暴走するジェミニ [ 9 ]
ルーシィは、目の前に青い影が被さったことに驚き、目を見開いた。
「……………ハッピー……………」
「……も……戻ってきてよかった。ロキ、ルーシィに何する気なの!??」
赤いルーシィの顔の前に、青色の耳がピクピク動く。
獅子宮の星霊の唇とルーシィの唇の間には青い小さな手。
ハッピーの肉球に口付けた状態で半眼になった目をハッピーに向けた獅子宮の星霊は、不機嫌そうに身を引いた。
「はぁ…。なんで戻ってきたのハッピー。計画台無しだよ。」
「嫌な予感がしたんだ!猫の勘を舐めないでよね!」
「同じ猫科として誇らしいけど…ルーシィに危害を加えようとしてたわけじゃないんだよ。」
「だめだよ!オイラはナツの味方なんだ!!ルーシィにキスしていいのはナツだけなんだ!」
「「……………は?………………」」
「オイラはナツがずっと悩んでるのを知ってるんだ!!皆がいない所ではボーっとしてこけたり、木にもぶつかるし!
夜なんか、のたうちまわったりイライラして物に当たったり!
寝れないからって急に走って出て行って、朝方まで戻ってこない時だってあるんだよ!?」
「「………それ、ナツの話………?」」
「最初はおもしろかったけど………さすがにオイラも疲れたんだ!
だからオイラ、ロキのこと好きだけど……邪魔させない!これ以上ナツを悩ますことしないでよロキ!!」
「お…落ち着くんだハッピー。」
「ハッピー、ナツは何に悩んでるの?」
「ルーシィのことに決まってるじゃないか!バカーァア!!」
「え!??私!??…なん 「あ。ちょっと待ってルー…」」
「ナツはルーシィが好きなんだよー!!」
ハッピーの剣幕と言動にルーシィと獅子宮の星霊は、暫し呆然とする。
特にルーシィに関しては、ハッピーが言ったことが理解できなかったのか、瞬きをすることも忘れ、「…エ?…ワタシ?」と繰り返した。
「そうやってルーシィが気付かずいつも通りにしてるから余計に駄目なんだよ!もっとナツのこと考えてよルーシィーー!!!」
「……………もっと………って………………」
「…っ!だめだハッピー!!これ以上ルーシィにナツのことで悩ませないでくれ!」
「何言ってるのロキ!ルーシィよりナツの方が悩んでるんだよー!オイラいつもナツの傍にいるから一番わかってるんだ!」
「僕の方がルーシィのことわかるんだ!ルーシィが混乱するからとりあえず余計なことをしゃべらないでくれ!」
「わかってないよ!!ロキがルーシィにキスしたら余計にナツが悩んじゃうじゃないかー!ルーシィにキスするのはナツなのーー!!!」
「わかってないのはハッピーの方だ!!!ルーシィだって悩んでるんだ!
僕が間に入ることでルーシィの気を逸らさなきゃルーシィがナツのことを好きになってしまうかもしれないんだ!!」
「なんでそれがだめなのーー?!!ナツは気付いてないけど本気なんだ!オイラにはわかる!」
「ナツもルーシィもキスして勘違いし始めてるだけだ!僕はルーシィが大事なんだ!
女心がわからず色恋沙汰に無頓着なナツにルーシィは渡せない!」
ハッピーと獅子宮の星霊は、猫同士のケンカのように目を吊り上げ毛は逆立ち、フーーーッ!!と威嚇の音を口から繰り出す。
双方が自身の大事な人のことを想い、譲れずに対立する。
ルーシィは、ピクリとも動かず、瞬きを忘れたまま、呆然とそのやり取りを眺めていた。
――― ナツが………?好き……? ―――
―――― ナツも私と同じように悩んで……好き?……私を? ――
顔が熱い。目が霞む。…どうして。ナツが。……私は――――
ルーシィの思考はそこで途絶えた。
「………ーーシィ!!しっかりしてーー!!」
ハッピーの声に意識が浮上し、慌てて起き上がるルーシィ。
「…あれ!?…私……。」
「よかったー!ルーシィー!!」
ウェーンと泣き、ルーシィの膝にしがみつくハッピーの頭にやさしく手を置いたルーシィは自分がベッドに横たわっていたことに気付いた。
「………あれ……?ロキは?……私なんで……??」
「ルーシィ、急に倒れちゃったんだ。だからオイラもロキも反省して一先ず休戦したんだ…。
それでロキはナツを追い出したジェミニを連れ戻しに…。ごめんねルーシィ。」
「え??えっと…なんだっけ……」
「オイラもさっき聞いたんだけど、ロキはルーシィとナツの邪魔するためにジェミニを使って…ってルーシィ、頭大丈夫?」
「な!………っなによ!………そうだ、お風呂に入る所だったんだわ!」
ルーシィは胸元のボタンに手をかけながらいそいそと脱衣所に向かう。
そんなルーシィをハッピーは記憶障害?と不憫そうに眺め、ルーシィの前で余計なことを言い過ぎたと心から反省して、ベッドに突っ伏した。
体が隅々までゆっくりと温まる中、ルーシィは落ち着き、先ほどのハッピーと獅子宮の星霊の言い合いを徐々に思い出して考えていた。
(ハッピーもロキも……何…言ってるのよ。ナツはずっといつも通りだったじゃない。)
(どうせ別のことで悩んでるんでしょ。ミラさんの時みたいに……騙されないんだから!)
ルーシィは顔を半分沈め、不機嫌そうにブクブクと音を立てる。
(……でも、もし、本当だったら……………私は………………)
瞳を閉じて考える。自分はナツのことをどう思っている?
(……ロキは、私がナツを好きになってしまうって言うけど……)
……ガタタ!
「ルーシィー!!」
「……………きゃあぁあああ!??ナツーー?!!」
「ジェミニいないか!??ロキがいきなり現れて二人して消えて」
「なんで入ってくるのよ!?…で…出て行きなさいよーー!!」
「そんなことより、ジェミニは!??何か言ってなかったか!?」
「そんなことじゃないわよ!…ハッピー!?ナツ連れ出してーー!!」
しかし、ハッピーからの応答はない。
ルーシィはナツに何かを投げつけたいが浴槽から出ないことには届かない。
……この状態で出られるわけがない。ナツはお構いなしにルーシィに近づいてくる。
「ルーシィ!ジェミニに何か聞いたか!??」
「ちょ…!!近いし、来るなーーーーー!!!」
「…話を聞けルーシィー!」
「聞けるかぁあああーーーー!!!」
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