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 少しいじわるなことを言ってやると、南波の勃起したペニスからとろりと先走りの雫が零れてきた。今ので、脳がイッたのかもしれない。表情がぼんやりとしていて、俺をとろんとした目で見つめながら顔を紅潮させている。

 南波は俺の肩に手をかけると、ゆっくりと、体を上下させ始めた。俺が手に持ったバイブで、どうにか潮吹きしようと頑張っているらしい。ゆさ、ゆさ、と体を振ってバイブをピストンさせ、いやらしい声をひっきりなしにあげている。じゅっぽじゅっぽ、と卑猥な音が響いて、俺も興奮してしまう。


「あっ、あっ、あっ、あっ……」

「ほら、がんばれ」

「いせ、くんっ……あ、……あっ……いせくんっ……いせくんっ……」

「ん? 俺に抱かれてるときのこと想像してるの?」

「あっ……、してる、……いせくんが、っ……潮吹き、させてくれたときの、ことっ……思い出して、……あっ……、いせくんっ……もっと……」


 南波は目を閉じて、快楽に耽り始めた。目の前に本物がいるのに、と思ったが、想像の俺に抱かれている南波がやたらに色っぽくて、目が離せない。色んな事を思い出しているのか、自分の口に指をいれて舌を絡めたり、乳首をいじったりし始めて、なんだかすごいものを見せられているような気分になる。たしかに南波を突いている時にキスをしたり乳首を弄ったりしているのは俺だが、南波が自分で弄っているという光景は正直かなりクる。


「いせくん、……好き、……あ、……いせくん、……いせく、……ん……――ッ」


 南波は何度も何度も俺の名前を呼んで、激しく腰を振って――ようやく、ぷし、と潮吹きをした。切なげに俺の名前を呼びながら、腰をガクガクと震わせ、びしょびしょに股間を濡らしていく。


「あ、……、は、……」


 南波がふらふらになって、俺にしなだれかかってきた。俺は南波のアナルからバイブを抜いて、ぎゅっと南波を抱きしめてやる。頭を撫でてやると、南波が泣きながら、吐息混じりの声で俺に訴えてきた。


「ほめて、……いせくん、……ほめて、……ほめて……」

「ああ、……いい子、南波……最高に可愛かった。南波、可愛いよ、南波……」

「もっと……いせくん……もっと……」

「南波、……ほんと、可愛い……」


 俺ももう限界で、抑えきれずに南波のことを押し倒す。南波はされるがままに脚を開き、そのまま脚で俺の腰を抱き込むと、ぎゅっと俺を抱きしめてすりすりと俺の顔に頬ずりをしてきた。本当に、南波は可愛い子だ。


「南波はいい子だから、ご褒美あげる」


 ちょっとオヤジくさいかな、と思いつつそんなことを言って、キャビネットからコンドームを取り出す。しかし、封を切ろうとしたところで南波が俺の手を掴んできた。


「ご褒美、くれるんじゃないの……?」

「うん、だからこれから、」


「中で、出してくれるんじゃないの……?」

「――……」


 衝撃のあまり、コンドームをぽとりと落とす。中出しなんて、記念日とかクリスマスとか、とにかくそういうとき以外ほとんどやらない。特にルールを決めていたわけではないが、南波の負担になるから、そんなに頻繁にはやらないようにしていたのだ。


「……いいよ、南波の中、いっぱいにしてやるよ」


 ――南波、中出しされるの好きだったのか。

 カーン、と頭の中で謎の鐘が響いた感覚に、俺の中の理性が完全に切れてしまった。南波の太ももをぐっと掴んで、そして一気にペニスを南波のなかへ突き立てる。パンッ、と勢いよく音がして、その瞬間に、また南波が潮を吹いた。


「あぁっ――……!」

「南波――……」


 南波を抱きしめて、腰を振る。

 可愛い。南波が、本当に可愛い。俺に縋り付く手も、ねだるように俺の腰に絡みつく脚も、甘えるような声も、何もかもが可愛い。愛おしすぎて心臓が痛くなってきて、そのせいで余計に理性が効かなくなる。


「南波、……南波……ッ」


 いつだったか――自分のことを鉛のようだと思ったことがある。人を本気で求めることを知らずに、自分に心があるのかさえ疑うような、そんな虚しさの中で生きていたことがある。けれど、そんな過去がまるで嘘のようだ。こんなにも、燃えるような激しい劣情を抱いて、理性すらも壊してしまうほどに欲情して、無我夢中で南波を抱いている。

 俺は、これが欲しかった。生きている実感が欲しかった。

 南波が、こんなにも可愛い。こんなにもいやらしくて、色っぽくて、愛らしい。可愛すぎてどうにかなりそうなんて、そんな感覚をあの頃の俺は知らないだろう。


「いせ、くんっ……もっと、言って……もっと、もっと……僕のこと、……かわいいって……言って……」

「――……っ」


 ――あれ、今の声に出ていたのか。

 我を忘れて腰を振っていたせいで、自分が何を言っていたのかわからない。どこまで吐露してしまったのか、恥ずかしいことまで言っていないだろうかと少し不安になったが、南波が幸せそうに蕩けた顔をしているので、どうでもよくなった。


「南波……愛してるよ」

「いせ、くんっ……僕も、……僕も、愛、……して、る……あっ……あ、……あ」


 だいすき、南波が消え入りそうに囁いたその声で、俺は達した。全部南波のなかに出して、きつくその体を抱きしめる。


「あ……、しあわせ、……伊勢、……くん……、……なか……じわじわして、……あったかくなって……伊勢くんのが、……いっぱいで……しあわせ……」


 南波が呆けきった声で呟く。どんな顔でそんないやらしい言葉を言っているのだろうとちらりと南波の顔を見てみると、南波は色っぽく頬を紅潮させながらも、ただただ純情に幸せそうな顔をして目を閉じていた。


「……南波」

「ん……」

「キスしていい?」

「……? わざわざ、聞かなくても……」

「うん……そうだね、愛おしかったから、つい」


 汗で濡れた南波の前髪をかきあげてやる。

 高校生の時、まだ子供っぽい顔をしていた南波に恋をしていた。

 今、大人になって綺麗になった南波に、恋をしている。

 これから先、もっと大人になったきみは、何度俺を恋に堕とすのだろう。






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