インストールされた超魔法 [ 9 ]

マスターの一声の後、ナツとルーシィは皆に一斉に襲い掛かられ、両脇を抱えるようにして半ば強引に一つの部屋に連れてこられた。
運ばれる途中、ナツは何故かギルドの仲間にそれぞれ叩かれたり殴られたり等の攻撃を受け、部屋に放り投げられる。
覚えの無い扱いの酷さにナツはぶち切れ、部屋の外でこちらを見ている皆に反撃しようとするが、扉は開いた状態にもかかわらず壁があるかのように派手にぶつかってしまった。


「よく聞け、ナツ。ルーシィ。この部屋にはフリードがかけた術式魔法で、中にいるものは外に出られない。
さらに魔法が外に出ないように術式魔法をフリードが組み込んでいる途中じゃが…まだ時間がかかるようでな……。
それが完成するまでナツ、ルーシィを見ててくれ。」

「え!?」
「………おう…わかった。」

「ルーシィ、おそらくじゃが……古文書の力が発動し始めるのは、それを意識したり思い出した時じゃ。
その性質を利用して、ルーシィの母君は、忘却の魔法で封印していたのじゃろう。」
 
「忘却の魔法…………たしか使用禁止になった魔法の………?」

「そうじゃ。魅了(チャーム)同様、人の精神を左右させる魔法じゃからの。しかし、古文書の力を抑えるためには仕方なかったんじゃろう。
今回もそれを…と言いたい所じゃが、正規ギルドのマスターとして、それを許容することはできん。
それに、忘却の魔法にもチャームと同じように弱点がある。
関連するものに触れると思い出してしまう可能性があるんじゃ。
今回、忘れている原因の元である古文書を見てしまったことによって、魔法が切れてしまったのじゃ。」

「…お母様が。でも、今回の古文書と昔見た古文書は違います。あの古文書は………」



――― これで大丈夫よ。ルーシィ。

―― 明日になればおかしな文字も図形も思い浮かばなくなっているわ。

でも、もし…思い出す時がきたらこの本を使いなさい ―――

今、ママにはできなかったことも…きっとその時には ――――

ママはルーシィを 未来に託して、 ここに…この本を ――――――――



そうだ、その古文書が図書館で見たあの古文書だった。
あの古文書が、ルーシィを元に戻す鍵になる。

しかし、いくつもの語学研究者や解読者達がいてもなお解読できず、協力が要請された物なのだ。
解読までにどのくらい時間がかかるのだろうか。


「レビィは優秀じゃ。……きっとやってくれるじゃろう。」


そう強くマスターが言うと、皆も頷いた。


「それまで、待つのは辛いじゃろうが、ルーシィはここにいてくれるかの。」
「はい。あの。レビィちゃんに伝えてください!私は全然大丈夫だから無理しないでって。」

「わかった。伝えておこう…。それじゃ、わしらも解読の手伝いをするかのぉ。皆、着いて来い。」


マスターはそう言った後、扉を閉め皆を連れてどこかに行ってしまった。
こんなことを考えてはだめだとは思いながらもルーシィは、ファントムロードの時の様に皆に迷惑をかけていると自己嫌悪感に包まれていた。

(レビィちゃんや皆のためにもしっかりしなくちゃ)

ルーシィは深く息を吐き、気を紛らわすために部屋を見渡す。
部屋は狭くベッドとテーブルが一つずつあるだけの簡素な部屋だった。
入り口の扉の反対側の壁には大きな窓が一つあり、ベッドが置かれている反対側の壁に扉が一つ付いている。
その扉が気になり開けてみるとバスルームとトイレがあった。


「…………いてぇ」
「…ナツ、ボロボロね。」

「なんでいきなりボコられたんだ!?…くっそ腹立つ……」
「…乙女の唇を軽々しく奪うからよ………」

「…はぁ?」
「………はぁーー。やっぱり……。ナツだからわかってないと思ってたけど… あのね、あんたがやったことは……軽々しくやっちゃいけないことなの!」

「やったことって…どれのこと言ってんだ?」
「だから!!キスよキス!!!私に、したでしょ!!」

「おまえ……オレをなめてんのか?」
「………は?」

「オレだってなぁ!!!…………ぃや、やっぱいい」
「え。なによ………。気になるじゃない。」

「…………なんでもない」
「……いやいやいや、気になるじゃない!言いなさいよ!!!!!」

「…うるせぇ」
「なっ…………言いなさいよ−−−!!!」


ルーシィは、ナツに近づき両手で頬を掴んで目いっぱい横に引っ張る。


「いででででで!!!!…………やめほぉるーひぃー!」
「言・い・な・さ・い!………キャッ!」


ルーシィの攻撃を防ぐためにナツは、ルーシィの両手を力強く掴み引き剥がした。
両手を掴まれた状態でお互いの視線が至近距離でぶつかり、ルーシィは顔を赤らめる。


(ど…どうしよう。また思い出しちゃったじゃない。だからあれは…そんなんじゃないんだってば!そんなんじゃないのよ!!
落ち着け私ーーーー!!!………って…………あれ??………ナツの顔……赤い……?)


「…………………」
「…………………」





ガチャ、バタン!





「ナツーーーー!!!…………アレ?」





……パタン。


「おーーーい。ハッピー。ってあれ?何してんだ?早く入れよ。」
「…グレイ。オイラ空気読める子なんだ。」

「…は?意味わかんねぇ。開けるぞ。」
「だめだよ!グレイ!!空気読まなきゃ!!」

「だから意味わかんねぇって!ってかどけよ!開けらんねぇだろが!!」





ガチャ

なぜかハッピーが必死でグレイから扉を守り始めたのだが、二人の口論が部屋の中に筒抜けだったため、
いたたまれない気持ちになったルーシィが内側から扉を開けた。


「ハッピー。グレイ。…どうしたの?」
「おう。ルーシィ。……ん?顔赤いぞ。どうかしたのか?」

「そ…そうかな。なんでもないよ。」
「まさか………………またナツに……………………」

「ち!…ちがうの!!本当になんでもないから!!」

「…おい!クソ炎!!てめぇ何しやがった!!」
「グレイ!!だから…!!」

「うっせぇ!まだなんにもしてねぇ!!」
「そうだよ!グレイ!オイラがんばったのにグレイが邪魔するから!!」

「ハッピーちょっと黙ってろ気が抜ける!今なんつった!??……まだって…これから何かするつもりなのかてめぇ!!」

「文句があんならオレをここから出せばいいだろーがぁ!!!」
「な…な…な……「ルーシィ、ナツは天然で言ってるから深く考えても無駄だよ!」」

「それができたらすぐにやってやるよ!!俺はこんな作戦……反対だ!!ルーシィ!古文書のことは考えるな!…それができればナツはいらねぇ!」

「考えるなって……………「わ!だから言ってる傍からっ」」

「ルーシィ!ナツにキスされちゃうよ!もしかしてされたいの!?」





「…………………な訳ないでしょぉぉぉ!!??」

「…よし!オイラ、グッジョブだよ!見た?グレイ?」
「…おう…。むかつくほどにな……。」

「やっぱり、グレイでもエルザでもなくて、オイラが一番適任だよ!入るよ、いい?」

「おーー。入れ入れ。」
「え?何?どうゆうこと?」


ハッピーは、術式魔法がかけられた部屋へ足を踏み入れる。


「ルーシィ。オイラがナツを見張ってるから大丈夫だよ。安心していいよ。」
「え?え??」
「ハッピー、どーゆことだよそれは…。」

「じゃあ、俺はやることあるから行くけど……ナツ、変な気ぃ起こすなよ。何かあったらぶっ潰す。」
「ナツ、オイラは変な気起こしていいと思うよ?」
「ハッピー!??さっき私に安心していいって言ったよね!!?」


ルーシィの中にある力は、その存在を思い出したり意識することで発動してしまう。
だからその存在を忘れさせれば、効力はなくなる。

そしてもう一つ、マスターは気付いていた。
存在どころか考える余裕がないほどの強力な別の意識が存在している時は発動しない。
ルーシィはウブで純情であったため、ナツにキスされた・されるとゆうことを常に意識させておけば力が発動することはないと考え、ナツを共にさせたのだ。
しかし、二人だけを一つの部屋に置いておくことは危険だと感じたエルザが、マスターに自分も部屋に入ると申し出た。

だが、エルザの気迫でルーシィがナツを意識する余裕がなくなる可能性があり、発動する危険が高まるとのことで却下される。
それを聞いたグレイが、俺なら大丈夫だと自信満々で主張を始めたのだが、さらに男を増やすのでは意味がないとのことでエルザよりも即座に却下された。

そこで、高々と手をあげたのがハッピーである。
自分ならナツが手を下すまでもなくルーシィを翻弄することができると豪語したのだ。
だが内心では、二人がこれを機に"でぇきて"しまえば、おもしろいと考えていた。

………とゆうか思う存分遊んでやろうとハッピーは企んだ。


「ルーシィルーシィー!」
「なによ?ハッピー…」

「キスってどんな感じなのー?」
「……ぶはっ!!!」

「うわっ汚ねーなー。」
「オイラがせっかく持ってきたお茶吐かないでよ。」

「…ゲホッ!…ゴホッ…ゴホッ!」

「ねーナツー!」
「…あん?」

「キスって好きな子にするんでしょー?オイラもシャルルにしてもいいのかなー?」
「……………………。」

「ねーナツってばー。」



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