アリスドラッグ | ナノ


▼ 大人じゃないけど、子供じゃない4


「……ん?」



 いつものように、深夜の見回りを群青がしているとき。窓から差し込む月明かりに照らされて、誰かが前から歩いてくるのを発見した。月明かりが差し込んでいるといっても、明るくはなく、顔は全く見えない。壁伝いにおそるおそる、といったふうに歩くその影をみて、群青はその正体に気付く。



「……椛。電気つけて歩けばいいだろ?」

「こ、壊れてて……」

「まじか。言っておかないとな……」



 その正体は、椛。向かってきた方向から、用を足しにいっていたんだな、と群青は察する。



「部屋まで送っていくか? 暗くて危ないし」

「あ、あの……」

「ん?」

「群青の見回りについてまわっちゃだめ?」

「いや、なんでだよ。寝ろ」

「明日学校ないから大丈夫……」

「どうしたんだよ、急に」

「お、おばけが!」

「……はあ?」



 がっ、と勢い良く手を掴んできた椛を、群青は苦笑いしながら見つめる。毎日妖怪と一緒にいて今更おばけ?にびびるなよ……と言いたいところだが、怖いものは怖いのだろう。一人で寝るのが怖いのだと察して、群青はぽんぽんと椛の頭を撫でて、言う。



「いねーよ、おばけなんて。いたとして、何怖がってんだ」

「怖いよ! トイレいったらなんか笑い声が!」

「……じゃあ、俺の部屋で寝るか? そろそろ見回り、紅と交代だから、一緒に」

「……えっ!?」

「え?」

「群青と一緒に!?」

「……やだ?」

「い、いやじゃない、けど、……けど」



 かあ、と顔を赤らめた椛をみて、群青はしまった、と思う。「好き」が食い違っているのに、これは少し酷いかも、と思ったのだ。しかし、椛がこくこくと頷いたものだから、いまさらひけない。



「……ん、じゃあ。いこうぜ」


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