってたら起こしてくれていいからね」
(起こすわけねぇだろ。今度はスカートの下も上手いこと探ってやるぜ)
(スタンドを使えば起こさずイタズラできるかな?次ホテルを使えたときに試してみようかな)
「公子、騙されんじゃねぇぞ!」


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