バルバッド編



姉御じゃないってもう何十回も言ってるじゃんとマスルールに未だ抱き上げられている状態で抗議を上げるナマエ。
そんなナマエに一歩また一歩近づいて、姉御のために姉御と一緒にと呟いて終いには涙を流しながら姉御と新しい道へと進みたいのにと泣き出す姿をナマエは蹴り飛ばそうと足を構える構図を見て、シンドバッドは横に控えていたジャーファルに振り向いて、どういうことだ?と聞いているが、私に分かるわけないでしょう。シンが聞いて下さればこの状況も理解できるのではないですか?と言い放った。
まさかのジャーファルの言葉にシンドバッドは、え、俺が聞くのか?と疑問に思ったのだが、その疑問を言葉にする前にジャーファルがほら早くして下さい。話が一向に進まないじゃないですか。見て下さいマスルールもどうしたらいいのか困って彼女を持ち上げたままですよと言われてとりあえずマスルールにナマエを下ろすように命じ、ナマエが下ろされるとシンドバッドはナマエの傍まで近づいて行った。


「初めましてお譲さん。珍しい恰好をしているね」
「どうも初めまして、金持ち臭いオーラをしているね」
「……そうかな?」


しがない商人さと続く言葉はジリジリと近寄り懇願した目で見つめる元盗賊をナマエはマスルールを盾にして近寄るなボケェという言葉に遮られてしまい、笑顔で高まっているシンドバッドはジャーファルの少し同情めいた視線を浴びていたが、あえて気にせず会話を続けることにした。


「ところでお譲さんに聞きたいことがあるのだが、いいかい?」
「私?」
「申し遅れたね。私の名前はシン。御嬢さんの名前を伺っても?」


手を取りながら微笑を浮かべ名前を聞いてくること人の今の微笑が誰かと被るとナマエは感じていた。
それはいったい誰か、頭の中でいろんな人が登場しては次の人が押しのけて登場する。
争いになりそうになったとき、全員を押しのけて登場した人物にピンポンと正解の音が鳴り響いた気がした。
そうだこの微笑は玉子焼きを片手に食べるわよねと、訪ねながらも絶対食べろよ、お前に拒否が出ると思っているの?と無言に問いかけてくる人物の様だと答えに辿り着いたナマエは、目の前にいるシンドバッドに嫌な予感がしたのか、とっさにジミーと名乗った。

「(すまないジミー退。せめてこの世界ではお前の名前を広げてやるから今だけ名前を貸してくれ)」


その直後頭の中で、ちょっとぉぉ!ジミーが俺の名字みたいになっているから!俺の名字は山崎だから!と叫ぶ男がいたが、その姿はなぜかぼやけて見えるので、さすがジミーだと関心しながら心の中で詫びた。
そして、名乗る時にシンドバッドの後ろに玉子焼きを構えている妙の幻覚が見えていたからか、引き攣りながら小声で言ったせいでジミーがミイと名乗ったのと勘違いし、ナマエは可愛らしい名前だと言っているシンドバッドだが、今は妙の面影が消え恐怖も何も感じない目の前の男にコイツバカだと思った事は仕方がないだろう。


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