▼ 月と魔法使い5
「やっぱり私はアイゼンシュミット家にするべきだと思う」
「そうだよなあ……クラインシュタイン家は王家だが、他人の生気を使う魔術を使うんだろう」
この国には、たくさんの魔術師の家系が存在していた。大きなものから小さなもの。使う魔術は様々だが、すべての家系が「魔術師」の括りにいれられていた。
それぞれの地区でそれぞれの活動をしていたため、魔術師たちが他の魔術師と顔を合わせることもなく意識もしていなかったが、あるときとある魔術師が悪事をはたらいたことをきっかけとして、全ての魔術師をとりまとめる役割をもつ家系を決めようという話がでてきた。いわば魔術師の権威を決めるということである。その候補としてあがったのが、アイゼンシュミット家とクラインシュタイン家だ。
しかし、話があがった時点ではアイゼンシュミット家のほうが優勢であった。その理由が「アイゼンシュミット家の魔術は自らの生気を使う」からである。いくら国を守るためとはいえ、他人の生気をつかうクラインシュタイン家の魔術はあまり好ましく思われていなかった。
この話は当人たちにも当然届いていた。アイゼンシュミット家の長、ヨルクは権威を欲してはいなかったため気にしていなかったようだが……クラインシュタイン家の長、つまり国王はそうではないようだった。
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