「ねぇねぇ。太一も進化したのー?」
「僕たちほど、あんまり変わらないねー?」
ロップモンとテリアモンは太一の体をペタペタ触る。
「進化したわけじゃないぜ?これは成長。」
「せーちょー?」
「そう。人間は進化しなくても大きくなってくの。デジモンと違って、大きくは変わらないんだけどなー。」
「へー。じゃあ、純もせーちょーしたのー?」
「成長、しちゃった…んだよね」
いくら嫌だと思っても、いくら嫌だと言っても、時間が止まることはない。
一歩、一歩、確実に大人への階段を登り、成長していかなければならないのだ。
「子どもじゃなくなると、守れないのかな?」
「純…?」
「昔は大人が子どもを守るって思ってたけど、違うのかな?大人になっちゃったから…守られちゃったの?」
先ほど味わった気持ちは簡単には消せない。
三年前のあの時も守ったのは子どもだった九人で、大人は守られていて。
子どもにしか、できないのだろうか。
「…その答えがイエスかノーかなんて、俺にはわかんねぇ。けど、俺は今でも純に救われてる。純がいたから、自分だけじゃなくて、ちゃんと周りも見ようって思えるようになった。純がいなかったら、今の俺はなかった。間違いねぇよ。」
「太一…」
「純がいなかったら…んー。アグモンはウォーグレイモンどころかメタルグレイモンにすらなれてなかったかもな。」
「太一ぃ!それ、どーゆーことぉー?」
「アグモン!そんな怒るなって!言葉のアヤってやつだろー!」
成長して小さく感じていた電車の中で追いかけっこをする太一とアグモンを見て、昔に戻った気分になる。
そういえば、追いかけっこなんて、しばらくしてないなー、なんて。
bkm