幼少期編


ナマエはアリババやカシムの知らない言葉をたくさん使う。
でも、それはナマエの世界では当たり前で、適当なことばだったが……。


「ナマエさんマダオってなに?」
「マダオ知らないのか?」
「聞いたことねぇな」
「マダオとはな、色々使い方があるが今私が使うマダオは『マジでダウンしてる女』略してマダオだ。一般的に多く使われるマダオはまるで駄目なおっさんが多いかな。まぁ比較的ダメな人に使う形容詞的な?」
「そ、そうなんだ」
「無駄な知識を教えるなよ」


最初は知らない事を知ることが楽しそうに耳を傾けていたアリババだが、物の数秒で口が引き攣るのを感じた。
子供ながらも必死に笑顔をキープしようとするところがけなげでこれからきっと苦労をしょい込むタイプを見せつけられた一瞬だが、今は気にしない事にしよう。
それとは反してカシムは最初からナマエの言葉に期待なんかしていなかったが、期待通りの内容にただ呆れしか感じなかった。

ナマエはそんなカシムを見て、可哀相な目で見つめながらため息を吐いた。


「まったくカシムはダメだねぇ」
「は?」
「アレだよ、柔軟性がないんだよ。もっと、こう、楽に生きて見ろよ。ほら、ぐでーってなやってみ?ほらやってみ?」
「しねぇよ」
「なんでだよー。見えない世界や知らない自分が知れちゃうかもしれないよ」
「知りたくねーよ。つーかいい加減起き上がれよ」
「バカヤロー。こちとら自分の中でものすげー戦いが繰り広げられているんだからな。地面にうつ伏せている人が何もしてないなんて考えるんじゃねぇよ。外からじゃ分からないだけで、今後の自分が決まる一大イベント並みに戦っているんだよ。今起きて見ろ、どこぞのテロみたいな第三勢力が立ち上がるんだから」
「つまり、何が言いたい」
「動いたら吐いちゃう」


真面目に言い切ったナマエにこいつもうダメだなという視線を寄こす二人。

そんな視線を尻目にナマエはどこぞの死んだ魚のような目が似合う男と目がそっくりなんだろうなと心のどこかで思うと、何故か思考の中に浮かび上がった姿の男といらないドSが一緒になってこっちを指さして、ダセーとにやにやしている幻覚が浮かんでは、殴りたいと思っていたりした。

その日アリババとカシムは(自分の父親とは違う種類の)ダメ人間と言うものを知った。


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