階段

急いで階段を駆け上がると、運動不足に比例して心臓が跳ね上がった。
凄い速さで鼓動を刻む心臓に合わせて、身体も熱を持っていく。
深く息を吸い、膝に手をあてて俯いて呼吸を整える。
少し落ち着いて来て、ふと、まだまだ長い道のりを見つめた。
屈んでいるからか、いつもより低い視点の階段。
それは見慣れている筈なのに、新鮮に感じた。

真っ直ぐ私の目を射抜く、四角に切り取られた光は眩しい。

でも、なんとなく、励まされたような・・気がした。

包み込むような、優しい光。

少し冷めた身体に、ふっと息を吐き出す。

手を膝から離し、身体を真っ直ぐにして、階段を見つめる。
それは。いつもの風景。
しかし、今までとは、違って見えた。

――・・よし、行こう

私は微笑み、少しだけ愛着の湧いた階段を踏みしめて、再び上を目指して駆け上がり始めた。


階段2

グ―リ―コ!

三段、上に上がる。

パイナツプル!

六段上に上がる。

チヨコレイト!

六段、上に上がる。

ジャンケンをして、勝つたびに上がる段数。
どんどん高くなる、視界。
それは、何年振りだろうか。

拙い、子供のゲ―ム。
でも、いくつになっても楽しい。

「あそこまで先に辿り着いた方が、勝ち!」

嬉しそうに友達が指差した先は、次の階段の踊り場。

私は、勝者を祝福するかのように輝く日の光を見つめながら、手を前に差し出した。

「負けないから!」

それは幼い遊びだけど、とても楽しい遊び。

二人で合わせて、声を出す。

最初はグ―、ジャンケンポン!

放課後の赤い校舎に、明るい声が響き渡った。



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