近頃なまえの様子がおかしい。
まず異変に気がついたのは年が明けてすぐくらいの頃だった。いつもなら談話室で管理栄養の参考書を読んでいる時間帯に、部屋に籠っているのだ。
はじめこそ部屋で勉強するようになったのかと思ったが、ある日談話室にその参考書が置きっ放しになっていることに気がついた。
どうやら管理栄養の勉強をするのに籠っているというわけではないらしい。
かと言って学校の勉強をしているのかというと、それも違った。なまえは寮に来てすぐの頃は自室で課題等をしていたようだが、ある時期を境に談話室のみでするようになった(わからないところが出たらその場ですぐに誰かに訊けるかららしい)。
ならば彼女は一体何をしているのだろうか。
次に異変に気がついたのは1月末頃だっただろうか。
朝起きると、キッチンに洗いたてらしい料理器具が乾かされているのだ。なまえはそういった類は夕食後すぐに片付け始めるので、朝になる頃にはすっかり乾ききっているのが常だった。
さらに、いつもは朝食を作るためだろうかなり早起きをしているらしいのだが、その頃からは割とギリギリに駆け込んで来ている。団員にどうしたのか問われるといつも「寝坊だ」と答えているようだ。
つまり深夜に何か作っているのだろうか……?
そして最後の異変だ。
最近妙〜になまえと臣の仲が良さげなのである。
以前からお互いに料理を教え合ったりと仲良さげに見えるところはあったが、最近はそれが特に激しい気がする。
先日談話室で誉や密が同じことを話していたのを見かけたので、俺だけでなく他の皆もそう感じているようだった。
「なんだかね〜……」
「ん?どしたんスか」
ぼやきがうっかり漏れてしまったらしく、隣で対戦ゲームの相手をしている万里は首を傾げた。
「……いやね、最近なまえが付き合い悪いよなって」
「そういうこと俺に言うかよ……」
ばつが悪そうな表情をしながらコントローラーから片手を離し、頭をボサボサと掻いた。その隙に追い上げようと指を動かす速度を速めたら、それに焦った万里もすぐに手を戻しまた俺と同じようにした。
「まーでも、確かにそれは思うっスね。そもそも見かける頻度が低いし」
「だよな〜……何やってんだろ」
「至さん、なまえと付き合ってんだよな?やばいんじゃねーの?」
「……やばくねーって。嬉しそうだなお前」
「はは、まあ……あっクソ死んだ」
乱雑にコントローラーを投げ出す万里を横目に、俺は小さく溜息をついた。
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2017年2月執筆
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