21:ひとじち

「っ、離して……っ」
「おい、大人しくしてろ!」

 ギリ、と腕を後ろに捻られ、思わず顔が歪む。突然船に押しかけてきた緑のコートの男たちに拘束されてしまった。岸からやってきたのはゾロさんでもカルーでも、村へ向かった皆でもなかったのだ。
 ゾロさんはまだ泳ぎに行っているのだろうけれど、やはりカルーがどこにも見当たらないことが気になる。

「ワポル様! 大変であります!」

 ふとコートの男の一人が慌ただしく駆けていき、その後ろをついていくように引っ張られる。

「痛っ……」
「なにゴトか!」
「昨日の……! あの海賊達の船が、川岸に!」
「何!?」

 先導した男の行先で何やら騒ぐ声が聞こえてくる。
 昨日の、というと、船が大揺れしたあの時のことだろうか。
 わたしはナミさんについていたから何が起こったのかを実際に見ることはなかったけれど、何やら変な男が現れたのだと後から皆に教えてもらった。

「あの麦わら共がおれ様の国に!? おれがあの後どういう目に・・・・・・あったと思ってんだ……! さっさとみな殺しにして来ねェか!!」
「いえ……それが船の中は女が1人いるだけで、あとはからっぽで……! 他の行方がわかりません」
「この女だけでも殺しますか?!」
「ひっ……!」

 冷たい銃口が頬に添えられ、ゾッと血の気が引く。
 ワポルと呼ばれる口周りがブリキで出来た不気味な男は「ンン……?」と片眉を上げ、わたしの顔をじっと見つめた。すると不意にニヤリと口角を持ち上げて、まははは、と声を上げて笑うのだ。

「女なら人質にして甚振ってやろう! 連れてこい!」
「はっ!」

 ワポルの一声により、わたしに銃口を突き付けていた男は「命拾いしたな」とそれを腰に戻した。
 助かったのは確かだけれど、命が握られたままなことに変わりはない。どうにかタイミングを見計らって逃げ出さないと。
 しかし弓は船に置いてきてしまったし、土地勘のきかない雪山で一体何ができるというのだろうか。

「……して、ワポル様。我々はこれからどこへ……」
「まったく不出来な家来どもだ……。我々、その船より出ます足跡を検証しましたところ」
「奴ら、おそらく“ビッグホーン”へ向かったと思われます。違うか? 娘」
「……?! わ、わかりません、わたしは船番をしていたので……」

 アフロのようなグローブを着けたアフロの男に突然話を振られ、恐る恐る言葉を返す。期待するような答えが聞けなかったことでキツく眉根を寄せられたけれど、まあいい、とすぐに顔を背けられ、ほっと息を吐いた。

「しかし成程、お前ら天才か!? ならばまずはビッグホーンでドラム王国復活の祝砲をぶちかますとしよう!」

 オオ、と家来達が声を上げる。
 言葉の節々から察するに、どうやらワポルという男はこの国の王らしい。“王国復活”という言葉が少し気になるけれど、滅びでもしたのだろうか。村は機能しているようだったけれど。

「さァ行くぞお前ら!」

 そう言って大きなカバの上に乗ったワポルは、ルフィさん達が向かったかもしれないという村──ビッグホーンへと進み出した。

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