6.hand
 私が、がっくりと肩を落とし情けない声を出したそのとき、会場からプレゼント交換の音楽が流れてきた。

「あ! プレゼント交換、始まっちゃった」

「今から会場に戻ったのでは間に合わないな」

「そんなぁ、楽しみにしていたのに」

「君は先ほどから、泣いたり笑ったりまた落ち込んだり忙しい。少しは落ち着きを持ちなさい」

「不可抗力です!」

「ほう、そう来たか」

 私のその返しが気に入ったのか、氷室先生は愉しそうに口の端で笑った。

「来なさい、プレゼント交換なら二人でもできるだろう」

 そしてまた私の手首を掴んで歩き出した。さっきはパニックになっていて気がつかなかったけれど、先生の手ってすごく大きいんだな……。指が長くて、彫刻みたいに綺麗。氷室先生はピアノが上手いって聞いたことがあるけれど、こんな繊細な指は数式を解くよりも、ピアノの鍵盤の上で優雅に踊っていたほうがずっと似合う。

「……ああ、すまない。強く掴んでしまったようだ」

 私の視線に気付いたのか、先生が手を放した。

「い、いいえ」

 えーと、そういう意味ではないのだけれど。でも先生は放したあとも、私の手のほうを何か言いたそうに見ている。

「あの、先生、何か?」

「小波、君の手首は少し細すぎるのではないか?」

「え? そんなことはないと思いますが」

「そうか……。少し力を入れただけで折れてしまいそうだったので、驚いた。君は華奢なんだな」

 そんなことを面と向かって言われたことがないから、頬が紅潮するのが分かった。

「急ごう。プレゼント交換が終わったらパーティーも終盤だ。その様子だと、食事はほとんど口にしていないのだろう?」

「どこに行くんですか?」

「ああ、君に見せたいものがある」
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