「いえ……」



　二人で駅まで歩いて行くと、キャッチの人が何人も声をかけてくる。凛は彼らに一切目を向けることもなく、下を向いて足早に歩いていた。これは僕と話すことも面倒だと思っていそうだ。



「……そんなに、私、つまらなそうにしていましたか？」

「うーん、かなり」

「あ……そうですか、すみません……なんだか新しい人と出逢おうって気持ちになれなくて」

「……彼氏と別れたばかり？」

「……ええ、まあ……そんな感じです」



　ああ、なるほど。彼女の雰囲気の暗さの理由を理解する。たぶん彼女は彼氏と別れたばかりの彼女に気を利かせて合コンに誘ったけれど、当の本人はまだ心の整理がついていなかった。そんなところだろう。

　でも、いつまでもこんなにどんよりとしているのかと思うと、他人事ながら心配になる。女の子の気持ちはそこまでわからないけれど、はやく立ち直ってくれたらな、ってそう思った。



「……よければ、連絡先交換しませんか？」

「……いいですよ」



　僕が彼女と交流をもったきっかけは、そんなお節介のような感情からだった。この日から、僕は何度か彼女と連絡をとって、時々は会ったりしていた。


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