おわりとはじまりが訪れる2


「冬廣会長……おかえりなさい!」


 学園祭が始まる前と同じように……波折は篠崎の家に帰った。篠崎は波折をみるなりぱあっと瞳を輝かせ、ぎゅっと波折を抱きしめる。


「冬廣会長……僕に会えなくて寂しかったでしょう? 僕もすごく寂しくて……」

「ああ、うん」


 波折は靴を脱いで、家の中にあがる。迷いなく例の改造部屋まで歩いて行けば、後ろから篠崎がるんるんとした調子でついてくる。


「冬廣会長……早く僕とエッチしたいんですよね!? 何をしますか!?」

「あー……そうだね、とびっきりアブノーマルなことやっていいよ。この部屋にくるのも最後だし」

「最後? 何言ってるんですか、これからもずっと僕と一緒ですよ。まあ、でも冬廣会長がそんなに僕とすごいことしたいなら、応えてあげなくちゃなあ」


 篠崎はにこにこと笑って、波折の手を掴んだ。波折が悍ましいほどに冷めた目つきをしていることに、気付いていないのだろうか。そのまま天井からぶら下がる手錠で波折の手首を拘束してしまう。

 さっそく、と篠崎が鞭を使って波折を嬲ろうとしたときのことだ。部屋の中に、ドアチャイムが鳴り響いた。時刻は9時をまわっている。こんな時間に誰だろう、と篠崎は顔をしかめたが、もう一度チャイムが鳴ったところで舌打ちをしながら玄関に出て行った。


「まったく誰ですか……今から冬廣会長と……」


 波折との愉しい時間を邪魔された篠崎はご立腹だった。イライラとしながらロックを解除して、扉をあける。


「……え?」


 そこに現れた人物に、篠崎は驚きのあまり固まってしまった。扉を開けた先にいたのは――


「――ガッ……」


 その人物の名を口にしようとした瞬間、篠崎の口に何かが押し込まれる。固く、冷たいなにか。あんまりにも勢い良く突っ込まれたため、前歯が折れてしまい、口の中に血の味が広がる。痛み、それから恐怖。突然の来訪者への驚き。恐る恐る自らの口に入れられているものをみて、更に篠崎は絶望的な恐怖に蝕まれ、ガタガタと震えだす。


「やあ、篠崎くん。うちの波折がここに来ていると思うんだけど……お邪魔してもいいかな」


 口に入れられたのは、拳銃だった。そして、拳銃を篠崎の口に突っ込んでいるのは――「ご主人様」。波折の部屋に仕込んだ隠しカメラに映しだされていた、「ご主人様」だ。


「魔術がでてきてから拳銃は廃れたもんだけど……いいよね。視覚的で且つ絶対的な恐怖を相手に与えられる。篠崎くん、これ、偽物じゃないからね。俺が引き金を弾けば、君の頭は吹っ飛ぶよ」

「……っ、……!」


 なぜこの男がここに来た。波折がここにいることを知って、彼は自分に何をする。様々な思惑が篠崎の脳裏に浮かんだが、抵抗すれば自分は死ぬ。

 篠崎はぼろぼろと涙を流しながら、家の奥を指さした。篠崎が素直に自分の言うことを聞き入れると判断した男はにっこりと笑うと、篠崎の口から拳銃を引き抜く。


「あっ、……あの、……な、にをしに……」

「黙って歩いて」


 背中に銃をつきつけられて、篠崎はひっと飛び跳ねる。涙目になりながら歩いて、そしてあの部屋へ。篠崎が扉を開けると「その光景」が男の目に飛び込んでくる。


「……はあ、これは聞いていたよりも大分……」


 まるで拷問部屋のような、たくさんのSM用の道具が置かれた部屋。その中心に手をまとめあげられて拘束された波折。男はそれらをみると一周回って感心したように笑い出す。


「久しぶりー、波折。もうちょっと遅く来たほうがよかったかな?」

「……いえ」


 男は波折に近づいていって、にっこりと微笑みかける。するりと波折の頬をなで上げれば、波折はぴくん、と震えて艶やかなため息を吐いた。


「波折はすっごい淫乱でね、エッチは大好きなんだけどねー……君とのエッチは嫌だったみたいだよ?」

「……え?」


 男は波折に頬ずりをしながら、篠崎に言い放った。波折は男に心酔したようにうっとりとしていて、もはや篠崎のことは目に入っていない様子。まるで自分のことなんて興味ないといった波折のその姿に、篠崎はショックを受け震えだす。


「残念。もしも波折に好かれていたら結末は変わったかもしれない。あー、いや、それはないかも。エッチが上手でも波折は莫迦のことは好きにならないから」

「え、あの、さっきから、何を……」

「教えてあげようか、波折が俺に君のことをなんて言っていたか。『莫迦に生かす価値はない』だ。どんまーい! おまえは今日ここで死ね」


 その瞬間、篠崎の身体に強烈な痛みがはしる。何らかの魔術がかけられたらしい。全身が焼かれるようにびりびりと痛み、まともに動けなくなってしまった。喉にもそれは効いているのか、声を出すこともできない。篠崎はベッドに転がり、ばたばたと悶えることしかできなかった。


「君は……どうやら俺と波折がヤってるところを盗撮したみたいじゃないか。それ、バラされたりしたら困るんだよね。黙っていろって言っても、君みたいな莫迦はいつぽろっと言っちゃうか分からないだろ。そういうことで、死んでもらいます」

「……ッ」


 男の目が細められる。

 篠崎はもう、パニック状態に陥っていた。当たり前のように魔術を使ってくる男。そして自分が死の淵に立たされているという事実。自分の命は、今男の手に握られている。男がふと手をひねれば、自分は殺されてしまう。いつのまにか失禁してしまって、それでもそんなことを気にしている場合でもなくて。逃げようとなんとか体を起こせば、更に強い痛みが襲い来る。


「逃げるなって。まあ、ちょっと見ていってよ」

「……?」

「最期にさ、いいもの見せてあげる」


 男はにこっと笑って、床に転がっていた鞭を手にとった。それでつうっと波折の体をなで上げれば、波折は「あっ……」と甘い声をあげて身動ぐ。


「ちゃんとした鞭の使い方教えてあげるよ。波折がとろっとろに感じているところ、ナマでみせてあげる」


 男が波折の服を脱がせてゆく。ネクタイを解き、カーディガンをめくりあげてシャツのボタンを外す。スラックスと下着もおろして下は何も纏わない状態に。最後にカーディガンを波折に咥えているように命じて、胸を露出させる。


「んっ……」

「おっと……脱がせただけで感じてるのかな。乳首こんなに勃たせて」

「んっ……んんっ……」


 男が鞭の柄で波折の乳首とぐりぐりと刺激した。波折はくねくねと身をよじって逃げようとするが、手錠で拘束されているため逃げることもできない。脚をもじもじとさせて、必死に快楽に耐えている。


「久々だもんね、俺とするの。そんなに期待に満ちた目をして……はしたない子だな」

「んんっ……!」


 パァン、と波折を鞭で叩く音が響く。波折はぎゅっと目を閉じて、ふるふると震えてそれを受け入れた。男は一度叩くと、もう叩こうとはしない。目を開けて「もうしないの?」と訴えてくる波折をみて、はっと嗤う。


「いじめて欲しい?」

「ん……! ん……!」


 こくこく、波折が頷く。顔を真っ赤にして、涙目で。

 ――あんな波折は、自分はみたことがない。篠崎は男にいじめられ悦んでいる波折をみて、唖然としていた。いつも、どこか顔を青くして辛そうに瞼を伏せる……そんな表情をしていたのに。今の波折はまるで違う。もっとして、いっぱい虐めて、そう男に懇願するように頬を紅潮させきらきらとした瞳で男を見つめているのだ。いやらしくて、可愛らしくて。もっともっと酷いことをしたくなるような、そんな表情を今の波折は浮かべている。

 もしかして、自分としているときの波折は、感じていなかった……? そんなことを、今更のように篠崎は感じ始めていた。


「んんっ……!」


 ぺし、と男が鞭で波折の身体を叩く。あまり強くは叩いていない。弱く、ぺち、ぺち、と音がする程度に。それでも波折は目をうるうるとさせて、カーディガンを咥えた口から上ずった声をあげている。徐々に勃ちはじめたペニスがふる、ふる、と震えていて、その先から雫がこぼれ出す。


「なに勝手に勃たせてんの? 淫乱波折」

「んーっ……!」


 男が足で波折のペニスをぐりぐりと刺激した。波折は首をふるふると振って、ぼろぼろと涙をこぼす。それでもその顔は気持ちよさそうにとろけていて。腰をくねくね、びくびくとさせてそのオシオキに感じていた。


「んっ……んんっ……」


 男は足で波折の股間を刺激しながら、乳首のあたりを鞭でぺちんぺちんと叩いている。そうしていれば波折はあっさりと限界がやってきたのか、腰をがくがくと震わせ始めた。男が蔑むような顔をして波折の股間から足を離せば……ぴゅく、と波折のペニスから白濁が飛び出してしまう。


「あ〜……勝手にだしちゃって……オシオキまだ足りない?」

「んー……」

「いいよ、もうしゃべっても」


 ふふ、と男が笑う。波折は許可を受けて口からカーディガンをぽろりと落とした。ずっと声を抑えようとカーディガンを噛んでいたため、カーディガンには唾液がついてしまっている。開放された唇も、てらてらと光っていた。


「ご、主人公さま……」

「波折? そこの篠崎くんと俺のオシオキ、どっちが好き?」

「ご主人様のオシオキです……ご主人様の……」

「あっはっは、ほら、次どうして欲しい?」

「おしり……おしり叩いてください……」

「いいよ〜、エッチだね、波折は」


 篠崎は悔しそうに顔を歪めながら、波折が陵辱される様を見ていた。しかし、何もすることができない。男に背後に立たれて期待に満ち溢れた顔をする波折を、ただ見つめるだけ。男が思い切り鞭を波折の臀部に振り落とすと、波折はのけぞって嬌声をあげる。


「あぁんっ……!」

「もっと声だせ、波折」

「はいっ……! あぁっ……! いいっ……! 気持ちいいっ……! ご主人さまぁっ……!」


 パァン! パァン! と激しい音が響き渡る。波折は頬を赤らめて涎を垂らしながら歓んでいた。はあはあと荒く息を吐き、嬉しそうに声をあげる。叩かれる度に震えるペニスからはだらだらとはしたない液体がこぼれている。


「ほら、波折。中にぶちこむからな」

「はいっ……! 挿れてっ……! ご主人様! おっきいの挿れてぇ!」

「よし、ほら悦べ!」

「んぁっ……!?」


 男が波折の孔に突っ込んだのは、鞭の柄だった。ぐりぐりと波折のお尻に押し込んで、ぐぐぐっとなかに挿れていく。男の熱いモノを挿れられるのだとばかり思っていた波折は驚いていたが……しばらくズブズブと抜き差しされているうちに、その顔がとろけていった。


「あぁん……ご主人さまぁ……ちがう、ご主人さまのおちんぽ、ほしいです……あんっ……」

「気持ちよさそうじゃないか。こんなに美味しそうに呑み込んで」

「うぅっ……きもちいい……あぁっ……やぁんっ……でもっ……あっ……!」


 ぐりぐりぐりぐりと男が鞭の柄で波折のなかを掻き回す。波折はいやいやと言いながらも蕩けきった声をだしていた。波折の身体がビクンビクンと震えるものだから、波折を繋ぐ鎖がガシャガシャと喧しい。ペニスからだらだらと溢れる蜜が、波折の太ももを濡らしていく。


「はぁっ……あぁっ……あぁあっ……!」

「興奮してるんだね、波折。いやらしい子だ」

「ごしゅ、じんさま……あふっ……もっといじめてっ……あっ……」


 がくんがくんと波折の腰が大きく揺れる。鞭の柄でなかをいじめられて、中イキしたらしい。のけぞって、甲高い声を出してうっとりと目を閉じていた。

 ズボッと男が波折のなかから鞭の柄を引き抜く。波折は名残惜しげな甘い声を漏らして、ちらりと男のほうを振り返った。その目が、ゆらゆらと揺れている。お尻の穴をほぐしおえたってことは、そうでしょう? そんな眼差しで男をじっと見つめている。「おちんぽください」と視線でおねだりしている。


「波折? どうした、そんなに俺のことを見つめて」

「ごしゅじんさま……つぎ……はやく、いれてください……」

「ん? 何をかな?」

「おちんぽ……おっきいおちんぽください……」

「そんなに欲しい?」

「欲しいっ……欲しいです……! 奥、ひくひくしてるんです……ごしゅじんさまっ……! はやく、おちんぽでおく掻き回して……!」


 はあ、はあ、と興奮しながら波折が男に訴えていた。そんな波折を、篠崎は信じられないといった目でみている。こんな淫語、自分には言ってくれなかったのに、と。あんなに発情仕切った波折をみるのも初めてだった。隠しカメラで撮った波折の映像は不鮮明でわかりづらかったが、ナマでみると、その卑猥さが凄まじい。全身の肌が紅く染まり、艶を増し、雄を誘い込むような雰囲気を漂わせ、完全なるメスとなる。篠崎は自分の体を蝕む痛みをも忘れて、そんな波折に見入っていた。


「そっか〜、おちんぽが欲しいんだね、波折」

「はいっ……おちんぽください……!」

「よーし、わかったわかった、おちんぽあげる」

「うれしいっ……ごしゅじんさまぁ、おちんぽはやくぶちこんでぇっ……!」


 く、と男が笑う。視線をちらりと床に落とし、そして落ちていた手錠の鍵を拾った。波折の手を手錠から解放してやって、がくんと崩れ落ちた波折を抱きかかえる。


「あふっ……」

「よーし、波折におちんぽあげるからなー」


 男は波折を抱きかかえたまま、篠崎の転がるベッドまでやってきた。篠崎がわけがわからない、と言った顔をしていれば……男は言う。


「ほら、波折。そこのおちんぽぶちこんであげる」

「えっ……?」

「みえるだろう? おまえの痴態をみてギンギンにかたくなった、おちんぽ。調度良く落ちているからさ、それ波折にぶちこんであげるね」


 篠崎も波折も、男の言葉に驚いたようだ。特に波折はぎょっとした顔をして、男を見つめている。


「ご、ごしゅじんさま……? おれ……ごしゅじんさまの、」

「波折ー、俺のためだと思って。そこの汚物を使って俺を愉しませてよ」

「……ごしゅじんさま、たのしいんですか?」

「ああ……死にゆく無様な人間が最後に大好きな人と繋がれる……そんな瞬間、どんな顔をするのかみてみたい。波折、協力してくれるよね?」


 何を言っているんだこの男は――篠崎は男を信じられないといった目で見上げた。しかし波折は……男の言葉を聞いて、ぱちくりと瞬いたあと、ふ、と笑ったのだ。


「……わかりました、ごしゅじんさま」

「……なっ、」


 え、と篠崎は息を呑む。どう考えても男の言っていることは、おかしい。それなのに波折はあっさりと頷く。そもそも篠崎を殺す体で話を進めているというのに、波折はそれに驚きのひとつも見せていない。……おかしいのは、男だけじゃない。波折もだ。

――この二人は、狂っている。


「篠崎くん、」

「ひっ……」


 波折が篠崎のスラックスのファスナーを下ろす。男は後ろから波折の膝を抱え開脚させ、その体勢を保たせてやっている。


「俺ね、篠崎くんのこと……別に嫌いじゃなかったよ。セックスも下手で、俺の好きな人たちから俺を引き離して……それでも、大切な友人であることには変わりなかった。でもね、ごめんね。ご主人様のことを知っちゃったら、殺さなきゃ。君莫迦だからいつか俺達の邪魔になるでしょ?」


 波折の指先が、篠崎のペニスに触れる。こんなにも恐ろしい状況だというのに、情けなくも篠崎のそれは勃っていた。男が波折を持ち上げて、秘部にペニスの先をあて……静かに下ろしてゆく。


「あっ……んっ、……悲しいなあ……俺……篠崎くんのこと、殺したくなかったのに……んんっ……」

「なに……なにを、言って……うっ……」


 ずぶ、と奥までペニスが入り込む。そうすると波折は満足気にため息を付いた。


「んっ……」


 波折が男に支えられながら、腰を振る。うっとりとした目をしながら。


「あっ……はぁっ……」


 そんな顔をして腰を振る波折を、篠崎は知らない。一度騎乗位を強要したことはあったが、こんなに気持ちよさそうな顔で腰を振ったりはしなかった。

 今、自分は絶体絶命にあるだろう。それでも篠崎は波折の蕩けきった表情に興奮してしまっていた。おかしい、自分もおかしい。この状況はあまりにも狂っていて、頭がイカれそうになる。


「みてごらん、波折……篠崎くん、興奮しているよ」

「あっ……あっ……あぁんっ……」

「さすがだね、波折……みんなみんな、おまえの虜だ。おまえはすべての人を狂わせる」


 ぐちゅぐちゅといやらしい音が響く。男の言っていることの意味がわからない。快楽と混乱、頭のなかを異常が満たしてゆく。完全に思考は麻痺して、ただ興奮のままに篠崎は腰を振り出した。自分の上に乗っかる、美しい人。可愛い人。もうわけがわからない。ただただ腰を突き上げて、よがらせて、そのいやらしい姿を見たい。

 壊れた思考のなか、動くのは本能だけだった。


「あんっ! あんっ! やぁっ……すごいっ……! はぁっ……きもちいいっ……!」

「冬廣会長……! 冬廣会長!」


 突いて、突いて、突いて。無我夢中で腰を振って、そして篠崎は波折のなかに精を放つ。


「んっ……」


 篠崎になかに出されるのを感じると、波折はぎゅっと目を閉じてぶるぶると震えた。男はそんな波折をみつめ、ふっと微笑む。


「はい、波折。最期はおまえの手で」

「……?」


 男が拳銃にサイレンサーを取り付けると、それを波折に手渡した。波折はしばらく拳銃を眺めていたが、きょとんと男に向き直る。


「これを、どうするんですか?」

「それで篠崎くん、殺して」

「えっ? 俺が? ご主人様が殺すって言ってたじゃないですか」

「波折が殺したほうが面白いでしょ」


 波折は「殺せ」と言われて少しばかり驚いたような顔をしていた。しかし……しばらくすると、ふと無表情になってしまう。


「……ごめんね。篠崎くん。君は死ななきゃいけない」

「……えっ、ちょっと……本気で殺すつもりですか……!」

「俺が冗談言うと思う?」


 ぐちゅ、とつながったままのそこが音をたてる。はあ、と波折は艶かしい吐息を吐いて、その快楽のことだけを考えているかのように笑う。

 ――あ、もうだめだ。

 篠崎は思った。この波折のいう人物は……おかしい。普通の感情が欠落している。「ご主人様」に言われたことには、なにがなんでも従う。自分は、殺される。


「本当に、残念。君とは友人でいたかったんだけど……君が少しばかり莫迦な行動をしたために」


 波折がサイレンサーを篠崎の口に突っ込む。そして、安全装置を外した。

 最後に、篠崎が見たのは――恐ろしく冷たい、波折の瞳。


「じゃあね、篠崎くん。短い間だったけど、友達でいてくれてありがとう」





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