nogood kiss

「キスして、よ」

私はロイにそう強請る。

ロイは少し驚いたような素振りを見せると、ぎこちなく私に顔を近づけた。

「目、瞑れよ」

言われた通り目を瞑り、顎を少し上げる。

柔らかな感触が唇を伝わる。

ロイの舌を入れられ、私も絡み付いた。

吸い上げられ、口内を荒らされる。

少しだけ、歯がかつりと当たった。

「ん」

ロイはゆっくりと唇を離した。

銀色の糸が2人を繋ぐ。

糸がぷつんと切れたその瞬間に、私はこういった。

「へたくそ」

ロイはムスッとして、「はいはい、すんませんでした」と言った。

彼は手袋を嵌めた手で口を拭い、私に背を向けてしまった。

「すねてる」

そんな彼の背中にぎゅっと抱きつくと、顔をうずめて匂いを嗅ぐ。

ロイの匂い。安心するな。

「エルヴィ……」

まだ少し怒っているような声色で私を呼ぶ。

私は笑みを零しながら「なぁに」と言った。

「いつか、お前を満足させられるキス、出来るようにするから」

真面目なトーンでそういうから、私は吹き出してしまった。

「ロイっ……」

「な、なんだよ」

若干恥ずかしがって焦る彼。

いつの間にか、彼の手は私の手に重ねられている。

彼の体温を感じながら、私は彼に愛の言葉を囁くのだった。

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