バルバッド編



「ま、あの時に名乗っていないから俺の名前を知らないのは当然だけどな」


あっけらかんと言い放った真実に、ふざけんなと思ったナマエがその思いを言葉にしようとしたが、いち早く感づいたアリババがナマエの口を咄嗟に塞いだので、フガフガと言葉が音になることはなかったが、数秒もしない内にアリババの頭にタンコブが一つ出来上がったのは言うまでもない。


「なぁなぁ、もちろん俺の事覚えているだろ?」
「え?うん。もちろんだよ。でも、あの時から髪伸びた?」
「そんなすぐ伸びるかよ」


変な奴と言いながら笑うジュダルは、ナマエをジロジロと面白い玩具を見つけたように見つめていた。
ジュダルが人に興味を持つことを珍しく思ったシンドバッドは真意を確かめるべく、二人の動向を見守っていた。もちろん、何かがあればすぐに反応できるように気を張り詰めたまま。


「(え、何でこんなに見られているのさ。あー思い出せていないのがバレちゃった?いや、ナマエさんの華麗なる演技を早々に見破られるはずもない。大丈夫。私の考えるところ、大人の女性が気になる年頃だからだな)」
「ふぅん。でも、ここに居るってことは迷宮を攻略したってことか」
「「「!!!?」」」


そうジュダルが呟いた言葉に反応したのは、アリババとアラジンにシンドバッド一行だ。
だが、迷宮が今一つ分かっていないナマエはまたゲームの話?と思っていた。


「ダンジョン攻略?あの大ヒットしたクエクエ的なやつのこと?アレね、結構クリアするの大変だったんだけど、私ってそれなりの事をそれなりに出来ちゃうからさ。ちょっと時間は掛かったけどね」
「は?」
「いやさ、別に自慢じゃないよ?プロじゃないし?でも、アレをクリアしたのだいぶ前だよね。ほら、仕事忙しくて新しいのはしてなかったから仕方がないけどね」
「……やっぱり(ナマエさん絶対アイツの事忘れてるよ)」


妙に噛みあってあいない会話の空気の中アリババは確信してしまった。
先程まで動揺からか泳ぎまくっていた視線を無駄にキリッとさせて言った言葉にコイツ何言ってるんだ?と思ったのか眉間に皺を寄せるジュダルにナマエの心情を理解してしまったアリババだったが、シンドバッド一行は未だついていけずに見守っていた。


「ナマエお姉さんだったかい?」
「え、お姉様?そう私がナマエお姉様だけど?」
「ナマエお姉さんは迷宮攻略者なのかい?」


そんな微妙な空気の中、空気を読む時は読むが読まない時は読まないアラジンがナマエに近寄り声を掛けた。


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