堕ちた先の世界 [ 2 ]
「カナ、今日もお願い。」
「ルーシィ……もう諦めなよ。」
「お願い。」
カナは、ルーシィの真剣に縋る目に今日も負ける。
何度やっても占いの結果は変わらないのに何度確かめれば気が済むのか。
「…………やっぱり、今日もコレだ、ナツは…戻ってこないよ。」
「……」
「……ルーシィ、ナツは自分から私たちを拒絶したんだ。戻ってくるわけない。
それに……皆を傷つけすぎた。もうフェアリーテイルに戻らせてもらえないよ。」
カナは、ルーシィを想い言えずにいた悲しい言葉をルーシィに告げる。
ルーシィは、その言葉に下唇を噛み、目を伏せた。
「……わかってる……わかって……たよ。カナ、ありがとう。」
ルーシィには、礼の言葉に笑顔を沿える余裕はない。
そのまま席を立ちギルドを後にした。
ルーシィの目に映る街並みは、無残にも荒れている。
ナツが、大暴れしてからまだ、三日目だ。
三日前にナツは大きく立ち昇る炎と化した。
説得し、止めようとする仲間の魔導士達を次から次へと薙ぎ払う。
そこが街の中で、人がいようと関係ない。
魔導士たちは皆、ナツを止めようとしながらも街の人々を炎から守ることに必死だった。
皆の守りのおかげか、幸い一般の人達の怪我人は少ない。
しかし、ギルドの仲間を傷つけただけでなく、マグノリアの街を混乱させ、破壊した罪は大きく、
評議院はナツを指名手配した。
当人を止めることができず、街を混乱させたフェアリーテイルの立場も危うくなっている。
今、そのフェアリーテイルでは建物の修復や怪我人の手当てに追われていた。
ナツは評議院からの罰則を受ける必要がある。
早急に評議院に連れて行けば、ギルドにも、ナツ自身にも、まだ咎めが少ないだろうと皆、希望を持っていた。
皆は、ナツのために、ギルドのために、動いている。
自分も皆の手伝いをするべきだ。
そしてフェアリーテイルのためにできることをするべきだ。
ルーシィはそう思いながらも少年と青い猫の笑顔が頭から離れずにいた。
かつて、念願のフェアリーテイルの魔導士になった頃は、
毎日が楽しくて希望に満ち溢れていて、世界がキラキラと瞬いて見えていた。
―― あの時、ナツと出会えたから、今の私がいる。 ――
―― ナツが一緒に戦ってきてくれたから、私も強くなれた。 ――
このまま、評議院にナツを渡すだけでいいのだろうか。
それでナツは救われるのだろうか。
何度も悩んだルーシィの答えは、変わらなかった。
家に着き、ルーシィは荷物をまとめる。
手当たり次第にトランクに詰め込み、早足でドアへと向かう。
そしてドアに手を掛け、振り返った。
ここには、たくさんの思い出がある。
部屋のどこを見てもルーシィの目には、少年と青い猫が笑っている姿が映って見えた。
でも少年も青い猫も、もうここには来ない。
そして………私も、もうここには戻らない。
ルーシィは、目を瞑り、振り切るように部屋を出た。
ごめん、皆。
ナツがフェアリーテイルに戻れないなら
私も戻らない。
このままでは終わらせない。
ナツを…助けるんだ。
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