▼ エンドロール5
星が瞬く頃。いつものように二人で寝室に入る。椛はそのままベッドへ向かおうとしたが、小さな物音に気付いてふと立ち止まった。
「……どうしたんですか、鍵なんてかけて」
音は、カイが扉の鍵を閉めた音だった。いつもかけたりしないのに、そう思って椛が首をかしげると、カイはおどけたように笑う。
「椛、火遊びしない?」
「?」
「外はよくないかなって思ってずっとやめておこうって思ったんだけど、このまま待っていてもチャンスがきそうにないし」
「なんの話です?」
椛がキョトンとした表情を浮かべると、カイは困ったように目を細めた。ゆっくりと椛に歩み寄ると、そのまま抱きしめる。ぎゅっと愛おしげに抱きしめられて、椛の胸はどくんと高鳴った。どきどきとしてしまって動けないでいる椛の耳元で、カイが囁く。
「お願いがあるんだ」
「……お願い?」
「……あのね。俺……死ぬまえに、椛とセックスしたい」
ふっと全身の体温があがったような気がした。それでいて、胸が締め付けられるように苦しくなった。淡々とした声色で、そんなことを頼んだカイは一体どんな気持ちで言ったのだろう……そう思うと、じわりと目元に涙が浮かんでくる。
「……僕も、したいです。カイに抱かれたい。でも、音が……」
「だから……外で。西の森で、してほしい。人はこないようにするから」
「……それで火遊び?」
「うん……初めてが外って嫌かなって……言えなくて」
「……いいえ。今日は綺麗な星がみえます。すごく、ロマンチックで……いいと思います」
外でする……というのは、椛も少し驚いてしまった。結構な冒険心が必要なことに思える。でも、カイとならいいかな、そう思えた。カイとの思い出がつまったあの場所で、最初で最後のセックスができるのは……少し、嬉しいと思った。
椛は顔をあげ、カイを見つめると……そっと唇を重ねた。静かに、声もあげずに深い口付けを繰り返した。これから待ち望んだ、カイとセックスをするのかと思うと……幸せな気分になった。
prev / next