張り巡らされた罠 [ １１ ]
「……おい。マジで死ぬところだったんだぞ。」「だから謝ってんだろ。でけぇのが出てきてこっちも焦ったんだよ！」
「その下にオレらがいるかもしれねぇだろ！！考えて行動しろよ！」
「うっせぇ！俺らのおかげでルーシィと二人っきりになれたんだからちょっとは感謝しやがれ！」
「……そ！それとコレとは話が別だ！嘘くせぇ演技で落としやがって！手ついて謝れ氷野郎！！」
「お？？その反応はいいことあったのか？暗闇で？二人っきりで？何したんだよ、エロナツさんよぉ？」
「な………なんもしてねぇ！！ぶっ潰すぞグレェイ！」
「おい！……二人共止めんか！」
ナツとグレイの取っ組み合いが始まり、エルザが止めに入るのを横目で見ながら
ルーシィは隣にぴしっと背筋を伸ばして立つ、処女宮の星霊に微笑みかける。
無数の刃が降り注いだあの瞬間、処女宮の星霊が現れ、ナツとルーシィを助け出してくれていなければ
今頃モグラと共に刃で体を貫かれ、埋められていたかもしれない。
「バルゴ、ありがとう。」
「いえ。元々お二人の話が片付いた後には、脱出路を用意する予定でしたので。」
「……え？」
「ですが、星霊界で立て込んでしまい、遅れてしまって姫の身を危険に晒してしまいました。どうぞ……お仕置きを。」
「いや、えっと……もしかして、バルゴもナツの気持ち、知ってたの？」
「はい。気付いていないのは姫だけでした。」
「え！嘘でしょ！？じゃあ何で言ってくれなかったの！！？」
「おにいちゃんに口止めされておりましたので。ですが、日頃からナツ様の暗躍ぶりには、我慢の限界でした。」
「く、口止め！？？」
「おにいちゃんは、このまま姫が気付かないほうが良いと思っていたようです。
ですが、この状態の方が我慢せずに堂々と行動できるかと思います。おにいちゃんも。グレイ様も。そして…」
「ん？グレイ？？」
「あ………おにいちゃんが……姫、申し訳ありません。お仕置きはまた後日に。」
めずらしく顔色を変えて消えたバルゴを見て、星霊界では何が起きているのかルーシィは不安になる。
いや、その前に、処女宮の星霊がよくわからないことを言っていたような気がして、ルーシィは顎に手をあてて首を傾げた。
堂々と行動……何の？
「ルーシィルーシィ！どうだった？オイラの罠。びっくりしたー？」
「……あんたのだったのね猫ちゃん、そりゃぁもーびっくりしたわよ？あ・り・が・とぉ！」
「いただだだだだだ！！グリグリはやめてよーー！！」
「うるさい！いつの間にあんなの仕掛けたの！？もしかしてこの仕事はこのため！？」
「アレ。今頃気付いたの？……ぷくく、ほらねリサーナ！ルーシィにはこれぐらいしなきやダメなんだよ！」
「あはは。……でも、やっぱり穴を埋めるのはやめたほうがよかったんじゃない？もっと危険じゃない方法があったと思うな。」
「そぉー？でも、うまくいったっぽいし、これでよかったんだよ！……ねー？ルーシィ！二人っきりで何したのー？」
「な………何もしてないわよっ！」
「慌て方がナツと一緒ね……」
「あい、似た者同士のカップルだね！」
「か、カップルじゃないわよ！！？」
「へ？？こ、これだけやってダメだったのー！？？………エルザー！ルーシィがエルザの演技がドヘタクソだってー！」
「えぇぇ！？急に何言ってんのハッピー！言ってません！落ち着いてエルザ！？そんなこと一言も言ってませんから！
落ちつ……え……泣いてるの！？エルザ！？」
「……これだけやってダメだったなんて、オイラ、がっかりだよ……。ナツだけじゃなくルーシィも少しは反省してよね。」
「私はだめじゃなかったと思うよ。」
「…え？リサーナ？なんて？」
「だって、……ナツがうれしそうだもん。」
日が傾き始める。モグラ退治のクエストが無事に完了し、ギルドに戻る一行は列車が来るのをホームで待っていた。
ナツが、乗りたくねぇっ歩いて帰る、と言いながらルーシィの荷物を持って行こうとするのをルーシィが気付き、
必死で荷物を奪い返そうとしている。二人のやり取りにハッピーがニヤニヤし、エルザが叱り付けていた。
そんな光景をぼーーと眺めていたリサーナにグレイがボソリと呟く。
「やっぱりこんだけやってもくっつかなかったな、あの二人。」
「………え？」
「当分くっつかずにあの状態が続くと思うぞ。どうするんだ？」
「…………えっと？」
「……あ？リサーナは昔からナツに気があったように見えてたんだが違ったか？まぁ、2年も経ってるしなぁ……。」
「……グレイこそ、ここ数日見てて思ったけどルーシィに気あるよね。」
「…………………。」
「…………………。」
「俺はここからだと思ってる。」
「え……諦めた訳じゃなかったの？ハッピーに協力してるから私てっきり……」
「心配は多少あったけど、こんなもんじゃあの二人が上手くいくとは思えなかったから手伝ったんだ。
散々ヒヤヒヤしながら二人の動向を見てきた俺がそう思うんだから間違いねぇ。
……それに、ナツの気持ち知った後、ルーシィがどうするか見たかったし、あの様子だと大丈夫だと確信できた。
だから、ここからなんだ。」
「え？今回のことで二人がくっつかないってわかってて？？でも、どうして……」
「ナツがコソコソするからやり辛かったんだよ！こっちが動けばコソコソ邪魔してくるし、
ルーシィに、あれはわざとやってるって説明しても信じてもらえないだろうしよ。」
「ちょっと待って、ナツはグレイの気持ち知ってるの？」
「さぁなー、さりげなく邪魔されてたからな。勘付いてんじゃね？」
「……そ、そうなんだ。ルーシィは」
「気付いてるわけねぇだろ？」
「そ、そうだよね、うんっそう思う。」
「でもこれでコソコソと回りくどいことすんのは終わりだろ。こんなやり方、性に合わねぇんだよ。堂々とやってやる！」
「回りくどいの…………終わり、なのかな……」
「…あ？なんて」
「ううんなんでもない！勝算は？あるの？」
「おー。ナツとの違いを見せてやる。俺の方が女心ってやつ、わかってるしな。それとリサーナ。」
「ん？」
「だから。リサーナ。勝算はお前だ。」
「………はい？」
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