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「#エロ」のBL小説を読む
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12.おそろいの心臓

「髪!!!」

「うっせーな」

「髪が!!!!!」

「へーへー」

「なんでーー!?」

ある日、帰ってきた総悟の髪が真っ黒になっていた。あんなに綺麗なミルクティ色の髪が!わたしの大好きなあの色素の薄い髪が!なんでなんで酷い!どういう事なの!?

「まだドラマの撮影期間なのになんで!?」

「明日オフだから」

「意味わかんない!休みの日に明るくするならともかくなんで黒!?やだやだやだ!」

子どもみたいに文句を言ってキッチンでコーヒーを淹れる総悟を追いかけるとうるさいとおでこを叩かれたので大人しくソファに座る。けど視線は黒髪の王子様から離せない。似合うけど後ろ姿なんてまるで違う人みたい。

「明日、メイクしてやる」

「なんで?」

「文化祭だろ」

そう、明日はうちの高校の文化祭。といってもそんなに大きなことはしないけど。うちのクラスは微妙にやる気なくてカップケーキ屋さん。予めシンプルなカップケーキを焼いておいてお客さんに好きなトッピングして楽しんでもらうって感じのやつ。色んな材料を準備してカップケーキさえ焼いておけばあとはどうにでもなる感じ。
ただ生徒とお客さんを区別するために着なきゃいけない衣装があるんだけどこれまた絶対ふざけてるでしょって感じのやつで、80年代のアメリカンダイナーを意識したお店にしたいらしくそのイメージから用意されたのは…あのさ、わかるかな、白いシャツに赤と白のストライプ柄のちょっと派手なエプロン風ワンピースに薄くて白いタイツのいかにもなヤツ。なんでそれ?明らかにインスタ映えとか狙ってるやつじゃない?コスプレ大会になりそうで嫌だなぁ。ていうかそれならカップケーキじゃなくてパイとか出せばいいのに。なんか中途半端で消化不良だ。でも休んでる間に決まったことだから仕方ない。

「えっ待って。総悟明日休みなの!?文化祭来るの!?」

「バレそうになったら速攻帰るけどな」

「…いや、髪黒くしたところで溢れ出るイケメンと王子オーラは隠せないと思うけど」

「名前と歩いてると余計に目立つしな」

「じゃあ明日は他人のフリしていいよ。見かけても声かけなくてもいいし」

そう言うとこっちを見た。肌の白さが際立ってる。なんか某アイドルグループの一員みたい。でもすごく不機嫌な顔してる。こんなアイドルいたらやだなぁ。

「何の為にリスク犯して行くと思ってんだ」

「坂田くんに会いたいんじゃないの?」

「会おうと思えばいつでも会えるのにわざわざ人が集まる日に行く必要ねーだろ」

「それもそっか。じゃあなんで?」

「名前のウェイトレス姿見る為」

「あはは、期待しないでよね」

「ま、楽しみにしてる」

わたしも総悟が学校に来るの楽しみだなぁ。その時テレビから総悟の主演するドラマのCMが流れ始め反射的に思いっきり目を逸らした。全然気付かなかったんだけどこのドラマ、尾美さんも出てる。先生役でそんなに出番はないんだけど。やだなーもう。意識しちゃってまだ全然見れてない。もう始まって三週経つというのに。録画が溜まってく一方だし、友達にいい加減に早く見てよとせっつかれている。けど、どうしてもあの日のことを思い出してしまってバツが悪くて。

「……名前」

「なに?」

「来い」

あ、なんか久々だねその上から目線。無言で総悟の前に立つ。今だけは目を見て話すことに気まずさを感じる。

「なんか言うことあるんじゃね」

「…ないよ」

「コーヒーかけるぞ」

「やめてよ」

その時またテレビから総悟の声がしてCMが流れる。別バージョンだ。ちょっと止めて。いくら話題だからってそんな頻繁に流さなくていいから!ちゃんと録画してますんで!そして一言だけど耳に届く尾美さんの声に反応してしまう自分が情けない。

「…なに顔赤くしてんの」

「違くて、違うの」

「ハジメさんと何かあったんだろ」

「っな、いよ」

「あるだろ」

言葉と視線で追い込まれる。ああ冷や汗が止まらない。言えない。総悟の事務所の先輩と二人でご飯に行って告白されただなんてそんな夢みたいな話。夢、そうだ夢だったのかもしれない。

「確かにハジメさんは若い頃から俳優してる割に性格良くて面倒見もいいけど」

足元を見ていた顎を持ち上げられぐっと近くで視線が絡まる。

「俺以外のこと考えてそういう顔すんの、面白くねーんだよ」

「っ」

「キスして」

「む、り」

「早く」

もうほとんど触れそうなくらい近くにある総悟の唇に、少し顔を上げて触れた。先に目を閉じるのはいつもわたし。その瞬間まで総悟はずっと、目を逸らさない。わたしの心の奥を覗き込むように視線を絡ませたまま。

「…んっ!?んんん!!」

すぐ離れようとすると総悟の胸板に頭を思いっきり抱きこまれ呼吸が強制停止した。ぎゅうううと容赦なく押しつけて来るもんだから目の前は真っ暗だし首は痛いし苦しすぎる死ぬ死ぬ死ぬ酸欠で死ぬ!!声にならない悲鳴を上げて背中を叩きまくってやっと離してくれた。「は、」と蔑むように鼻で笑った王子様は何食わぬ顔で湯気の立つマグカップを二つ持ち、キッチンの床に倒れたままのわたしをまたいでいった。





「え、沖田サン大丈夫なのそれ」

「やばい?」

「いやなんつーか…キャバクラのイベントみてーだな」

「キャバクラとか知らないし」

「一人だけ浮いてる」

「身長あるし似合わないよねこういう可愛い服」

「そういう意味じゃねぇけど」

文化祭の期間、屋上は閉鎖されている。それなのに坂田くんは立ち入り禁止のテープを剥がし施錠されたドアを開け、いつも通り外を眺めていた。相変わらずわたしの名字は覚える気がないらしい。人前で呼ばなければ別に良いけど。

「クラス抜けていいの」

「今日一日客引き係だから大丈夫。看板を持って歩き回るだけだから」

「ふーん。つーか顔がいつもと違うんだけど着脱可能なのそれ。女って毎日違う顔でも付けてんの」

「メイクだよ。今朝総悟にして貰ったんだ。可愛い?」

文化祭だというのに普段と変わらず気怠げな不良くんはこっちを向いてなんて言うか悩んでいた。まぁ、可愛くはないか。知ってるけど。

「可愛いっつーか…」

「いいよ無理に褒めてくれなくても」

「美人だけどアイツの女としか思ってないんだわ」

「へ?」

錆びた重い扉が開く音がした。立ち入り禁止のテープはちゃんと貼り直して来た。それを破いてまで入ってくるのはここで待ち合わせをしているから。

「何お前、来たの」

「誰でも来れるんじゃないんですか、文化祭って」

「こんな蟻地獄みたいなところによくのこのこ来たなって話。絶対騒がれんぞ沖田くん。いくら変装したところでファンは骨格から見てるからな」

坂田くんと親しげに話す総悟は黒くした髪にサングラスして落ち着いた色のシャツとジーンズで、服装こそ地味だけどスタイルの良さとどこかミステリアスな雰囲気が目を引く。うーん、やっぱり目立つ。

「ここまでどうやって来たの?」

「山崎に送って貰った。下で待機してる」

山崎くん、よく許可したなぁ。バレたら大騒ぎになるのに。まぁでもいくら芸能人だからとは言え高校の文化祭に遊びにも行けないなんてかわいそうだ。徐にポケットからスマホを取り出した総悟はそれをわたしに向けた。ん?パシャリとシャッター音がした。しかも連続で。

「やだなんで撮るの!?恥ずかしい!」

「山崎に頼まれてる。『可愛い名前ちゃんの写真よろしく』って」

「やだやだこんな格好してるなんて知ったら絶対笑うもん!!山崎くん絶対笑うもん!!!」

顔を隠すと手を取られた。わあもうなんで1人で…!写真を撮るならせめて同じ衣装を着たみんながいる教室でこっそり撮って欲しい。

「俺がせっかくメイクした顔隠すな」

「だって変じゃない?ちゃんと似合ってる?」

「大丈夫世界で一番可愛い」

「そこまでいくとからかわれてる気分……」

「はいチーズ」

インカメにして今度はツーショットを撮られる。今絶対変な顔してた。満足げにスマホをしまう総悟の隣で坂田くんは鼻ほじってた。

「お前それだけの為に来たの」

「勿論そうですけど」

「やべーな」

「俺も健全な男子高校生なんで文化祭くらいは楽しみたいんでね」

「総悟通信だからそういうのないもんね」

坂田くんのクラスは何するのかと聞くと「知らねーけどなんかの展示みてーなやつ」といかにも授業にも準備にも出ていなさそうな返答が返ってきた。

「暇なら一緒に回ろうよ」

「いや、いいわ。お前らと一緒だと目立ち過ぎる。それに俺と歩いてたら噂になっちまうぞ沖田サン」

「こんなに人がいればわかんないよ」

「デートに割って入るほど無神経じゃねーってこと。ほらさっさと行きな」

「じゃあまた道場で」

「おー」

王子様と不良の不思議な密会を終えて賑やかな校舎内を並んで歩く。通り過ぎていく男子生徒達の視線がいつもより好奇に満ちているのは派手な衣装のせいかな。

「『花』って何?どいつもコイツも名前のことそう言ってるけど」

「男子が勝手にやってる女子のランキングの名前」

「ふーん」

「…ねぇあの人めっちゃ格好良くない?」

「本当だ、誰かに似てる〜」

ヒソヒソと女の子の声がして顔が引きつった。当の本人は顔色一つ変えずわたしが持っていたクラスの看板を奪い取り自分の顔の前に持った。それでも、すれ違う女の子達の視線は総悟の横顔に釘付けになっている。ウチの学校の人?サングラス取って欲しいね〜…なんて声が耳に届く。黒髪効果なしじゃん。もっとダサい歩き方してよ。あと足短くして。

「クラス寄ってく?」

「名前見れたから別に良い」

「じゃあステージ見に行こ?そっちの方が注目されないだろうし」

庭では軽音部が野外ステージをしていてたくさんの人が集まっていた。そこを通り過ぎて体育館に入ると薄暗い空間の中心にステージがあって、派手なドレスやオリジナルの衣装を身につけた生徒たちがスポットライトを浴びながらウォーキングしていた。服飾科主催のファッションショーだ。

「わー!綺麗!」

「ウォーキングなってねーな。衣装の素材も安っぽいしメイクと合ってない」

「学生の出し物なんだから真剣に見ないでよ…」

さすがに見えづらいとサングラスを外した王子様は興味津々でステージを眺めていた。ウチの高等部は普通科だけどひとクラスだけ服飾科が存在する。年に一度の文化祭で行われるこのファッションショーは結構有名で地元紙の取材が来たりするほど。女の子がほとんどだけど確か男の子も数人いた気がする。みんな夢がはっきりしてて格好良いなぁ。前半のステージが終わり、グループのメンバー達がステージに集まり頭を下げた。パチパチと拍手していると端っこに立っていた先生がギョッとしてこっちを見た。

「やばい、先生と目合った」

「こんなに人いたらわかんねーだろ」

「まぁ確かに」

わたしたちがいるのは体育館の後方。ステージからも離れてる。10分間の休憩とアナウンスがありスマホを見始めた総悟につられてわたしもポケットから取り出してみると総悟からさっきの写メが送られてきていた。

「えー、何これ変な顔してる」

「アホっぽくて可愛い」

「本当に山崎くんに見せるの?これ、やだな」

「後で取り直してやろうか?」

「それも狙ってるみたいでやだ」

「じゃあ………」

「ちょっと!!あなた達!!!」

ばしんと背中を叩かれて振り返るとさっきの先生が鬼みたいな形相で立っていた。うわ、ほらやっぱりこっち見てたんじゃん!

「お願いがあるのよ!!いいからちょっと、ちょっと来て!!!」

「わっ、わっ、何ですかもう」

ぐいぐい引っ張られて連れて来られたのは体育館のステージ裏にある倉庫兼準備室。さっきまでステージに立っていた生徒やこれから上がるであろう人達が着替えたりメイクを直している。

「貴女普通科の名字さんよね!?メインの子が急に体調不良で立てなくなったのよ!貴女体型似てるからピッタリだと思うの!これ着て歩いてくれないかしら!お願いよ!」

ずいっと出されたのは何とも着物柄の派手なドレス。わあ、綺麗。…いやいや、そんなこと急に言われても。こっちは普通科ですけど。

「本当に困ってるのよ!名字さん…!」

「一つ条件出していいですか。俺もエスコート役で出たいんですが」

「えっ」

「コイツの隣歩けんの俺だけだと思うんですよね、絶対すっ転ぶし」

「勿論よ!貴方も普通科の子?スタイルも見栄えも良いわね!是非お願いするわ!」

「ちょっと何言って…そう、」

隣から口を挟んだ片割れの名前を呼びそうになった唇を指で押しいいからさっさと着替えてこいと顎で指示されて、案内の子に促されて手伝ってもらいながら着替えを済ませた。え、わたしほんとに歩くの?今さっきまで観客として見てたあのステージを?嘘でしょ?次に控室で見た総悟は男物の和服の衣装で現れた。ちょっと待って本気で自分も上がる気でいるの!?

「ダメだって!なんでわざわざ目立つようなことするの!?」

「だってその方が楽しいだろ?せっかくの文化祭だし」

にやりと口角を上げてポニーテールにしていたわたしの髪を下ろし、すぐそこにいたメイク担当の子に「ここ、編み込みできる?」と話しかけ顔を真っ赤にしながら頷いたのを見て自分は正面に立つとメイクを直し始める。手際の良さがもう本職の人の手つきで、しかもとっても楽しそうにしてるからもうそれ以上反論できなくて。ああもう、こうなったら何を言っても無駄。バレないことを祈るばかりだ。

「もっとイメージに合わせて仕込みてぇけどこんなもんだろ。行こうぜ」

最後の最後までやだやだと駄々をこねたわたしを「名字さん超綺麗だよ!!」と優しい服飾科の皆さんが口々に褒めてくれたお陰で気を良くしてしまい、ついにステージ袖まで来てしまった。準備にもたついたせいでよりによってラストルック。会場は満員御礼大盛り上がり。ああ、わたしってなんでいつもこんなに行き当たりばったりで人前に出ちゃうんだろう。

「総悟の衣装すっごくお洒落だね」

「『現代版サムライスタイル』らしいぜ。メインは名前の衣装だけど」

総悟が借りたのは黒がベースの和服を現代風にアレンジした衣装。かっちりし過ぎない緩い羽織と小物を合わせることで新鮮に見せていた。幸か不幸か和服に黒髪がよく似合う。わたしのは着物をドレス風にしたデザインでウエストから下はボディラインがはっきりとしたロングドレス風。確かにこれは着れる体型と身長が限られる。細かい部分まで丁寧な作りで飾りの一つひとつが手付けだった。よく考えたらわたしが断ればこの衣装がお客さんに見られることはなかったんだと思うと覚悟を決めるしかなかった。

「…人前を二人で歩くなんてなんか結婚式みたいだね」

「ドレスじゃなくていいんだ?着物で」

「ドレス着たいけど身長あるし」

「だから何」

また始まったと言わんばかりの呆れ顔に自分でも苦笑いするしかなかった。

「最近何悩んでんのか言わないつもりなら別にいいけど、今はハジメさんのこともこれから先のことも全部忘れて、隣にいる俺のことだけ考えてて」

煩いくらい響く音楽の中で耳元で囁く総悟の声は何よりも真っ直ぐ心臓に届いた。「二人とも素敵よ!いってらっしゃい!」先生の合図で歩き出す。目も眩むほどのスポットライトが熱くて、拍手と歓声とどよめきの波に押されそうになる身体を導くように半歩前を歩く総悟にエスコートされながらランウェイの一番奥まで辿り着いた。「あれ誰!?」「男の人めっちゃ格好良いー!」「なんで扇子で顔隠してるのー!?」「あれ名前じゃん!なんで名前が出てるの!?」「名前ー!似合ってるよー!」…などなど色んな声援?野次?が聞こえる中、クラス模擬の宣伝に歩いていたはずのわたしがランウェイを歩いてるという事態に驚いている友達には事情があるのよと視線を送っておいた。

『中央の一番前まで来たら向かい合って』と先生に指示されていた通り総悟の方を向くと突然跪いた。えっ何。わたしの左手を持ち上げて手の甲に唇を落とす瞬間、反対の手に持っていた扇子が観客からの視界を遮った。見えたような見えなかったような絶妙な演出にきゃあきゃあ興奮する女子生徒達の声が鼓膜にビリビリと響く。こちらを見上げ余裕綽々でニッと笑う人気モデルさんを罵倒したくなったけど飲み込んだ。ねぇでもこれ、横の席の人達にはばっちり見えちゃったんじゃないかなぁ。怖くてもう客席見れないや。踵を返して来た道を戻る時、慣れないぴったりとしたドレスとヒールにいよいよ足が震えて来たことを察したように腰に手が置かれてぐっと距離が詰まる。密着した恋人同士の雰囲気がまた観客を刺激して悲鳴みたいな歓声を浴びた。さすがお兄様、プロだわ。

「はああ緊張した…!」

「セット揺れ過ぎじゃね?来年までに補強しないとそのうち怪我人出るぜ」

はふはふ息を整えてる横でさっさと着替えに行ってしまった片割れ。冷たい。

「名字さんお疲れさまー!めっちゃ良かったよ!客席も沸いてたし!最後の挨拶あるけどステージ立つ?」

「立たない、もう無理…足がガクガク…」

服飾科の皆さんを送り出してのそのそと着替えた。フリルが可愛いアメリカンダイナーの衣装。そろそろいつもの制服が着たい。

「お疲れ」

「お疲れ〜…モデルって大変だね…あんなにたくさんの人に見られて感情をぶつけられて…総悟の仕事本当すごいよ」

「俺の可愛い名前を自慢できて気持ち良かった」

「いやいやみんな総悟のこと見てたよ。それにわたし、」

「可愛い。ほんとに」

「ん.……」

わぁっとステージの方から拍手が上がった。代表の子が挨拶をしてる。次第に涙声になっていく感動のスピーチの裏でわたしたちはキスなんかしちゃっている。
ああそうだ。自分に自信なんてなくて周りになんて言われてもピンと来なくて、総悟の妹だからかなとか言葉の裏を読んでしまうのがいつの間にか癖になってて、それが更に自分を追い詰めて勝手に惨めな気持ちになってた。気づいたのはあの日尾美さんがはっきりと『魅力がある』と言ってくれたから。それでも完全には振り切れなくて…でも総悟の言葉を偽りに感じたことは一度もない。だからこんなにも素直に受け入れてしまうんだ。触れる唇も、吐息も全部真っ直ぐにわたしだけに届けられる絶対的な家族の愛情。ねぇ総悟、わたしも総悟のこと格好良いと思ってる。誰よりも前から、ずっと。わたしだけの王子様にはなってくれないけど、それでもこれからもずっと、何年経っても総悟の一番近くにいたいと思ってる。そう思っちゃダメかな。

title by ミノルカ