「せやけどあのピエロ、ほんまに一体なにを考えとるんやろうな……」
騒がしく賑わう食堂で同郷の友人と3人昼食を摂る中、半ば無意識にそんなぼやきが溜息と共に溢れ出た。
ピエロというのは無論、メフィスト・フェレスのことである。あの男は昨日遊園地で行われた任務で偶然出会った苗字名前という
そんな風に考えながら黙々と購買のパンを口に運んでいると、どうやら難しい顔をしてしまっていたらしい、子猫丸に心配そうに声をかけられてしまった。
「使い魔になった言う
「せや……」
「まあ……いきなり使い魔やなんて、戸惑いますよね」
「坊も子猫さんも何言うてんや、召喚もなしに女の子使い魔にできた上に2人でおんなじ部屋に住むことなったんですよ?むしろ超ラッキーやないですか!」
子猫のフォローも詮無く、志摩がすかさず煩悩に塗れた文句を不満げにぶちまけた。まったく、こいつの"これ"はどうにかならないものかと溜息を吐けば、子猫丸と重なった。
「2人とも難しゅう考えすぎなんですわ」
「……志摩さんは軽く考えすぎなんよ」
子猫丸の言葉に内心強く同意しつつ、再び思い出すのはやはり渦中の彼女のことだった。そういえば、一体、今どうしているのだろうか。
今朝寮を出ようとした頃、彼女はまだベッドでぐっすりと眠っていたのだが、わざわざ起こすのも可哀想だと思ってそのままにして登校してきたのだ。
あんな風によく眠っていたのは前日慣れないことばかり起きて疲れていたからなのか、それとも目覚ましがないと起きられないタイプなのだろうか。もし後者であれば早いとこ時計か何かを用意してやらないといけないな、なんて考えながら、最後のパンを喉に押し込んだ。
ふと食堂の壁に掛けられた壮麗な時計を見て時間を確認した後、席を立ち空になったパンと惣菜の袋を引っ掴んで鞄を肩から提げた。
「まだ授業まで暫くあるさかい、朝から放置しとるし一旦寮戻って苗字の様子見てくるわ」
「え?!俺かて女の子の寝起き見たいんですけど?!」
「アホ、ちゅうかさすがにもう起きとるやろ。それにそない大勢でぞろぞろ行く意味もあらへんし」
志摩が勢いよく残りのパンを口に突っ込もうと試みて盛大に咽せるのを尻目に、「お前らはゆっくりしとれや」と一言添え、その場を離れた。
不意に子猫丸が「坊、なんだかんだ面倒見ええんですよねぇ」なんて言うのが遠くに聞こえたが、なんだか癪なので聞こえないふりをした。