※太陽と白竜が同時に時空最強イレブン設定




あぁ、もう、なんだよ。高い所が好きって。
告白告白と自分を奮い立たせたつもりだったんだけど、なんだかやっぱりダメだった。

そんな自己嫌悪をしながらも、明日の練習試合に備えて寝ようと思った時。窓越しにベンチに座る影が見えて、思わず隠れてしまった。
…鉄角さんと剣城さんだ。1日休んでおけって監督に言われても、やっぱり動きたくなったみたい。

というかなんでまた私は盗み聞きのようなものを……。
なんだかシリアスな話をしていそうだし、そっとその場を離れようと思った時、剣城さんの言葉がはっきりと聞こえた。


「サッカーは楽しいが…焦って上にあがろうとすれば、いくつもの壁に押し潰されそうになる」


その言葉、私にも当てはまるような。
なんだってそう、焦っちゃいけないのは分かっている。だからたぶん天馬キャプテンのことも、…いや、これはまぁとにかく。別に勇気がない言い訳ではない、たぶん。…たぶん。

……でもさ。周りが急激な進化を遂げている中で、自分だけ変われてないのに平常心でいられる、なんてそんな大人な対応私にはできそうにない。無理だよ。
だって強くなくちゃチームにいる意味、無いじゃない。足でまといなんてごめんだ。
だからこそ明日の試合ではきっと活躍してみせる、そう1人、私は意気込んでいた。




*****

「楽しみじゃない?」


練習試合の相手が来る前、軽いウォーミングアップをしているさくらさん達がそんなことを言っていた。


「今の俺たちの実力を試す、って意味でも…きっといい試合になるよ!」


天馬キャプテンも乗り気な中、不意に凄まじい音と共に風。風力だけでも飛ばされそうだ。


「な、に…!?」


その正体がわかった頃には、既に剣城さんはそれを蹴り返していたわけだけども。





*****
さっきのボールを蹴った張本人、白竜さんがキャプテンを務めるレジスタンスジャパン。
お兄ちゃんから話を聞くまでもなく、ホーリーロード中継のTVで注目されていた選手ばかりが集まったすごいチーム。

強いて言うなら化身使いでないのは南沢さんと喜多さんだけだし。
でも喜多さんは天河原のキャプテンだけど、南沢さんは………いや、あの人3年生だし聞く話によれば元雷門出身だとか。色々あるんだなぁ。

そんなことを思いながらも、どこか胸が高なるのを感じる。こんな強い人たちと試合できるなんて。
それと同時に、不安も。
特にキャプテンの白竜さんは、過去にお兄ちゃんと同じ時空最強イレブンに選ばれた経験が―…


「すごい選手が集まりました…!」


さっそく調べたのか、真名部さんも驚いている。
見るからに2-3-5のフォーメーションで来そうなチームだ。(実際は3-4-3らしいけど。)
DFへの心配がされる中、天馬キャプテンの掛け声でまとまるイナズマジャパン。
コーチが審判になってくれる中、ここで問題が起きた。


「なまえ。剣城と交代だ」

「えっ!?」


固まる私。剣城さんも驚いている。隣のベンチからも視線を感じる。
無理もない、エースナンバーの剣城さんと私が交代…? それも序盤から?
いくら監督が言ったといえど、それは流石にきついんじゃないか。
そう言い返そうと思ったら剣城さんに肩ぽんされてしまった。


「任せたぞ」

「え、あの、」


それからベンチに腰をかける。うわぁ似合わない…剣城さんはやっぱベンチ座るの似合わないよ。
いや、今はそんなこと言ってる場合じゃないんだ。


「剣城さん、」

「試合が始まるぞ」

「あ、は、はい」


剣城さんは監督の意思を読み取った、そんな感じの顔。余裕そうだ。
ライバルの白竜さんと戦えなくていいのかな…と思いつつも、私はフィールドに立つ。

キッキオフの際、相手チームの3TOP、白竜さん、南沢さん、浪川さんとそれぞれ目線が合う。
みんなオーラが違う。もう見るからに実力者って感じで。ホーリーロード観戦とお兄ちゃんから聞いた話通り、すごい人達そうだ。

―…勝てるのかな。お兄ちゃんレベルの人たち相手に。
お前じゃ無理だ、って、心のどっかで誰かに言われたような。……気のせいかな。不安だと幻聴でも空耳でも聞こえてくるから怖い。
とにかく今は、目の前の相手から点を取ることだけを考えよう。




*****
私たちのキックオフにより試合スタート。
ボールは天馬キャプテンがキープし続けていたけれど……何か、おかしい。
というのもレジスタンスジャパンは多少のブロックはしてくるものの大して攻撃を仕掛けてこないのだ。
…おかしい。何か、乗せられてるような気がする。
そんな危機感を感じながらも私は前線に上がっていた。


「っなまえ!」


ここでパスが回ってくると、シュートコースにはDFは居ない。
怖いくらい安定したそのルートに疑問を抱きながらも、今決めないでどうするんだと、体制に入った。


「クレセント!」


ギリギリとはいえマッハタイガーに効いた必殺技。きっと行けるだろうと、正直自信はあった。
の、だけれど。


「甘いな……っホワイトハリケーン!!」

「っ!?」


いつの間に上がったんだろう、反対側にいたはずの白竜さんがDFラインまで戻ってきていて。
私の渾身のシュートはGKに触れることなく、白竜さんが難なく蹴り返してしまう。
クレセントにホワイトハリケーンの威力を上乗せしたそのシュートは、更に、


「パンサーブリザード!」


雪村さんがシュートチェイン。
神童さんの苦い声が上がる中、ボールは一直線にレジスタンスゴールからイナズマジャパンゴールへ。
そして当たり前のように井吹さんを吹っ飛ばすと、1点。
開始早々すぐのことだった。


「なんて強さなんだ…」


思わず口に出す鉄角さん達。
そんな彼らを見ながら、私は相手ゴール前でぽつんと取り残されたまま。


「違う……これくらい、が、当たり前……」


初心者の中に混じって忘れるところだった「それ」は、もう完璧に私の中で蘇ってしまっていた。
―…追いつけない焦り。自分の実力不足。上には上がいると言う現実。
世界は甘いもんじゃない。今の自分の実力で適うほど、優しくないんだって。

その証拠に国内の練習試合でさえ、今みたいな結果に―…


「お前が例の妹だな」

「えっ、」


不意に話しかけられ振り返ると、白竜さんだった。
彼は自分のポジションに戻りながら、すれ違い際に私にひと言。


「この程度か」


…それは荒療治なんかじゃなくて、確かな「挑発」であり「落胆」を示していた。


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