次富

※次♀富 新婚パロ

夜が覆う帰り道に漏れる鼻歌。明りが灯る家、ただいまに返ってくるおかえり、俺の為に作られた晩御飯、それと俺の帰りにあわせてはられた湯船。
少し熱めの湯船からゆらゆらと湯気が立ち込めていて、俺を呼ぶ。一通りに髪に体に洗って、ざぶんと音を立てて顎まで湯が迫るくらいに一気につかるとじわじわと体に染みて湯だってくるのがわかって、自然と瞼が重くなる。

おかえり。

当初その言葉さえ、なにか緊張のような、そう何かねだり損ねたような、ベッドで向かい合う初夜にも似たたどたどしさで言われていたもの。だけど繰り返すうちにそれはあっという間に日常化してしまう。
ぷかぷかと浮かぶ表情はいつもと変わらない、だけど同じように俺の先端まで温めてくれる。今日も変わらず俺の妻は可愛いなどと呆けているだけではダメだけれど、今はゆっくり浸ったって罰が当たるはずもない。そんな可愛い妻もたまに風呂でもいっしょに入れればと毎回のように思うのだけれど、素直に誘っても、それこそお願いしても同じ答えが返ってきてしまう。さてにどうして、ベッドでは裸で抱き合うではないかと零せば、もちろん鉄拳が飛んできた。

「真っ赤になる顔も可愛いんだよなー」

髪をかけあげると反響する風呂場に落とされたアイディア。水面に広がってすぐさま行動に移す。
自動湯沸かし器なるものでキッチンへとつながった内線のボタンを押すと呼び音の少し後に電子音で聞こえたのはもちろん可愛い妻の声。

「シャンプーないんだけど、予備どこにあんの?」
「え、そうだっけ。ちょっとまって、もってく」
「んーよろしく」

しばらくしてからすりガラス越しに揺れる妻の姿とシャンプーの予備を探す物音。もう少しもう少し、と踊る心を湯船に沈めてその時を待つ。ドア越しにシャンプーかして、とそれに手を伸ばすだけの隙間があいて、すらりと腕が伸びる。

「届かないって」
「じゃ、入るよ」

少しだけ曇る室内に遠慮しながら入ってくる。腕をまくりあげて、裸足のつま先で濡れた床を歩き始める。丁度シャンプーに腕が伸びようとした瞬間にその腕を捕まえて引っ張るとバランスの悪い身体は、驚きと共に湯船へとそれは上手に転げ落ちた。

「な、にすんだよ!」
「びしょびしょだねー」
「そんなの当たり前っ!とりあえず離せ!」
「さく、風呂入ってないんでしょ。丁度いいじゃん」

濡れて張り付いた服は、綺麗に体の曲線をたどり、下に纏った下着までも透かしていた。首から上は跳ねかえって散ったくらいしか濡れてはいないが、それでも充分にこちらを発情させるくらいに色を含んでいる。

「ばぁっ」

首元を引き寄せて痕が残るくらいにしつこく吸いつけば、俺の肩を握る手が震える。隠そうと必死になる姿が一層俺を呼び寄せていることなど頭の隅にもないのだろうけれど、ちらりと零してしまうその仕草くらいは気がついてもいいのに、と微笑が漏れる。耳たぶから形をなぞるように舌先で遊ばせると観念した声が落ちる。

「風邪、」
「ん」
「風邪ひいたら、お前のせいだから」

そんなんでいいなら、いくらだって俺のせいにすればいい。
もしひいたとしても付きっきりで看病だって喜んでするし、いくらだって甘やかしていつも言えない我が儘聞き出して叶えてあげる。
問答無用で張り付いてくる可愛い妻の服に背筋が興奮をかきあげて、冷えないように脱がしながら何度もキスをした。


※和羅さんに捧げよう。ありがとうございます^^


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