アリスドラッグ | ナノ


▼ 大人じゃないけど、子供じゃない3


「なんで手をだしてあげないの?」

「あ?」



 休憩をしていた群青に、突然紅が問う。群青はなんのことだかわからなくて顔をしかめた。



「椛様。群青、椛様のこと好きじゃない」

「……いや、これは子供を可愛いって思う「好き」なような気がする」

「えー! なにそれ!」

「たしかにちゃんと椛とは向きあえている気がするんだよ、でも俺の好きはそういう好きじゃなくて」

「群青、不能になっちゃったの?」

「なってねえよ! まだ若いっつうの! こう……頭を撫でたいとは思ってもキスしたいとかは思わないっていうか」

「そんなに椛様、子供かなあ」



 うーん、と唸りながら紅が群青の隣に座る。じろじろと群青の顔を覗きこんでは、考え事をするように口をとがらせる。



「……柊様とそんなに歳かわらなくない?」

「いや全然違うだろ」

「だって23と17でしょー? 同じよ!」

「6歳も違う!」

「6歳差なんてあってもない同然じゃない?」

「成人の壁はでかい」

「えー!」



 つまらなそうな顔をしながら、紅はブーイングをした。つんつんと群青の脚をつつきながら、じとっとした声で文句を言い始める。



「椛様かわいそう。椛様が群青のことどう思っているかくらいわかってるでしょ」

「だから……もうちょっと大人になってから」

「ひどい! 何年待たせるつもり!」

「うるせえよ! 体格差をみろ! 犯罪臭がするだろうが!」

「しないよ〜、私よりは椛様のほうが背が高いもん」



 意見をゆずる気のない群青に、紅はため息をつく。よいしょ、とたちあがると、ぺしりと群青の頭をはたいた。



「あのね、17歳はあなたが思っている以上に大人だからね!」

「はい?」



 男ってやだやだ、と言いながら紅はそのままどこかへ行ってしまった。唖然とその後ろ姿をみながら、群青は頭をかく。椛のことは彼が赤ん坊のころから見てきている。自分が椛に手を出しているところを想像して、なんだか罪悪感がこみあげてきてしまったものだから、「やっぱりまだ早いよなあ」なんて呟いたのだった。


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