▼ sept(4)
がくっ、と大きく腰が震える。イってしまったせいで、なかがきゅうきゅうと締まって、白柳さんのものを奥へ奥へと呑み込もうとする。
布越しに、白柳さんの熱いものの形を感じた。挿入れられている、そう実感してもっと感じてしまった。自分の腹がひくんひくんと波打っているのがいやでも視界に入る。
「……だめなのか?」
「……、……は、……ぁ、っ……は、あ……」
白柳さんはナカに挿入れたまま、ぐ、ぐ、と腰を緩く振る。そうすれば前立腺が刺激されて、びんびんになった俺のものがぴくぴくと疼いてしまう。
白柳さんは少し残念そうな顔をしていた。俺が、何も答えられないでいるから。
白柳さんのことは好きだし、彼が俺を好いてくれているのもわかっている。俺が彼だけのものになれば、白柳さんも俺も幸せになれるのもわかっている。けれど、俺はすぐにうなずけない。
たぶん、白柳さんは俺がこうして困っていることに、とっくに気付いているのだろう。俺が決して、白柳さんのことが嫌いになったわけでもなく、なりふり構わず色んな人とセックスしていたいなんてこともなく、ただただ自分の中に渦巻いている不安に怯えているだけだと――それも、きっと気付いている。
気付いているから、こんなことを問いかけながらもこうして優しい。体には少し意地悪をしてくるが、口調はいつものように、頭を撫でるような優しい口調だった。
「……悪ぃな、俺ちょっと焦ってるみたいだ」
「白柳さ、……ぁんっ……!」
なんでかな、なんで普通の人みたいに一人の人を愛せないんだろう俺は――
そんなことを考えていると、ずるんっと熱いものが俺のなかを擦り上げる。いつのまにか、下着はずらされていて……隙間から、ナマのモノが挿入れられていた。
やっと、はいってきた……それがわかった瞬間に、ぷしゅ……と俺のものから噴水のように潮がふきあがる。
体の奥がびくびくと細かく震えている。白柳さんはそのまま奥をぐぐっと圧迫するように俺に覆い被さって、抱きしめてきた。
「白柳さん、……」
彼は、俺に呆れていないだろうか。こんな俺をこうも好きでいてくれるのに、俺がいつまでもフラフラとしていることに、憤っていないだろうか。
少し怖くなって、彼の背を掻き抱く。もしも見放されたら、これが最後のセックスになってしまうかも、なんて思って、怖くなって、強く彼を抱きしめた。
「ねえ、白柳さん……」
「ん?」
「……とびきり……優しく、突いてくれませんか」
白柳さんは俺を見つめて、眉をしかめる。
優しくして、なんて、白柳さんにしか頼めないから、決死の覚悟で甘えてみたけれど、それを彼はどう思ったのだろう。少し罪悪感を覚えて、白柳さんから顔を逸らす。
「……はあ、」
「……、」
ため息をつかれた、ような気がする。
ぎくりとした。ため息をつかれて当然の態度を俺はとっているが、実際にされてしまったかもしれない――そう思うとたまらなく怖くなった。
「あ、あの、……白柳さ、……あっ……」
ゆる、と白柳さんが腰を動かしてきた。ぬるぬるとしたぬめりを粘膜にこすりつけるようにして、白柳さんは俺のナカをゆっくりと刺激してくる。
ちゅぽ、ちゅぽ、とゆるやかな水音が響いた。俺がねだったとおり、白柳さんは優しく、優しく俺を突いてくる。
ため息をついたと思ったのは、勘違いだったのだろうか。白柳さんは俺のことをどう思っているのだろう。こんなに優しくしてくれて、今何を考えているのだろう。
「んっ……、ん、……あっ……、ぁんっ……」
白柳さんのものが俺のいいところを擦り上げて、そのカタチを感じる度に、白柳さんのものが萎えていないことに安心した。俺に呆れて、俺のことが嫌いになって、それで萎えてしまったら……そう考えると哀しくて堪らなかった。けれど、白柳さんのものは熱いままで、優しく、でも絶妙に俺のことを感じさせてくれて、それだけで安心する。
こんなことを考えている時点で、たぶん俺はおかしいのだ。白柳さんに嫌われたくないとこんなに思うくらいに好きならば、普通の人のように白柳さんのことを好きになればいいだけなのに。こんな、俺のおかしいところを白柳さんなら許してくれると――いつの間に錯覚していたのだろうか。
「あっ……まッ……て……そこ、だめ……イっちゃう……」
いいところを責められて、イきそうになった。でもイッてしまったら終わる……そう思うとイきたくなくて、快楽から逃げようと身体を捩る。
「……逃げるなよ、セックスしてるときは俺のものだろ」
「へっ……ーーあ、……ぁひっ……あ、……あっ!」
しかし、白柳さんは俺の腰を両手で掴むと、そのまま連続して俺の一番感じるところを突いてきた。乱暴ではなく、優しくしてはくれているが……ガッチリと腰を掴まれて逃げられなくて、その状態でズンズンと重いピストンで責められて――狂いそうになる。
白柳さんの目から、彼が何を思っているのかが見えてこない。どこか冷めたような目をしているのに、俺の奥を打ち付けるその熱は、彼自身を俺の体に刻みつけんとばかりに深くて重苦しい。
俺に呆れた? それともまだ好きでいてくれる?
どろどろに注ぎ込まれる泥のような劣情が、怖いけれど気持ちいい。
「ぁんっ……あっ……! イッちゃう、……イッちゃ、……おねがい、そこっ……やめてっ……もう、あ、……あ、あッ……アッ……ああぁあっ!!」
何度も何度も一番感じるところを突き上げられて、俺はあっさりと昇りつめてしまった。まだ白柳さんと繋がっていたかったのにイッてしまったことがショックで、熱が引いていくと同時にじわじわと喪失感が浮かび上がってくる。
「う、……し、白柳さん、……」
寂しくて、縋るように彼を見上げてしまった。白柳さんはやっぱり少し影のかかったような瞳で俺を見下ろしていて、じわ、と胸が腐食していくような切なさに見舞われたが――次の瞬間、ズンッ、と勢いよく突き上げられて、俺はたまらず声をあげてしまう。
「アッ――……」
「……もう少し」
「白柳さん、……? アッ、……あ、あ、あっ……! ま、待って、……アッ、ん、……待っ、俺、もうイッて……あ、あ、あ、」
白柳さんは、セックスを終わらせるつもりはないようだった。イッてしまって敏感になっている俺の体を何度も何度も突いてきて……俺は次第に、意識が朦朧としてきて、何も考えられなくなってしまった。
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