幼少期編


帰れるようになった前日。つまりはここにきて六日目。
どうなるかと思ったけれども、案外どこでも楽しめるものだと噛みしめながら今日もナマエは朝から賭け事に精を出していた。

え、五日目?そんなもの何事もなくだらけた一日を一人で過ごしたに決まっているだろう。
だいたい、昨日あんなに稼いで潤っているのにそれに甘えちゃだめだとか言ってアリババは今日も靴磨きをしているし、カシムはマリアムと出かけているし、別に誰も相手してくれなかったから一人でいるわけじゃないから。

そんなことは置いといて、昼まで数時間ぶっとうしで気が付いたことがある。
何かおかしいと。
一時のテンションに身を任せていたい気持ちを抑えてその場をはなれてスラム街へと戻ってきていた。
何がおかしいかと言えば、物凄くついていることだ。


「おかしいなぁ。いつもの私なら懐事情がヤバいことになっている筈なのに逆に潤うだけ潤っちゃうし、何かありそうでヤダなぁ。自分の才能が開花したかもしれないのに素直に喜べないところもヤダなぁ」


ブツブツ言いながらも、だからと言って素直に帰るはずもなく、ガッツリとイカの串焼きを齧りながら暇つぶしにアリババとカシムを探していた。

モグモグ食べながらいないなぁと思いながら歩くこと数分するとカシムの声が聞こえてきて、こんなに雨が降っているのに、遠くからも聞こえるなんてあいつは今日も元気だなと思いつつ声のする方へと足を進めていくと、カシムの声に怒りを含んでいることに気が付いた。

ナマエは二人が見えるか見えない所で立ち止まると、言い争っている二人の会話を聞くことにした。


後ろ姿しか見えないが、カシムの言葉から男の方はカシムの父親らしいことが伺える。
これがただの親子喧嘩がヒートアップしただけならば放っておくが、ちょっとだけ穏やかではないなと思っていると、カシム父はカシムを殴り飛ばしたのが見えてナマエは足を踏み出し彼らに勢いをつけながら駆け出した。


「せいやぁぁぁぁ!!」
「ぐっっっ!!!!」
「…ナマエっ!?」


その勢いのままナマエはカシム父にケツキックをお見舞いした。


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