インストールされた超魔法 [ 10 ]

「…………………………………ハッピー……………。」
「ん?なに?ナツ。」

「…そうゆうのはお互いの気持ちが通じ合ってからやるもんなんだ。だから駄目だ。」


ガチャン!バシャン!
その時、ルーシィとハッピーは予想を大きく外れたナツの答えに目を見開き、思わず手にしていたコップを落とした。


「うわっ何やってんだよ!!」
「あんた………ナツ………よね…?」

「……はぁ?」

「ルーシィ!キスって気持ちが通じてからやるんだって!!……ってことは……ナツとルーシィってオイラが知らない間に、どぅぇきてたのー!!?」
「ちょ、ちょっと待って!?なんでそうなるのっ??」

「だって、ナツとルーシィ、キスしてたじゃないかーー!」


オイラにだまってるなんてひどいよー!と言いながら両手で瞳を押さえ二人の上空をクルクルと回るハッピー。
その様子を見たナツが訝しげにハッピーを見上げた。


「ハッピー…なんかおかしくねぇか?さっきからキスキスって………」


ハッピーはナツの言葉にギクリと体を震わせ、思わずルーシィの後ろに隠れる。


「……だってオイラ…キスしたことないから…興味があるんだもん…」
「…本当にそれだけか?なんか隠してねぇか?」

「そ…それだけだよ!本当だよ!」
「いいや、嘘ついてるな…。何隠してんだ?」

「隠してないって!本当だよナツ!!」


ナツは、ゆっくりとルーシィの後ろに隠れているハッピーに近づき、逃げようとするハッピーを掴まえて両手で持ち上げた。
ジィっとまっすぐにハッピーを見詰める。


「怒らねぇから言ってみろ。ハッピー。」
「………うぅ……ルーシィには……言っちゃだめだよ……」


ハッピーはナツの耳元でコショコショと話し始めた。一連の光景を見ていたルーシィは、二人はずっと一緒にいる家族で
相棒だもんね適わないなーと思いながらやさしく微笑んでいた。
そんなルーシィに、突然ナツが底意地悪い笑みを浮かべた視線を投げかけた。
その顔を見たルーシィは背筋がゾクリと震え、とてつもなく嫌な予感が走るのを感じた。


「……………ルーシィ…」
「ななななに!??」


ルーシィに近づくナツ。思わず後ずさるルーシィ。それを見て、オォっと目を煌かせるハッピー。
壁際まで後ずさっていくルーシィをゆっくりゆっくりと追い詰めるナツ。


「ちょちょちょちょっと待って!!なんなの!??」

コンコンコン

「…あー、誰かきちゃった…。…はーい!」


ハッピーがドアへ飛んでいき、カチャリと開けた。その隙にルーシィは慌ててナツから遠ざかる。


「…やぁ。久しぶりだね、ルーシィ。」


そこにいたのは、ブルーペガサスの魔導士であるヒビキ・レイティスだった。


「…ヒビキ!どうしてここに!?」
「フェアリーテイルからの依頼でね。…もしかして僕が古文書(アーカイブ)の魔法を使うこと忘れてる?」

「……………あ!!!」
「……………………さて帰ろうかな。」

「わわわ!ご、ごめんなさい!色々ありすぎて…!覚えてなかったわけじゃないの!」
「………うん。…話は聞いたよ。まさかルーシィの体に古文書がインストールされた状態だったなんてね。」


「「「……イン…ス……???」」」


「あーーー。…体内にウイルスが入り込んで感染して、発病している状態って考えてくれたらいいよ。」

「…ウイルス?」
「古文書ってウイルスなの?」

「いや、例えで言っただけだから。でも、確かに古文書に記された魔法は超魔法と言われるほど、とても強力で危険なんだ。
それに情報量がすさまじくて、いくつもの超魔法を人間の脳に留めておくことはできない。
それで古代の人たちが、本の中に物質化させて保存し、必要な時に必要な本を見て発動させるとゆう形で使用していたはずなんだけど………。
でもこれは…、その中身を理解して読めないと使えないはずなんだ。」

「え?え?」
「…難しくてわかんねぇ。」
「…オイラも。」

「小さいルーシィが古代文字を読めるはずないし、たとえ読めたとしても、さらにまた一から読み上げないと魔法は何度も発動しないはずだったんだ。」

「え…でも確か私は本の中身を見ていただけで………………………」
「…あ!ルーシィ!」


慌ててルーシィの手を掴むナツ。グイっと引き寄せ、ルーシィの額にピンク色の髪が触れた所でルーシィは真っ赤になる……。
途端に、ナツに思い切り顔面掌打をくらわせ、鉄でできたドア枠の角に後頭部を打ち付けさせた。


「……うわあああ!ナツー!!しっかりーーー!!!」

「………なるほど…………本当に効果的なんだね………。」
「…はぁっ……はぁっ…え!?…なにが??」

「いやなんでもないよ。それでね?ルーシィ。ルーシィが見た本は黒い表紙に青い石がはめこまれていたって聞いたんだけど、
その青い石が、僕のアーカイブの力と同じように古文書の情報を体内に送る魔法石だったと思うんだ。でも、僕の力は情報をダウンロードさせるだけ。
その石は古文書自体を体内にインストールして、永久的に使用できるようにするものだったんだと思う。」

「……永久、に……」

「安心してルーシィ。古代の人たちもバカじゃないんだ。ちゃんと古文書を体内からアンインストールできるものを用意していた。それがおそらく、今回の古文書…。
黒い古文書についている魔法石を調べることができたらいいんだけど、国が内密に保管しているみたいで……手が出せなかった。」

「奪いに行けばいいじゃねぇか…!オレが行く!!」
「オイラも!!」

「だめだよナツ。それに………そのために僕が来たんだ。」
「…え……ヒビキが力を貸してくれるの…??」

「あぁ。僕は君に借りがある。僕は、解読された古文書の情報を君に送り、超魔法をアンインストールする。」

「「「……アン……イ…………??」」」

「発病した原因のウイルスを除去するってことだよ。」

「………なんかよくわかんねぇけど、レビィとヒビキに任せれば上手くいくってことだな。」
「あい!よかったね!ルーシィ!!」
「…………ヒビキ、私、借りなんて作った覚えがないんだけど…」

「……ふふ。君に覚えがなくても僕にはあるんだ。」


あの時、ルーシィの星霊を想う心に助けられたんだ。カレンの最期を知りエンジェルを討つこともできた。
だから次は、僕が君を助ける番…。

「…じゃ、僕も解読の手伝いに行って来るよ。僕が持っている古文書の情報が解読の助けになるかもしれないからね。じゃあね…また後で。」



元に戻る解決への道は見えた。後はその道を全速力で走るだけだ。
でもルーシィには一つ気になることがあった。どうして、母親の部屋に隠し部屋があり、そんな危険な古文書が隠されていたのか。
いや、知っているけどそれも忘れているだけなのか……?
ルーシィは、今ある母親の記憶を全て思い出そうとする。いや…この記憶も本物なんだろうか。
自分が持つ記憶に自信がなくなり、拳を握り締めた。


「ルーシィ。余計なことを考えるな。」
「…ナツ。」

「皆、お前のためにがんばってるんだ。そんな顔してたら駄目だろ。」
「…………………うん。」

「…それにルーシィには笑顔が一番似合ってると思うぞ。」
「……え?」


ナツはいつになく真剣な瞳でルーシィ見る。そして、そっとルーシィの手に自分の手を重ねた。
途端に上気し、慌てるルーシィ。しかし、真正面から見つめられるその瞳に囚われ、動けない。
スゥと近づこうとするナツ。


「な…!……わっ……!……まっ…!!」
「……ルーシィ……」

「なっ…!なに…!…どうしたのっ」


ルーシィは後ずさるが、すぐに壁にぶつかる。間を詰めるように近づくナツ。
ルーシィは、目がグルグルと回り、口をパクパクさせ、言葉にならない言葉を何度も繰り返した。



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