ちょっと待ってくれ、このジャングルが普段わたしの暮らしている街ではないことは察していたけれどまさか島ごと違うなんて考えもしていなかった。わたしは無意識のうちに海を渡っていたのか。
それに彼の口ぶりからして彼は航海者なのだろうか。今の時代にそんなことしてる人がいたのか(大偏見)
ともかく彼が目的あってこのジャングルに来ているのならば、きっといろいろ知っているはずだ。
「あの、ここってどこですか?」
「"リトルガーデン"っていう島らしい。でもどうして……」
「実はわたし気づいたらここにいたの。
ただいつもの道路を歩いていただけなのに、瞬きをしたらジャングルにいて……そしたらそこの家?から貴方が出てきて」
彼は一瞬だけ怪訝そうな表情を見せたが、すぐまた先程までと同じ優しげな顔に戻り「この海ではそういう"不思議体験"はつきものなんだな」と呟いた。
「つまり行くところがないってことか……それじゃあひとまず俺達の船においでよ」
「えっ……いいの?」
「もちろんさ」
「じゃあとりあえず、どれくらいで帰れるかがわかるまで」
きっと少し調べればこのジャングルとわたしの住む街がそう遠くないことがわかるだろう。そうすれば地図を頼りに家に帰ればいいまでだ。
数分前までこの先どうなるか不安でしかなかったのに、既に目の前はとても明るい。すっかり元気になれてしまった。
彼はいい人だなあ、と頬を緩ませつつお礼を言った。
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2016年11月執筆
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