甘い恋をカラメリゼ | ナノ
 vingt-trois

 ぼんやり、ふわふわ。きらきらとした太陽の光。心地よい空気に包まれて、俺は目を覚ます。


「ん……」


 あれ、俺、いつの間にか寝ちゃってたのか。全身の気怠さを感じながら……俺は、自分を包み込む暖かい人に、腕を回した。


「……ちはやさん……」


 お互い、裸だった。昨日の記憶は曖昧だけれど、たぶん俺はどろどろに汚れていたから、智駿さんが洗ってくれたのかもしれない。優しい……そう思って胸にすり寄れば、とくとくと心臓の音が聞こえてくる。


「ちはやさん……すき……」

「――僕もだよ」

「へっ」


 独り言のように呟いた言葉に、返事が返ってきた。びっくりして顔をあげたら智駿さんが俺を見下ろしている。


「ちはやさん……」

「おはよう、梓乃くん」

「おはようございます……」


 昨日、たくさんいやらしいところを見せてしまった。やっぱりそれが恥ずかしくて、智駿さんと目を合わせると顔が熱くなる。


「気持ち良さそうに寝てたね、梓乃くん。昨日あんなにがんばったから、しょうがないか」

「あっ……」


 額に、まぶたに、鼻にキスを落とされる。砂糖菓子のように甘ったる声で俺に愛を囁いて、くしゃくしゃと俺の頭を撫でながら。

 溺愛されてる……そう思うと本当に嬉しい。でも、智駿さんの言葉に、なにか引っかかりを感じる。俺、たしかに昨日めちゃくちゃにされて頑張ったと言えば頑張ったのかもしれないけれど……


「ち、はやさん……! 昨日、最後までやってない……!」


 智駿さんとひとつになるっていう目標、達成していない。それに気付くと急に物足りなくなって、俺は智駿さんにすりすりと頬ずりをして甘えてみる。


「あ、あの……ちはやさん……」

「ん?」

「えっと……きのうも、いっぱい……その、エッチなことしてくれたけど……あの、」


 恥ずかしい。かあーっと顔が熱くなる。智駿さんは俺が何を言いたいのか気付いたようだけれど、にこにことしているだけ。軽い羞恥プレイをされている気分だ。


「俺の……挿れるところ……その、もう、智駿さんの挿れられるから、」

「うん」

「あの……いまから……だいて、ください……」


 今、女の子の気持ちがわかったかもしれない。挿れられる側から「エッチしよう」っていうのって、ものすごく恥ずかしい。俺はもう恥ずかしくて恥ずかしくて、智駿さんの視線から逃げるように布団に潜り込んだ。


「うーん……今日はやめておいたほうがいいと思う」

「えっ……なんで……」

「だって……今の時間……」

「……!?」


 しょぼん、としたけれど智駿さんに言われて俺はバッと布団から顔を出した。そして時計をみてみると……


「……2時!? なんでこんな時間まで俺、寝てる……」

「昨日頑張ったからだね」

「……っ」


 ただいまの時刻、午後2時。バイトが、午後5時から。エッチ自体はできないことはないと思うけれど……俺のあの敏感っぷりを思えば今からエッチをするのは難しいと判断できる。今から智駿さんに抱かれたりなんかしたら……智駿さんとひとつになったりしたら、感じに感じてどろどろになってイキまくって、とてもじゃないけどバイトなんてできるとは思えない。


「……じゃあ……こんど……」

「うん。今度こそエッチしようか」

「はい……」


 残念でならないけれど、仕方ない。俺がわかりやすくがっかりしていたからか、智駿さんがクスクスと笑った。


「梓乃くん、エッチ好き?」

「えっ……えっと……智駿さんとするのは、……好き、です」

「僕も、梓乃くんとそういうことするの好きだよ。可愛いから」

「……あの、男の俺が、えーっと、あんまり喘いだりするの……変、じゃないですか?」

「んー? もっと出してくれてもいいくらい」


 するり、智駿さんの手が俺の髪を撫でる。俺の顔をみつめる智駿さんの表情は、爽やか。いかにもパティシエって感じの柔らかくて甘い微笑みを浮かべているけれど……その言葉は、ちょっぴりサディスティック。


「エッチな梓乃くんのことが大好きだから、もっと可愛く乱れて欲しいな」

「そ、んな……できません……」

「僕がそういう風にしていくから」

「そういう風に、って……」

「梓乃くんの身体、もっと感じやすいエッチな身体にしてあげる」


 ずく、と下腹部が熱くなってきた。今の言葉だけで、感じてしまった。

 智駿さんにすり寄って抱きしめられて、すっぽりとその腕に収まってみる。

 これから、いっぱい可愛がってもらえる。

 まだ、ひとつにもなれていないのにこんなにエッチな身体にされちゃって。ひとつになって智駿さんを身体が覚えて、さらに俺、エッチになっていくんだ。嬉しかった。嬉しくて嬉しくて、にやけてしまう。

 ごそごそとシーツの擦れる音が心地よい。昼間にこんな風に時間を潰していくのは贅沢な気がしたけれど、ものすごく、幸せだった。



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