張り巡らされた罠 [ 12 ]

「諦めんのか?せっかくエドラスから戻ってナツと会えたってのに。」

「いや……えっと………?」

「何もしないまま終わらしていいのか?俺は嫌だね。何もしないよりは何かしてから終わらす。
じゃないと、いつか後悔するかもしんねぇだろ。」

「後悔なら、もうしてるよ。2年前にエドラスに飛ばされた時から。……ずっと。」


ホームに列車が来る音が鳴り響く。
エルザがナツを逃がすまいとマフラーを強く掴んで列車が来るのをまだかまだかと待っている様子を眺めながら
リサーナはグレイに自分の気持ちをたどたどしく、それでいて力強く伝えようとした。


「ナツも私のことを好きでいてくれている、毎日一緒にいられる関係に甘えてた。
いつかナツから言ってくれるとか、もっとロマンチックな状況でとか、色々夢見て何もしなかったことにすごく後悔した。
………どうしてこうなることを考えなかったんだって。もうずっと、会えないんだって、好きって……言えばよかった。」

「それで、やっと会えたってのに。もういいのか?俺は、リサーナにがんばってほしい。
二人が一緒にいるところ………見ていて嫌じゃなかった。もうちょっと大人になればくっつくもんだと思ってた。」

「はは………私ももうちょっと大人になったらって……思ってたよ。でもね、グレイ。
ナツは、私のこと好きだった時よりずっとルーシィのこと好きだよ。私、ナツの幸せを邪魔したくない。」

「それで、お前は幸せなのかよ?納得して言ってんのか?俺は………」

「グレイ!リサーナ!何してるの早くー!」


ルーシィが到着した列車の窓から身を乗り出して叫ぶ。さらにハッピーが、発車するよーー!と慌てて急かした。
その言葉に二人は急いで列車に駆け寄る。しかし、乗ろうとするところで、グレイはリサーナの手を引っ張った。
真剣な瞳がリサーナを貫く。


「俺には秘策がある。ルーシィを振り向かす自信もある。それが成功したら、落ち込んだナツを助けられるのはリサーナだろ!?
………頼む、協力してくれ。俺の秘策に乗ってくれ。」

「……………。」

「リサーナが苦しそうに二人を見てるのも嫌なんだよ。もし、まだ気持ちを振り切る自信が少しでもないなら……。
俺が後悔させない。黙ってこのままナツとルーシィがくっつくのを見守るより、その方がずっと気が楽なはずだ!」

「グレイ……。」

「もし、失敗しても…………俺が、なんとかしてやる。リサーナを不幸には、させねぇよ。」


最後にグレイが少し照れながら言った言葉に、リサーナは瞳を潤ませながら微笑んだ。
その笑顔に、グレイはホッとして微笑む。


「グレイー?リサーナー!?発車するよ!早く乗りなよ!?」


心配してハッピーが乗車口まで戻ってきた。列車が発車合図のベルを鳴らす。
グレイは先に列車に乗り込み、リサーナに手を差し伸べた。そして、冗談っぽく悪そうな顔を作る。


「……で、乗るのか?乗らないのか?………どうするんだ?」






(……そうだね、グレイ。)

(せっかくここに戻ってこれたんだから……もう、ちょっとだけ…………。)






「…………乗るよ。乗った!!!」


そう言いながらリサーナは笑い、グレイの手を強く握って、ぴょんっと跳ねるように列車に乗り込む。
グレイは心底うれしそうに笑い、ガッツポーズを作った。


「よっしゃ!!ノッてきたぜーーーー!!」





「うっわ……………二人とも、楽しそうに寒いことするのやめてよ!!?」











例え、後悔することになったとしても

何もせずに後悔するより、

きっと次に進めるようになるよね。

だから、

次は私が罠を張り巡らすよ。

ナツ。



【終】



[ 12/13 ]
 prev  next 

top main


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -