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異変はシスターの一人が感じ取ったことがきっかけだった。
水汲みにやったはずのロゼッタが一時間経っても戻って来ない、と。最初は村の誰かと話しているのかもしれないとは思ったが、一時間も帰って来ないのはどうもおかしい。
そして真っ先に井戸へ向かったのはアルブレヒトだった。
彼が息を切らせながらも井戸へ行くとロゼッタの姿は一切見えなかった。
転がっているのは彼女が持って行ったと思われる木の桶と、この村には似つかわしくない宝石のついたブローチ。きっと、いや、絶対にロゼッタの物だった。
心配すると分かっていて、ロゼッタが勝手に姿を消したとは考えにくい。
魔族だとバレてはいけないことも彼女は重々承知している。
確実に彼女の身に何かがあったのだろう。
一時間前だった、ロゼッタに素直に謝ろうと決心したのは。
その決心さえ、もう容易に果たすことは出来ないと彼が悟るのに時間は掛からなかった。
13幕 ロゼッタ=グレア
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