after-1 (1/2)

 夜の底、眠る歩道。そよ風が泣いていた。
 白く遮られた視界に、ひどく目が眩む。
 ぐるぐる、ぐるぐる。ふわふわ、ふわふわ。
 温かな漣に飲まれて────。


 ふと、お母さんの声が聞こえた気がした。

 あれ、わたし、どうしてたんだっけ。
 ぼんやりとしてうまく働かない頭を、そっと誰かが撫ぜたのを感じた。
 誰だろう。お母さんかな。
 随分と重たい目蓋をゆっくりとこじ開ける。

 ……ああ、やっぱり、お母さんだ。

 いまいち開ききらない視界の中で、お母さんはわたしの顔を見ると驚いたように目を見開き、頬に一筋の涙を伝わせた。
 お母さん、どうして泣いてるの?
 わたしは今まで、どうしてたんだっけ。
 頭がぼーっとして、よく思い出せない。
 だけど、なんだかとても悲しくて、涙が溢れて、止まらなかった。
 どうしてだろう。わからないけれど、とにかく、とにかく、悲しくて、仕方がなかったんだ。
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