おわりとはじまりが訪れる1

「これでほんとに学園祭終わりかー……なんか夢から覚めるみたい」


 忙しかったようで楽しかった学園祭も、これで終わりだ。閉会式を終えたあとは、今日はもう帰るだけ。片付けは別日にやることになる。


「こんど生徒会で打ち上げやろう」

「お、いいねー!」


 帰る準備をしながら月守の提案にみんなでのる。打ち上げって響きすらちょっと寂しいのは、来年からはこのメンバーで生徒会として学園祭に参加できないからだろうか。思えば、このメンバーで生徒会でいられるのは今年だけだ。


「神藤くん。生徒会になりたてなのに、学園祭お疲れ様!」

「は、はい……!」


 可織にそんなことを言われて、思わず沙良は涙ぐんでしまった。そんな様子をみた鑓水がけたけたと笑っている。

 そんなこんなでもう本当の終わり。帰る準備も終えて、みんなで校門へ向かっていった。


「あれ、波折先輩……今日は自分のうちに?」

「あー……」


 昨日までは沙良の家に来ていた波折、今日からはもうこないのかな、とちょっぴり残念に思いながら沙良は小声で尋ねてみる。そうすると波折は視線を漂わせながら、困ったように言った。


「……俺のうちではないかな」

「……? 誰かのうちに?」

「えーっと、……うん。学園祭終わったらきてねって言われてて」


 なにやらはっきりとしない言い方に沙良は首をかしげていたが、それを聞いていた鑓水の表情は違っていた。神妙な表情をして、波折の手首を軽く掴み、言う。


「おい、波折……」

「あっ、でも、慧太」


 鑓水は察したのだった。これから波折が誰の家に行くのかを。また、あの家に。何もできない自分が嫌だ……そう思っていれば……波折が困ったように笑った。


「そんな怖い顔しないでよ」

「でも……」

「……大丈夫、日付が変わる前にはうちに帰るから」

「え?」
「起きててくれたら嬉しいなぁ」


 ……日付が変わる前にはうちに帰る?だって、あの度の過ぎた束縛男がそんなことを許すか?どういうことだ?

 鑓水が固まっていると、波折がみんなから離れてゆく。帰る方向がここで変わるらしい。


「じゃあね、また」

「おい……波折!」


 波折は生徒会のメンバーみんなに別れを告げて去って行ってしまった。事情の呑み込めない沙良は、複雑な顔をしている鑓水を、不思議そうに眺める。そして鑓水は、なんだか妙に嫌な予感にかられながら……やっぱり何もできず、それからは黙り込んでみんなの後ろを歩き出した。

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